名作ゆえのプレッシャー
だけど、挑むだけの価値はある

エスクァイア:海外では複数実写化もされていますが、日本における『シティーハンター』は初の実写化。鈴木さんは今回の撮影にあたり、ご自身も熱心なファンでもあるのでかなりのプレッシャーがあったのではありませんか?

鈴木亮平さん(以下、鈴木):確かに大ファンですが、作品に挑むにあたってはニュートラルな気持ちを心がけました。僕がファンであるかどうかは、観る人にとっては関係のないことですので。全ての人に楽しんでもらうためには、ほんの少し距離を置かないと。

そのうえで、プレッシャーはもちろんありました。これまでの海外の実写版は、高評価を得ていたので。でも、原作の『シティーハンター』は日本の新宿が舞台。今回、新宿をロケで使用できたことは「作品の世界観を表現するうえで、大きなアドバンテージになる」と思いました。

シティハンター
Netflix映画『シティハンター』

鈴木:それから、「『シティーハンター』と言えば、(アニメのエンディング曲だった)『Get Wild』」というイメージを持っている人も多いかと思うのですが、海外の実写化作品ではこれまで使われていません。フランスの実写版は僕も大好きな作品ですが、『Get Wild』がエンディングで流れたのは、日本で公開したバージョンのみだったと記憶しています。実写映画で世界に向けてエンディングの『Get Wild』が流れるのは、恐らく初めてのことです。

また、多くのNetflix作品では、エンディングと同時に次の作品へ促す画面が表示されるのですが、『シティーハンター』では曲を最後まで聴いてもらえるよう、そのタイミングを後ろにずらしています。

※『Get Wild』は1987年にTM NETWORKがリリースした楽曲で、読売テレビ・日本テレビ系列アニメ『シティーハンター』(1987年4月6日~1988年3月28日)のエンディングテーマとして使用され一世を風靡。今回、時代を超えてこの作品のため、新たにレコーディング―タイトルは『Get Wild Continual(ゲット ワイルド コンティニュアル)』としてカムバック。

鈴木亮平
CEDRIC DIRADOURIAN
スーツ61万3800円、スキッパーニット16万2800円、シューズ 参考商品、ポケットチーフ3万9600円、ベルト8万8000円(すべてブルネロ クチネリ/ブルネロ クチネリ ジャパン TEL 03-5276-8300)

エスクァイア:その世界観を表現するうえで、困難だったことはありましたか?

鈴木:あの…ちょっと言いにくいんですが、「もっこり」という言葉をどうするか議論になりましたね(笑)。今の時代において、どれくらいの人が不快感を覚える言葉なのだろうと――。ただし、言葉どおりに取れば必ずしも特定の意味だけを指すものではないし、冴羽 獠(さえば りょう)のアイデンティティとも言える重要なワードなので、そのまま使いました。

ただ困ったのは、世界配信するにあたって、各国にもっこりに当たる言葉がないんですよ(笑)。まぁ、こればかりは仕方ないですけどね。

してぃはんのシーン
Netflix映画『シティハンター』

エスクァイア:原作を熟知し、リアルタイムで作品に触れてきた鈴木さんの熱意に対し、森田さんは当初どう感じましたか?

森田望智さん(以下、森田):最初お話をいただいたとき、恥ずかしながら『シティーハンター』の漫画やアニメのことを知らなかったんです。世代的には私の親世代なんですが、出演することに決まり漫画やアニメを観るうちに、どんどんとハマってしまいました。今ではすっかり冴羽 獠さんファンです。

ただ、漫画やアニメの世界観に魅了されるほど、自分がちゃんと表現できるか不安になりました。それだけ、確固たるファンの方がいらっしゃる作品ですから…。

森田望智
CEDRIC DIRADOURIAN

大ファンだからこそわかる、
そして悩む微妙なニュアンス

エスクァイア:実写化において、どんな点に留意しましたか?

鈴木:漫画やアニメに寄せすぎた演技だと、生身の人間とのギャップがあり過ぎて不自然になってしまうんです。冴羽 獠の魅力である2面性も、リアルだとあり得ないじゃないですか。日本の方は比較的そういった漫画やアニメ的なキャラクターに馴染みがありますが、海外の方はあまり馴染みがないと思うんです。

そこで生身でありながらも、漫画やアニメの世界観を上手く取り入れるバランスに非常に気をつけました。アニメ版のジャケットじゃなく原作漫画のコートを着ているのも、実際に銃を隠した際にジャケットだと銃の存在がわかっちゃうからなんです。

森田:香の代名詞であるハンマーは、見た目の重量感や重心の取りやすさを計算して、あの大きさになったんです。でも、最初持ったときにすごくしっくりきたんです。それからは漫画やアニメらしさを感じさせつつ、実写として違和感のない振り方をすごく練習しました。

存在しない画像

エスクァイア:漫画の『シティーハンター』は基本1話完結で、その積み重ねの中で各キャラクターの魅力が深掘りされてゆきます。本来は、ドラマ向きの作品だと思うのですが、もしかして今後ドラマ化の計画が?

鈴木:そこは…ノーコメントで(笑)。ただ、おっしゃるとおり『シティーハンター』を描くうえでの理想的な形は1話完結スタイルです。その中で、徐々に冴羽 獠と槇村 香の関係が深まっていく。今回は“エピソード 0(ゼロ)”という形なので、そこを描いた作品ではないですが、僕自身ももっと皆さんにお届けしたいシーンやエピソードはたくさんあります。まぁ、今回の作品が皆さんから多く支持をいただくことができたらもしかして…なんてね(笑)

シティハンターに登場する掲示板
Netflix映画『シティハンター』

世界同時配信を通して思う
俳優のこれから

エスクァイア:日本発信の作品を世界同時公開できるのは、Netflixならではとも言えます。そうした作品に出演することは、今後の俳優人生においてどのような影響を与えますか?

鈴木:今回の作品では、そこまで海外を意識していません。「『シティーハンター』の世界観を表現するには、あくまで日本ならではの視点に重心を置いたほうが良い」と判断したからです。ただ、世界に発信できることはとても魅力です。どんな反応が来るのか? 今からとても楽しみです。

そうした状況は、一人の俳優としてもさまざまな可能性を感じます。自らが企画し、行動し、世界に発信することができるようになった現在、俳優も積極的に自分を変革してゆくことが求められているのかもしれません。

森田:より多くの方に観ていただけるのは、とてもうれしいことです。好奇心が旺盛なので、「どんどん海外に目を向けたい」とは思っています。鈴木さんがおっしゃるように、今は俳優自らがゼロから作品を生み出し、海外に売って出られる時代なんだと思います。

私もそういったことに携われたらと思っていますが、まだまだ経験不足ですね。だから私自身は、現段階では、いただいた役を精一杯演じることに集中しています。

鈴木亮平と森田望智
CEDRIC DIRADOURIAN

◇Profile/鈴木亮平

1983年、兵庫県生まれ。2006年に俳優デビュー。ドラマ、映画、NHK朝の連続テレビ小説など多数の作品に出演。重厚感のある役からコミカルな役までマルチに演じ、また過激なまでの体重の増減などストイックな役づくりにも定評が。今作『シティーハンター』では劇中で使用する拳銃に慣れるため、自らモデルガンを購入しトレーニングを重ねたとか。

◇Profile/森田望智

1996年、神奈川県生まれ。2011年俳優デビュー。2019年に公開されたNetflixシリーズ「全裸監督」で、第24回釜山国際映画祭アジアンフィルムマーケットの「アジアコンテンツアワード」最優秀新人賞を受賞。2020年『あの子が生まれる…』でドラマ初主演し、その後もNHK朝の連続テレビ小説など数々の作品に出演。今作『シティーハンター』では、冴羽 獠のバディである槇村の妹・槇村 香を好演。

◇Netflix映画『シティーハンター』(2024年4月25日<木>)からNetflixにて独占配信中)

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『シティーハンター』予告編 - Netflix
『シティーハンター』予告編 - Netflix thumnail
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相棒の槇村秀幸と共に、有名コスプレイヤーくるみの捜索依頼を請け負った“シティーハンター”こと冴羽 獠。

その頃、新宿では謎の暴力事件が多発し、警視庁の敏腕刑事 野上冴子は手を焼いていた。息の合ったコンビネーションでくるみを追う獠と槇村だったが、捜査の最中に槇村が突然の事件に巻き込まれ死亡。現場に居合わせた妹・槇村香は、兄の死の真相を調べてほしいと獠に懇願する。

<スタッフ&キャスト>
監督:佐藤祐市
音楽:瀬川英史
原作:『シティーハンター』©北条司/コアミックス 1985
出演:鈴木亮平 森田望智 安藤政信 華村あすか 水崎綾女 片山萌美 阿見201 杉本哲太 迫田孝也/木村文乃 橋爪功

シティハンターのキーアート
Netflix『シティハンター』

公式サイト

Photograph / Cedric Diradourian
Styling / 鈴木亮平:Takashi Usui(THYMON Inc.), 森田望智:Kumiko Iijima(POTESALA)
Hair & Make-up / 鈴木亮平:Kaco(ADDICT_CASE), 森田望智:Izumi Omagari
Text / Masafumi Yasuoka
Edit / Satomi Tanioka(HDJ)