Esquire:今後、フランス映画・映画界を発展させるためにご自身は何ができると思いますか? 何か実践していることがあれば、教えてください。
ラジ・リ:すでに、映画学校をつくっています。モンフェルメイユ、ダカール、グアドループ、マルセイユに開校し、今後ニューヨークにも開校予定です。そして、年齢や性別関係なく無償です。
これまでの方法とは異なる方法で映画人を養成し、新しいビジョンを生み出したい。映画製作を開かれた場所にし、民主化したいのです。これまで映画界は閉じたエリートしかアクセスできない世界でしたから…。
ただ、その資金づくりは大変です。ここ3~4年シャネルなどの企業が支援してくれていますが、どうなるか先はわからないので常に出資者は探しています。
【プロフィール】
ラジ・リ(Ladj Ly)/1978年1月3日生、フランス、モンフェルメイユ(セーヌ=サン=ドニ県)出身。役者として、また、1994年に彼の幼少期からの友人であるキム・シャピロンとロマン・ガヴラスが起こしたアーティスト集団クルトラジュメのメンバーとして、そのキャリアをスタート。
1997年、初の短編映画『Montfermeil Les Bosquets(原題)』を監督、2004年にはドキュメンタリー『28 Millimeters(原題)』の脚本を、クリシー、モンフェルメイユ、パリの街の壁に巨大な写真を貼ったことで有名になった写真家JR(ジェイアール)と共同で手がける。2005年のパリ暴動以降、クリシー=ス=ボワの変電所に隠れていたジエド・ベンナとブーナ・トラオレという2人の若者の死に衝撃を受け、1年間自分の住む街を撮影することを決意し、ドキュメンタリー『365 Days in Clichy-Montfermeil(原題)』(17/未)を製作する。
その後もドキュメンタリーを撮り続け、2014年には市民軍とトゥアレグ人が戦争を始めようとしている地域にスポットを当てた『365 Days In Mali(原題)』を、2016年にはNGO団体マックス・ハーフェラール・フランスの広告『Marakani in Mali(原題)』を監督。2017年には初めての短編映画、『Les Misérables(原題)』を監督し、2018年セザール賞にノミネート、クレルモンフェラン国際短編映画祭にて受賞。同年、監督・脚本家のステファン・デ・フレイタスと共同で『A Voix Haute(原題)』を監督し、再びセザール賞にノミネートされる。
長編映画監督デビュー作であり、同名短編映画にインスパイアされた『レ・ミゼラブル』(19)は、第72回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞をはじめ、第92回アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表、第77回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノミネートなど主要映画祭にて賞レースを席巻し、一躍その名を世界に轟かせた。
2022年にはパリ郊外のスラム地区での暴動を映し出したNetflix映画『アテナ』で製作・脚本を手掛け、持ち味であるノンストップの凄まじさで話題を呼んだ。
Interview&Edit:Keiichi Koyama