インスタグラムに投稿する写真の出来映えが、これで一変することは間違いないでしょう。

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 皆さんの友人のなかに、古めかしいカメラを常に持ち歩いている人はいますか? 週末ごとに自宅周辺を当てもなく歩き回り、植物やバルコニーなどを写真に撮るような人たちです。そう、そんな人は、インスタグラムに投稿する写真の出来映えを非難された日には、命がけで面目躍如を果たそうと躍起になる人々のことです。 

 とはいえ、インスタ映えする写真にこだわるのは、彼ら彼女らだけではありません。

「ブランチに食べた料理の写真を、気ままに投稿するような多勢の間に埋もれたくなどない」と強い意志をもち、さらに「もっと自分のアカウントのフォロワー数を増やしたい」という気持ちに突き動かされている人たち…そんな人たちは、いかにクォリティのいい写真を撮る無勢になろうと躍起なのです。
 そして、そんな彼ら彼女らの中に、ここ数年で35mmのフィルムカメラの世界にハマった者たちが大勢いるのです(もしかして皆さんの中にも、そうしたいと思っている人がいるのでは?)。 

 とはいえこの世界は、皆さんが考えているほどシンプルなものではありません。そして、この世界への旅の案内役として、『Retro Cameras: The Collector’s Guide to Vintage Film Photography』の著者であるジョン・ウェイドさんほど、打ってつけの人は他にいないでしょう。

 そこで、そんなウェイドさんに35mmフィルムカメラの購入や使用について、4つのアドバイスを共有してもらいました。ぜひ参考にしてください。

カメラの購入について

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「eBayでは、フィルムカメラがたくさん売りに出されています。なので、手始めにあたってみるのはeBayがいいだろう」と、ウェイドさんは話します。そして、「35mmの一眼レフカメラがいちばんハズレが少ない」ともコメントしています。 

 さらに、35mmの一眼レフカメラを買う際には、1970年代に5大ブランドとされていたメーカー(キヤノン、ミノルタ、ニコン、オリンパス、ペンタックス)の製品を選びといいでしょう。これらのメーカーの製品は、いずれもベーシックで長持ちし、トップクオリティで、値段もさほど高くありません。アマゾンなどでは、35mmのフィルムも安価で販売されていますので…。 

「中古のCanon A1なら80ポンド(約1万1800円)前後で買えるし、もう少しお金を出せばAE-1 Programも手に入る。いずれにせよ、これらの機種なら何でもできる。でも、プログラムモードの付いたカメラのほうが初心者には向いているね」と、ウェイドさんは話します。プログラムとは、面倒な調節などをすべてやってくれる露出機能のことです(マニュアル操作に不安を感じなくなるまでは、この機能が便利です)。 

 Canon A1も同AE-1も、1970年代にプロの写真家と愛好家との間を橋渡ししたことで有名なカメラでした。そして、両機種にはシャッター優先AEが搭載されています。これは、「ユーザーがシャッタースピードを選ぶと、絞りの調節はカメラ側が自動的にやってくれる」というものになります(絞り=アパーチャーはレンズの開口部の大きさのことで、この大きさによってカメラ本体を通過する光の量が決まる)。その他の選択肢としては、ほぼ壊れないペンタックスのK1000、そして、オリンパスのOM-1などがおすすめとなります。

「フィルムカメラを購入する前に、事前に実機に触れてみないと…」という人は、中古市場を探してください(ただし、eBayやアマゾンといったセーフティネットがない場合は、さきにチェックすべき点を知っておかないといけません)。

「中古機種を手にしたら、すべてのシャッタースピードを試して、引っかかりがないかどうか確かめることです。引っかかりというのは、シャッターが開くが閉じないということ。それがまず、最初のチェック項目となる」と、ウェイドさんはコメントしています。

 また、選んだ機種の交換用バッテリーが、今でも手に入るかどうかも必ずチェックしておきましょう。「水銀(電池)の販売は、1980年代後半にはいささか危険とされていた。それで製造中止になったバッテリーがたくさんある」と、ウェイドさんは説明します。念のために、購入前にGoogleで調べてみてください。 

 さらに、もうひとつアドバイスがあります。

 フィルム写真をまじめに追求したければ、ロモ製のカメラは避けるようにしましょう。同社のカメラで撮影すると、何年か前にインスタグラムで大流行し、一時はトレンディだったロークオリティな写真(縁のほうで色が滲んでいるような写真)が撮れるのですが…。 

「昔のフィルムカメラというと、ロモのことだと思う人がたくさんいる。でも、実際はそうではない。ロモのカメラについているレンズは、扱いにくい昔のプラスチック製のもので、不完全な写真しか撮れない。私は、このような写真を撮らないようにするために、自分の人生を大半を費やしたのだ」と、ウェイドさんはその理由を語っています。 

 もちろん、皆さんにお金の余裕があれば、最新で最高スペックのカメラを手にすることができます。私たちのおすすめは、ライカのCL 18mm F2.8になります。 


Leica CL 18mm F2.8


これはvimeoの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

ライカは約100年前に、35mmのコンパクトカメラを発明したと主張しています。同社のCLシリーズ最新機種には、プログラム可能なコントロール機能、18mmのパンケーキ・レンズなどが付属し、控えめで手のひらサイズとなっています。このカメラを実際に使用すれば、なぜ多くのストリートフォトグラファーたちがこの実機を好んでいるかが実感できるはずです。

フィルムカメラの仕組みを理解する

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 自動撮影モードでの撮影にもの足りなくなったら、シャッタースピード、アパーチャー(絞り)、それフォーカスといった機能について理解しましょう。「写真を自然に見えるようにするには、正しい露出で撮る必要がある」と、ウェイドさんはアドバイスをくれました。 

 アパーチャー(絞り)はレンズを通過する光を制御するもので、シャッタースピードはどれくらいの光がフィルムに達するかを決めるものになります。ウェイドさんによると、この2つの設定の組み合わせ方により、さまざまな種類の写真が撮れると言っています。  

「たとえば、スポーツ写真の撮影に関心があるなら、動きを捕らえるためにシャッタースピードを速くしたいだろう。つまり、ワイドアパチャーを選ぶ必要がある。一方、風景を撮るなら絞りに頼り、そして、軽いシャッタースピードで補うことになるだろう。シャッタースピードを速くすると被写体の動きが止まり、いっぽうでシャッタースピードを遅くすると、その動きをぼやけさせることができる」とウェイドさんは補足説明をしてくれました。 

 絞り(F値)の設定は、一般的にはカメラレンズの周囲についたリングにあります。また、シャッタースピードの設定は、本体上に付いたダイアルによって、それぞれ行うことになるでしょう。 

 これらの説明がややこしく聞こえたとしても、心配はご無用。皆さんがフィルムカメラの経験を積み、どんな設定で撮ればいいかがわかってくるうちに、最良の結果が得られるようになります。「カメラがやろうとしていることを覚え、そして、それを自分でやってみること。そうすればもっと楽しくなる」と、ウェイドさんは話します。

撮影したフィルムを現像する

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 ベッドルームの窓を黒いゴミ袋でふさぎ、自家製の暗室をつくる予定がなければ、写真の現像にはそれなりの金額を支払うことになります。

「以前は格安で写真を現像できたときもあったが、いまでは現像料金がだいたい3倍になっている。Snappy Snaps(英国のオンライン・サービス)なら、36枚撮りのカラーフィルムを15ポンド(約2200円)前後で現像できる」と、ウェイドさんが教えてくれました。 

 そう聞くと、自家製の暗室のほうがより魅力的に思えてきますね。

 ウェイドさんによれば、「暗室は以前に比べて、格段に安い費用でつくれるようになっている」とは話しています。また、「いまでは現像用の機器を欲しがる人などほとんどいないので、eBayで引き伸ばし機が数ポンドで買えたりする。いまだに現像液を専門に扱っている会社もいくつかある。昔はよく、地階のトイレを真っ暗にして暗室代わりにつかっていたものだが、それだと誰もトイレを使えなくなってしまう」と、続けて話してくれました。 

 トイレを暗室代わりに使うことは、皆さんの同居人がおそらく承知しないでしょう。なので、現像はぜひともDPEサービスを使ってください。撮影した写真のデータをCDに焼いて貰えば、自分でスキャンする手間も省けますし…。

撮影時のティップス

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「カメラのビューファインダーを覗いていると、簡単に視野が狭くなってしまう」と、ウェイドさんは注意を促しています。「フレームの真ん中にある被写体に集中していると、まわりには注意がいかない。そんな状態でシャッターを切ると、被写体は小さく写ってしまう。イメージ全体が写っていることを、ビューファインダー越しに確かめることが大切」と教えてくれました。 

 被写体の捉え方についてのウェイドさんの考えは。「すべてはディテールにある」ということのようです。

「積まれたレンガの不思議なパターンとか、そういった類いのもの。これまで当たり前と思っていたものを、ここから改めて見直してみることが大切」と、ウェイドさんは話しています。 

 ただし、35mmのフィルムカメラがもっとも適しているのはスナップショットの撮影になります。 

「50年前、100年前に撮影された写真を見てみると、きれいな風景写真ではなく、スナップショットのほうが興味深いことに気付く。スナップショットには人の暮らしに関して、ありのままの姿が写っているからだ」とウェイドさん。 

 現在では、機械的にフィルターのかかった写真が過剰なまでソーシャルメディアに流れる時代となっています。だからこそ、初めて35mmフィルムで撮った写真を見た時のトキメキを思い出す人が多くなってきたのでしょう。以前よりさらに、アナログカメラへのルネサンスが活発になっているような気がしてなりません。
 もしいま、迷っている人がいるのであれば、こちらを参考にぜひとも35mmのフィルムカメラに手を出してみてはいかがですか。

By Nick Pope on May 2, 2018
Photos by Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊