エスクァイア編集部(以下、編集部):まず、マークさんのこれまでのバックグラウンドについて教えていただけますか?そして、なぜF1のカメラマンを目指そうと思ったのでしょうか? 

Lens, Film camera, Camera, Digital camera, Single-lens reflex camera, Cameras & optics, Reflex camera, Camera lens, Flash photography, Digital SLR,
Shun Yamanoi
写真左から、クライブ・メイソン、マーク・トンプソン、クライブ・ローズ。


マーク・トンプソン(以下、トンプソン):カメラマンとしてデビューしたのは、そんなに若くない時でした。大学で写真の勉強をしてきたわけではありませんでしたので、自分自身でカメラを学び、まずはフリーのカメラマンとしてデビューしました。私自身、車に大変興味をもっており、その理由としてはエクステリアデザインのカッコ良さやF1の迫力が凄まじいからです。今では、写真を顧客に提供しているゲッティ・イメージズ所属のカメラマンとして、日々撮影を行っています。最初に撮影したのが1991年のイギリスGPですので、25年間シャッターを切り続けてきたことになりますね。


編集部:カメラマンになったキッカケは幼少期にあったのでしょうか?

トンプソン:はい、そうですね。幼少期の頃から写真に興味はありましたし、私自身美術が大好きでしたので、美術からの影響もあると言えるでしょう。キッカケとしては、写真に対するパッションがあったことですね。一般的なカメラマンになりたいとは思っておらず、モータースポーツのカメラマンをしてみたいという欲望があったことは確かなことですね。


編集部:カメラマンとしての、1年間の仕事の流れなどについて教えていただけますか?

トンプソン:私たちは普段イギリスで生活をしていますが、レースがあるたびに世界中を飛び回っています。昨年は、21レースを撮影しましたね。正確な日数は把握していないのですが、とにかく多くの日に撮影したことは記憶に残っています。F1は3月から12月の間に開催されているので、かなり長期間と言えますね。大体半年くらいは撮影していると言えますね。1レースは、レース本番の数日前から準備期間などもあり、1レースの滞在期間は4日間ほどですしね。 
 

Sport venue, Race track, Red, Line, Logo, Carmine, Racing, Electric blue, Formula racing, Formula libre, pinterest

写真:フェラーリ時代のフェリペ・マッサ。観客席から撮影された1枚であり、ベストショットはたまに観客席から撮れるようです。©Mark Thompson/ Getty Images


編集部:F1取材のコツや必要なスキルがありましたら、教えていただけますか?

トンプソン:まず、各サーキットを良く知ることが大事だと思いますね。カメラマンとして必要なスキルとしては、機材を操ることはもちろん大事なのですが、必ずしもある特定の場所でスタンバイする必要はなく、各コーナーから撮影できるイメージを頭で想像することが求められると思います。実際に撮影してみると、客席から撮る写真もハイレベルな作品になります。実際、あらゆるスポットに行き、見てみながら試し撮りをしてみて、試行錯誤を重ねることは大事だと思いますね。ですので、アイデアを持った上で撮影に臨むことがとても大事なのです。 

鈴鹿サーキットで一番良く撮れるスポットはどこなのか?

編集部:F1レースの典型的な一日の流れについて教えてください。

トンプソン:とにかく朝から夜まで長い一日ですよ!事前準備がとても大事なことであるため、例えば鈴鹿サーキットでは天気や光の当たり具合などの現場状況を細かくキャッチすることが大事なのです。前回の鈴鹿では午前7時に現地入りし、午後9時ごろにホテルに戻りましたね。そして、その後夕食を食べたので、とても長い1日でしたね。


編集部:F1レースを撮影する際は、カメラを何台持ち運んでいるのですか?

トンプソン:そうですね、レースにはカメラ3台を持ち歩いていますね。2台はトラック上で撮影するためのカメラでして、もう1台は遠隔操作のできるリモコンタイプのカメラですね。このリモコンタイプのカメラはピットストップにあらかじめカメラをセットしておいて、そして私が撮りたい瞬間にシャッターを切るのです。そして、レンズも数台を常に用意していますよ。 
 

Automotive design, Automotive tire, Camera, Digital camera, Camera lens, Cameras & optics, Reflex camera, Photographer, Synthetic rubber, Automotive wheel system, pinterest

写真:チームメンバーのクライブ・メイソンはこちらの望遠レンズを使用。これぞ、プロの構えかたです!©Mark Thompson/ Getty Images


編集部:鈴鹿サーキットで一番良く撮れるスポットはどのエリアなのでしょうか?

トンプソン:そうですね、第1コーナーはとても良いスポットですね。そのため、15周目までは第1コーナーに張りついて撮影していましたね。クライブがサーキットの反対側に張り付いており、もう一人のクライブが自由に動き回っていましたね。常に最新情報が分かるような通信システムを使用しているので、その都度少し動くこともありますね。レースが終盤に差し掛かるとともに、私たちは少しずつゴールラインに近づいていくのです。そこで、表彰台やピットスポットを撮影するためです。 

実は鈴鹿は移動するのが難しいサーキットなのです。なぜなら、少しばかり迷子になりそうな通路を辿っていかなくてはならないからです。そして、何よりも嫌なのが大きな蜘蛛や蛇の存在ですね。見ただけでかなり驚きますからね。 
 

Arm, Automotive tire, Leg, Automotive design, Human leg, Road, Infrastructure, Sport venue, Asphalt, Automotive wheel system, pinterest

写真:"もう一人のクライブ"ことクライブ・ローズは、この態勢でピットスポットを撮影。©Mark Thompson/ Getty Images


編集部:撮影していないときは、ご家族で過ごすことが多いのですか?3人でプライベートの時間を過ごすことはあったりするのでしょうか?

トンプソン:プライベートではサイクリングをこよなく愛していますね。ランニングも大好きなのですが、やはりサイクリングですね!サイクリングをしていないときは家でレコードを聞いて、リラックスしていますね。日本のレコード店では、たくさんレコードが置いてありとてもワクワクしますね。もちろん、子供たちと過ごすことも大好きですね。

そうですね、3人で集まることもありますよ。クライブ・メイソンと私の家は目と鼻の先ですので、いつも会っている印象がありますね。そのため、私たちのみならず妻同士もとても仲良しみたいですよ。クライブ・ローズはロンドン在住のため、離れたところに住んでいるのです。クライブ・ローズとは20年以上の付き合いがあり、クライブ・メイソンとは約30年間の付き合いがありますね。 

長い付き合いと経験があるため、お互いにどんな撮影をしたいのか心で通じ合っているのです。3人のうちの誰かが困っている時には、すぐにサポートすることができるので友情以上の絆があると感じています。ゲッティでより良い写真を提供するためには、1人では仕事がうまく回らないため、チームで動くことがとても大切なのです。 
 

Automotive design, Automotive tire, Formula one, Formula one tyres, Automotive wheel system, Formula one car, Synthetic rubber, Cameras & optics, Open-wheel car, Race car, pinterest

©Mark Thompson/ Getty Images