テレビ番組 『クレイジージャーニー』でもおなじみの犯罪ジャーナリスト、丸山ゴンザレスさん。
“パスポートがあれば誰でも行くことができる場所”をテーマとし、世界のスラム街を巡ったり、麻薬戦争の実態を探るべくギャングに接触するなど、スリル満点の旅をしています。
そんなゴンザレスさんが今回、“名”危険地帯を紹介。行くか行かないかは、あなた次第。テレビ未公開ネタもありますよ!
セブ島ロレガ地区にある
墓地スラムにてパチリ
《PROFILE》
まるやま・ごんざれす。1977年生まれ、国学院大学大学院修了後、出版社を経てフリージャーナリストへ。体当たりルポと地道な調査が得意で、危険地帯への潜入も多いことから犯罪ジャーナリストという肩書ももつ。
《INFORMATION》
独自の目線や強いこだわりをもって世界&日本を巡る旅人、“クレイジージャーニー”がその体験を語る番組『クレイジージャーニー』。毎週木曜日、23:56~からTBS系列にて放送中! 『クレイジージャーニー』DVD計4巻も、絶賛発売中&レンタル中です。全巻各DVD2枚組で、2750円。
『人骨が転がる墓地で生活する人がいる!』
——まずスラム街の定義とは?
僕の定義では、不法占拠して住み着いた低所得者層の住宅地ですね。基本的に手作りの掘っ建て小屋が並んでいるんですが、セブ島のここはちょっと変わっていて…。ロレガ地区の墓地に、墓守として住み着いている人たちがいるんです。通称「セメタリースラム」と呼ばれています。
墓地スラムで陽気に暮らす人々
——墓守ってことは、
それを仕事に賃金を得ているのですか?
契約した家の墓の手入れをする代わりに、住んでもいいという許可をもらっている程度。ただ、墓守を雇っていないところは、人骨がむき出しになっていたりするのでご注意。でも、フィリピンでは人が死んだときにお墓で飲み食いしながらギャンブルしたりするので、しんみりした感じじゃない。とはいえ独自のルールがあるので、勝手に入ると突き刺さるような視線を感じますよ。
このブロックそれぞれが故人のお墓です
——実はセブ島で、スリにあいまして。
対策はありますか?
ストリートチルドレンは観光客には強気ですが、地元のおばちゃんには弱い。しつこくついてきたら、おばちゃんがやってる食堂へと、逆に引っぱり込めばいい。これで逃げていきますよ。
『高級車を乗り回すスラム街住人がいる』
——江南といえば、
美容整形外科病院が並ぶ高級な街ですよね。
そう、面白いのはそこなんですよ。高級な街の端っこの九龍駅というところに2000人ぐらいが住むスラム街があって、向こうにはビル群が見える。
スラム街の小屋はどの国も造りがほぼ同じ。
さらに家自体は一般的な掘っ建て小屋なのに、スラム街入り口にジャガーとか高級車が停まってるんです。つまり、お金がないわけじゃないのに、家賃がもったいないからスラム街に住んでいる金持ちがいて。これって韓国人の気質なんだろうけど、車にはお金をかけているんです。
韓国の名酒JINROが積み上がっている…
——立ち入りはOKですか?
通り抜けるぐらいなら何も言われない。ただ、基本的にスラム街なので、治安はその国の中ではいちばん悪いと思ってください。
『日本人墓地の墓石で家を建てちゃいました』
——釜山のスラムもセブ島のような
セメタリー系ですか?
いや、ここも一風変わっているんだけど、セブとはちょっと違う。1950年に朝鮮戦争が起こったときに避難してきた人たちが住み着き、スラム街化したのが釜山市西区にある峨嵋碑石文化村。もともとは日本人が統治していた場所で、その後、日本人の墓地になったところに避難民がやってきた。ところが家を建てる建材がなかったので、墓石を解体してそれを使って家や道、塀を作った。だから「○○家之墓」と彫られている墓石が街のあちこちで見つけられます。
まるで標識のように立てられている墓石も
——え、罰当たりですね。
日本人からすればそうかもしれないけど、韓国人は、意外と何とも思わずに使っているようです。実際に見るとシュール。昔はもっとたくさん見ることができたんだけど、年月が経つうちに壁になじんでしまって、露出は少なくなっています。地元にも、その歴史を知っている人はほとんどいないみたいですね。
家の基礎に使われていることも
——文化村という名前はなぜ?
峨嵋碑石文化村もそうですが、隣の甘川文化村は「韓国のマチュピチュにしたい」とスラム街ごとアート化しようとしています。
墓石の上に立てられた家のゆるキャラ。
それでいて、ゆるキャラまでもいます(笑)。
『陽気なレゲエパーティに違法なはずの大麻が!』
——銃とか大麻とか、
ヤバい匂いしかしないですね(笑)。
無法地帯じゃないから、そこまでビビる必要はないですが(笑)、僕はズボンの前ポケットを定位置と決めて財布と携帯を入れ、リュックを背負って必ず両手を空けます。
レゲエパーティに堂々と現れる大麻の売人。
安ホテルに荷物を残すときは、持参のワイヤーキーで荷物を家具につないで即席金庫に。自己防衛は必要です。
週末は夜な夜なレゲエパーティが開かれる
——さて、ここの見どころは?
あちこちにレゲエ音楽が流れ、みんな陽気に酒を飲んでいます。うまくハマれば楽しめる。パーティは夜な夜なおこなわれていて、オーガナイザー仕切りの有名DJが回す高級なものもあれば、貧乏人が集うものもある。誰でも参加できるけど、正直、素人がたどり着くのは難しいですね。スラム街にはそこを取り仕切ってるボスがいるので、金を払って口利きしてもらうしかない。
スラムに入れば銃を持ったギャングがすぐそこに。
口約束は信用できず、要はお金を払ったかどうか。金さえ払えば、こちらはお客さんとして堂々と歩けます。相場はないので、その都度、相手の顔色などを見て交渉ですね。
『雑草地みたいな大麻畑で年間2億円売り上げる』
——これ大麻畑?
日本にもある普通の畑みたいですね(笑)。
ジャマイカでも大麻は違法。でも、売人への取り締まりは厳しいですが、吸ってるだけで捕まることはほぼない。だから、大麻草をベランダで育てる人もいるぐらいで、街中でも1~2株なら簡単に見つけられます。ただ、大麻畑はやっぱりレア。何度も金を払ってつないでもらって、僕もやっとたどり着きました。
こちらが若い大麻草。
背の高さまで伸びます
——収穫して出荷して売りさばくってことですよね?
そうです。この畑一帯の持ち主だけで、年間2億円の売り上げがあるらしいですよ。
『ここに住めたらむしろスラム界のエリート』
——ここはまたすごい規模!
戸籍をもっていない人も多いので、正確な数字はわかりませんが100万人は住んでいるといわれていて、ちょっとした国。
キベラスラムの一部。同じような小屋が延々並びます。
キベラの中には病院やお店があり、経済が回っています。
水道管はむき出し。下水は整備されていない
——働き口もあるんですか?
あります。さらに貧しい路上生活者たちは、キベラに働きに来たり…。実はキベラに住めるってことは、低所得層のなかではエリート。最近は政府がスラム街をなくそうと、掘っ建て小屋を壊してマンションを建てているんです。が、立ち退いた低所得者が、そのマンションに住む権利をお金持ちに転売しているんです。
違法コピーしたDVDで観賞する映画館。
実はこの場所は交通の便がよく、いい値で売れるので、普通の人も住んでいるんですよ。
きちんと整備されたトイレは有料
——スラムの中には入れる?
スラムの入り口にある交番で、「中が見たい」といって許可を得れば、数時間、警察官のガードがつくことも。まあ警官も、信用できませんけどね(笑)。
『岩場しかない小さな島に売春宿まであります』
——島が丸ごとスラム?
家と家の間の小道はゴツゴツした岩場。
そうなんです。サッカーコート2分の1程度の島で、最大2000人住んでいたとか。
不安しかないおんぼろボートで島まで2時間
——きっつきつですね。
ここら辺はナイルパーチという高級魚が獲れるので、昔から漁師が出入りしていたのですが、そのうち漁師の金目当てに商売人が集まるようになり、ホテルやバーができ、売春婦なども不法に住み着くようになった。利益を上げているから、国も黙認しているんです。
島唯一のホテル! 病院も売店もあります。
ここに行くにはお金の交渉をして、漁師の船に乗せてもらう以外ありません。ただ片道2時間かかって散策は5分で終了。海賊に襲われる可能性もありますが(笑)。
Photograph/Gonzares Maruyama, afloText/Aya Wakayama Edit/Yumi Matsubara