「テクノロジー」「イノベーション」。そんなキーワードが世を騒がす昨今、様々な技術や、それを生かしたガジェット、サービスなどが数々生まれているなかで、どんな”人”がどんな”場所”で、どんなプロジェクトを進めているのか? 今回は、クリエイティブカンパニー PARTYにお邪魔しました。

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寺島圭佑さん/PARTY モーショングラフィックアーティスト・アートディレクター。東海大学デザイン科中退後、紙媒体のデザインを数年経験。その後、独学で映像制作を学び、モーショングラフィックを得意とする映像プロダクションを経て、2013年からPARTYに参加。

PARTY

■アウトプットの枠のないまま作り上げていく

 最新テクノロジーとストーリーテリングを融合し、クライアントの課題を様々なアプローチで解決する集団「PARTY」。そんなPARTYがオフィスを構えるのは、いわゆるオフィス街とは離れた東京・代官山。東京一お洒落な街と評される、この特徴的な立地から生まれる発想や働き方もあるのでは?と、オフィスに伺うことにしました。 

 今回お話を伺ったのは、PARTYのMotion Graphics Artist/Art Directorを務める寺島圭佑さん。これまでは印刷物、印刷物とWebそして映像と、それぞれ異なるフォーマットのメディアに関わる企業を経て、それらの経験を活かせる場所としてPARTYを選んだと言います。 

 “PARTYらしさとはどのようなものか?”と伺うと、「とにかく(提案する施策の)枠がないですね。それが面白くもあり、大変なところもでもあります。単純に『映像を一本作ってください』という仕事ではなく、アウトプットが決まっていない状態で、何かそのブランドを盛り上げたいというオーダーでの仕事が多いです。

 そんなざっくりとした発注の中で、クライアントと『こういうものならいいのではないでしょうか…』と、互いの発想を融合して作り上げていきます」と寺島さんは語ります。 

 ファッション関連で携わったプロジェクトの一つが、UNITED ARROWSのブランド・EN ROUTEのイベント「THE SNAP UP」。

「参加者には、FASHION’S NIGHT OUTの間の時間だけ、アクティベーションされるアプリをダウンロードしてもらいます。時間になると『ポケモンGO』のように、EN ROUTEの服を着たモデルが街中に登場。そのモデルたちの写真を参加者がアップすると、その写真が審査されます。そして良い写真をブランド側が買い取る…という仕組みになっていました。買い取り額は1000円。その支払は、路上にいるキャッシャーマンというディスペンサーを持った人を見つけて引き換える形式。あと、このアプリやディスペンサーに関してもデザインしましたね」という寺島さん。

 このイベントで実施した“換金”というインセンティブを皆さんへ提供する施策が功を奏し、そのままそのお金を利用して実施ブランドでアイテムを購入するなど、売り上げの実績にも貢献したそうです。さらにアプリ内に「靴を撮れ」といった司令を促すことで、その時間内に靴の売り上げも上がったりという実績も…。 

 さらに驚くべきは、この施策が2014年に実施されたという点です! 「ポケモンGO」が流行したのちの現在、また当時よりもInstagramも定着した2017年で、もしこの施策を実施したとしたら、確実にさらなる反響があることでしょう。
 

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寺島さんの主な通勤の足は、なんとスケボー!

■自らの創作活動がクリエイティブ界で話題に

 クライアントとなる会社の幅は広く、ファッションの他にも生活用品もあるとのこと。 

 直近で関わった施策の一つは、サンスター「G・U・M PLAY」。通常の歯ブラシにアタッチメントを取り付け、専用アプリをスマホにダウンロードすることで、歯磨きのデータを解析。歯磨きの採点機能やデータを記録・分析する機能を通して、より歯磨きを楽しんでもらうという施策。初期の企画段階から、コンセプト、プロトタイプの製作、アプリやパッケージのデザインと、ほぼすべての工程に寺島さんは関わっていたそうです。 

 「歯ブラシ業界を盛り上げてほしい」というオーダーから、寺島さんらPARTYが課題意識として捉えたのは、「歯磨きを好きな人が少ないのではないか」という点。“義務感”としてではなく、“楽しみ”として…“自らが率先してやりたいこと”にシフトチェンジすることを目的に、クリエイトしたプロダクトになるそうです。 

 その中身はと言うと、「磨いている間にそのリズムに合わせてニュースを読み上げてくれるアプリ「MOUTH NEWS」や、磨いているリズムに合わせて音楽が流れるアプリ「MOUTH BAND」などを用意して、子供向けに留まらず大人たちも楽しめるエンターテインメント性あふれる仕様にしました」と寺島さん。 

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こんな空間から、枠にとらわれないアイデアがクリエイトされています。もちろん、デスクはきっちり整頓されています。

  
 このように様々な施策をクリエイトしている一方で、寺島さんは個人での創作活動も並行して行っています。

 「Skatepark Fontという、スケートボードパークをモチーフにしたフォントを趣味で制作。自分でWebに公開すると、フランスの『Fubiz』というメディアなど世界中の30ほどのメディアに取り上げられ、クリエイティブ界で話題になりました」とのこと。

 「自分の創作活動は『これが面白い!』と自己の判断で作っていくので、それを同時並行でやり続けることで“判断力”とともに“責任感”も磨かれていったんだと思います。そうすれば、次のクリエイションに対して、『今までよりもいいもの作らないといけない!』と考えるわけですね。これに加えて、弊社の仕事は振り幅が大きいところも功を奏していると言っていいですね。こうして、さまざまなカタチで創作物が外部に公開され、僕自身のアウトプットのイメージがクライアントにも伝わりやすくなりました。そうして、その作品たちがたたき台にもなって、『ああいうものを作れたらいいよね』ということ風にディスカッションしやすくなっています」とのこと。

 幅広いクリエーションを展開する本業で生まれた作品に、自らの創作活動からの作品も仕事のサンプルとして加わる。“枠”のないところから生まれたこれらの作品群が指標となって、次なるクリエーションに対する意思統一が具体的にでき上がる…そんな構造になっているのでしょう。そして、その意思統一からクリエイトする初期の段階から、その方向性も研ぎ澄ませされる。“枠”を取り払ったクリエーションのメリットが、好循環している様子が窺われます。

■コーディネート紹介:スーツの人はあまりいない

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こちらの部屋は、三面に投影可能なスタジオ。クライアントを招いたプレゼンはもちろん、打ち上げや社内のパーティーなどもここで行われます。 

 
 自らの創作活動を、本業にも生かしている寺島さん。”Onの時間”も、時にスケボーで出勤することもあるなど自由なムードの中、いい意味で公私を分けずに取り組んでいることが功を奏しています。 

 「決まっている就業時間もないですし、私は近所に住んでいるので公私の境目はふわっとしています。究極のフレックスですよね」と寺島さん。 

 服装についても、「人それぞれですけど、スーツの人はあまりいないですね。個人的にはデザイナーなので椅子に座っていることも多く、通勤も自転車やスケボーなので動きやすい服装が多いです。今日着ているのは、以前お仕事したEN ROUTEのもの。他にはNikeとかSupremeとか、ストリートよりのものが多いかもしれないですね」と語ってくれました。 

 個人での活動や、自由なオフィスの雰囲気。この環境があるからこそ、枠にとらわれないフリーなアウトプットが生まれる、私たちをワクワクさせてくれるのかもしれません。


PARTYをもっと知りたい方はこちら
>>> http://prty.jp/

Direction & Interview/
市來孝人(amplifier productions)
Edit & Photograph/Kazushige Ogawa(HDJ)

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