遥か未来ではなく、10年くらい先の近未来を考え、
暮らしのなかでハッピーな「モノ」や「コト」を研究し、
そして発信していくところ、“ifs未来研究所”。
メンズ・プラスでの掲載第2回目は、
CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)の
増田宗昭さんと三越伊勢丹ホールディングスの
大西 洋さんをゲストに迎え、ifs未来研究所所長・
川島蓉子さんを軸に「生活提案」とは何かを考えてゆきます。

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終始、笑いの絶えないハッピーなトークショーを展開していました。右がいわずもがなですが糸井重里さんで、左がモデレーターを務めたifs未来研究所所長の川島蓉子さんです。http://ifs-miraiken.jp/

ifs未来研究所 未来研サロン 第2回

まず始めにどうしてこのBIGなお二人を迎えてこの回をするに至ったかという経緯ですが、とある機会に大西社長とお会いする機会が有って、その時にCCCの増田さんと面白い事を考えているっておっしゃっていて、えーなんですか?って気になるじゃないですか。で、聞いたらそれどこかに書いてもいいですかってなって、いいですよってOKを頂いたのでその時に是非二人の対談をって言う事になって本当は3人だけのの対談にする予定になったんです。それを増田社長にお伝えしたら大公開してもいいよってなったんですね。

なので本日は何でも聞いて良いと聞いていますので濃い1時間にしたいと思います。

さっそくですがお二人の自己紹介もする必要はないと思いますし、お二人ともとても素敵な会社のリーダーでいらっしゃいますので、今日決断したことっていうのを聞いてみたいと思います。

ちょっとその前に大西社長から今日の装いのポイントも教えてください

(大西)

今日はこういったところでお話しさせていくにあたって着る物っていうのは個人の好みが有ると思うんですけど、靴だけは良い靴を履いていかないと悪いなっていうのが有って、自分の中ではこういった場に履いていく靴を決めていていくつかあるのでそのなかから選んで履いてきました。

ちなみにどこのブランドものでしょう

(大西)

シルバノ・ラッタンツィという所のものですね、皆様は言わなくても知っているでしょう(笑)

増田さんは如何でしょうか

(増田)

僕はこの間NHKとかでも放送されたんですけど丸首のTシャツ、ジーパン、運動靴っていうのが仕事をする時のファッションで、どなたに会うときのその恰好なんですけど、こういった暗いところや人からお金取るときとか(笑)はあかんなぁ。と思って、黒い服を着る事にしています黒を着ていく理由は黒でそろえておくと安上がりだから(笑)靴も、ズボンも。

とっかえひっかえできるので、黒です。

でも今日はすごくきれいなグレーのジャケットをお召しになられていますよね。

(増田)

これは・・・エルメスです(笑)

言うと思った~(笑)

お二人のこだわりが分かった所で、では今日の決断したことを教えてください。

(増田)

僕は瞬間瞬間で決断してるので難しいなぁ・・

例えば会議やるときは決めるってことが無い会議はするなと言っているので1個の会議でも10個以上の決断をしてるんです。

報告するだけではなくではなく絶対何かを決めるという事ですね。

(増田)

報告っていうのは何かの目的が有ってみんなでシェアする訳だから、そしたらその目的に対して誰がいつまでにどのくらいやるっていうのを決めようって言ってる。社員は逃げよう逃げようとするけどね(笑)

では大西さんは如何でしょうか?

(大西)

僕は今日は自分の意を強く持ったことでしょうか。。

今日は日中2時間くらい別の雑誌の取材を受けていたんですけど、そこで今の課題とか、自分の会社のスピード感とか決めなくてはいけない事が2ヶ月経っても戻ってこなかったりとか、何だか愚痴っぽくなっちゃったんですけど(笑)、会社全体の事を考えていくと結局は会社が若返りを図っていくという事が必要だなと思いました。

思い切ってやらせてみるとか、権限を持たせるとかそういう事でしょうか。

(大西)

50代を超えた中間管理職的な人とかはもうマインドチェンジが無理なんですよね。

社会人になってから30年以上たっていて、マインドチェンジがされてない人をもってマインドチェンジと言ってもそこは時間がかかってしまいますんで。決してその人たちをどうこうしようという事はないのですが、だったら新しい人たちをマインドチェンジし自分たちがモチベーションの上がる事をさせてその人たちでこの会社を強くしていくという気持ちを強く持ちました。

なるほど・・ではその中間管理職的な人たちは何をしていたらよいのでしょう。

(大西)

邪魔をしなければいいんですよ。(笑)

私も50を超えているので・・・これは今日の教訓ですね(笑)

では次はお二人の出会いのなれ初めを教えて下さい。

(増田)

大体去年の春位??今年の春??

(大西)

え~もっと前でしょう。ひどい。覚えてないんだ(笑)

(増田)

つい昨日の事のように感じますわ~(笑)

上手い(笑)

(大西)

2年半前くらいでしょう。

(増田)

4月か5月くらいだったよね。僕がTポイントの採用をお願いしますと営業に行ったの。実は前の伊勢丹の社長である武藤さんの時にも行ったんだよね。7,8年前かな?Tカードの立ち上げのときですね。その時はNOを出されて、でもうちはNOを出されてからが営業だってことで何度もお願いに行ったんですよ。

そして社長も変わってリベンジでも一回行こうってそこで初めて会ったんです。

大西さんの第一印象ってどうでしたか?

(増田)

前の社長とは全然違うなぁとおもいましたね。普段だとこういった営業は氷の壁にボール投げている感じなんですけど、それでもいいやって投げているんだけどピシピシッて受け止めて貰っているなという感じなんです。それが全然違うなぁと思いました。

大西さんはしっかり覚えていらっしゃるようですが筏でしょうか?

(大西)

二年前の春ですねあった時にまずそのプレゼンテーションの高さに驚いたんです。分析がすごかった。PPで簡潔に分かり易く纏めたものでした。

(増田)

プロジェクターもスクリーンも全てこっちから持っていくんです。驚いたでしょ(笑)

僕らは床の間営業と言って公園でも道端でもやりますから

私も1度だけ増田さんのプレゼンテーションを見たことが有ります

PPも中身も凄いけど、相手の要求をすべて想定して作成しているのでまるで男と男の勝負を見ているみたいでした。

(大西)

その凄いプレゼンテーションを見てその情報量や正確な分析力、企画力はこの(小売りの)世界にいて沢山のマーケティング会社など見てきたけれどどれよりも素晴らしくて初めて見るものだったんです。あ、今日は褒めちゃいけないんだっけ??(笑)

だからこの会社と組まなくしてうちの会社には将来はあるのかとおもったんです。今までやったことが無くてもそういう所と組まないとダメなんだと。うちの役員たちは皆否定しましたけどね。予想通り(笑)

その時私はきちんとやっていない事を良いと言ってくれる役員、こういった事に取り組める役員が次の社長に相応しい。そう思ったのです。最終的には色々な形で組ませて頂く事になったのですがだったら最初にそれを感じ取ってくれればもっと早く組めますからね。

このお二人が共有する今後の思惑とは?

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今回は何を両社で始められるのですか?具体的に教えてください。

(大西)

TポイントとMIポイントというのがそれぞれあるのですが小売業というのはマーケティング力と人と企画力なんです。

当社に無いものをこちらの会社は持っていました。

特に無いと思われるものは何ですか?

(大西)

企画力ですね。色々な所で情報を掴んで、良い意味で遊んでいないと善し悪しが分からない。具体化していくプロセスがうちの会社にはないんです。

(増田)

僕 らは企画会社なんです。大西さんに会った時にお話ししました。三越伊勢丹さんが世界一と言われる百貨店になるようお手伝いをさせて欲しいと言いました。こ れが一つ目、もう一つは世界一のデーターベスマーケティングを活用している百貨店になられるお手伝いをさせてください。その二つですかね。

提案力って企画力とか生活提案力って凄く使う言葉ですけど、もう少し噛み砕いて聞いてもいいですか?企画ってなんですか?

(大西)

我々は百貨店なのでその百貨店の範囲に来るお客様に対してっていうのが原点なんですけど、常に新しいものを発信し続けなければいけないとこれからはダメなんです。

うちが新しいものを発信し続けるには企画、計画が必要で誰に何をするというのがきちんとされていなくてはいけない。それはもともとうちの強みだったのですが、世の中のスピードがどんどんアップしていてその企画が付いていけなくなったんですね。

いつからそう感じていましたか??

(大西)

私が社長になる前からです。企画力が有れば新しいものが評価されてお客様の満足が得られ、それが形になる。そういう事例がないんです。

(増田)

謙遜して仰られているけどファッションミュージアムという切り口は素晴らしい企画だと思うし、ただ今のままではだめだといっているのだと思いますよ。

僕 が企画という所で言うとお客様たちがワオ!!ってなる物。それがサービス、商品であれワオ!!と思うものを作る事、そしたらそれは欲しくなる、欲しくなっ たら買いますよね。Beforeインターネットとafterインターネットってよく言うのだけど、アフターインターネットの時代はものはネットで選べる し、安く買えるしという時代に百貨を並べてものが有りますよって言ってもそれだけでは物は売れない。それに早く気付かれたのが新宿伊勢丹だと思う。

それどデーターベースを使ったり、本の力を使ったりすると凄い百貨店になると思ってその為に今回はやるんです。メインはそれですね。

企画を一緒に立ち上げてより良い百貨店を目指すという事ですね。

今の話を伺っていると単体のCCCではなくどうして三越伊勢丹と組んだのでしょうか??

(増田)

僕 らもカッコいいと言っているけど実態は大したことが無いんです。ファッションの事が分かるやつが社内に何人いるの?って感じだし、さっきに大西さんが履い ている靴の名前聞いてわかる人って言ってもうちの社員はだれも手をあげないと思う。だから三越伊勢丹で欠落しているものを僕らは持っているかもしれないけ れど、僕らが世界一の企画会社になりたい時に僕らにも欠落しているしているものが有る。それを三越伊勢丹や大西さんから学びたいと思っているので人的交流 もやりましょうと言っています。

具体的に何から始めるかは決まっているのでしょうか?

(大西)

これというのはないんですが、会社を早く作ってマーケティングしてTカードの5000万人とうちの280万人の情報を纏めて様々なライフスタイルを理解していく。その人たちに何をするか考えています。

(増田)

ファッ ションとか車とかもそうだけど、貧しい時、お客様は物事を単一的な価値で大量にやれば満足してくれるけれども高度成長して今の時代は年代ごとの様々なライ フスタイルが有る。そうすると1つのライフスタイルの提案だけでは決して間に合わない。だからエルメスが好きな人もいればユニクロが好きな人もいる、そう いう風なグラデーションの時代をみんな楽しんでいるんです。それらの人がワオ!!という為にはこの人にはこれ、この人にはこれ、という風にしていかないと いけない時代。さすればこの人に合ったものはこれというのを見つけなくてはいけない。その時にデータというのが必要となってくるのではないでしょうか。

増 田さんのお話は一貫してビックデータありきでもインターネットありきでもなく生活提案というものをやりたいとずっと仰っていますよね。でも私にとっては生 活提案=ライフスタイルで言葉としてはたくさん使うんですけど、実際は何?って時に、この売り場では生活提案をしていて楽しいみたいな所はまだまだ物凄く 少ないと思うんです。

生活提案ってこんなものというものをお二人に聞きたいんです。

(大西)

個 に関わるライフスタイルっていろんなものが関わっている。その中の物がたまたま物であったり事であったりという事なんですよね。それらのコンテンツを自分 たちがどれだけ蓄積しているか、それをお客様に提案してワオ!!というような、その人にとって新しい経験をしてもらえるような感覚、空間をどのくらい作れ るかというのが我々のものすごく大きな課題。その一つ一つが生活提案になるという。じゃあ具体的に今ある新宿のお店を生活提案型の店舗にしたらどうだろう という事ですが、全部それにしてしまったらそれはそれでビジネスとして成り立たなくなってしまうとおもいます。お店の大きさとか規模間が重要ですね。

生活提案とはなにか?

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カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の創業者であり、代表取締役社長・最高経営責任者。増田宗昭(ますだ むねあき)さん
1951年1月20日生まれ。

増田さんにとっての生活提案とは何でしょう。

(増田)

例 えばAirbnb有りますよね。知ってる人、知らない人いると思います。ライフスタイルもこのように多様化しているという事です。シェアハウスとか民泊と いう表現でも最近よく見かけますがこれは本質を掘り下げていくとある種1つのライフスタイルとして確立されたと思う。全部の人にとっていいものではないけ れど、ある種のスタイルの人達にとってはすごくいいと思う。これみたいに生活提案というのはこれだ!という事ではなく多様化した価値観に対し半歩先、1歩 先をお勧めする事なんじゃないかな?

英語で言うとRecommendになりますね。

提案というよりおすすめという事ですね。半歩先ってどう見つけるのでしょうか?

(増田)

人にとってちゃうからなぁ

(大西)

その人にとって見た事ないとかハッとするという事でしょうかね。

どっかで見たとかそういうのじゃない。

(増田)

例えば虎屋の羊羹をお中元とかお歳暮であげたいなぁと思っても結構高いなぁとかそういう憧れってありますよね。でもそこに向かっていく過程って結構楽しいじゃん。

頑張ったおかげで俺も虎屋の羊羹をお茶菓子に出せるようになったとか。

それもある種の生活提案なんじゃないかなぁ

ファミリーマートのスイーツを彼女の部屋で二人で一緒に食べるのもいいじゃん。

これもライフスタイル。

この間糸井重里さんと対談させて頂いた時に面白さって何ですかって聞いたんです。

その答えが意外性と共感性が一緒にある事だとおっしゃられていたんですね。

新しい事って意外だっていう驚きというのは確かに分かるんです。でもそればっかりだと疲れちゃう。何度も申し訳ないのですが共感性そういうモノもあってほしいなと思います。

(大西)

人は皆内面にテイストを持っていますよね。そこにフィットしつつ感じた事のない物っていう所ですよね。あんまり共感してしまうとそこにびっくりとか驚きが感じなくなってしまいますよね。

2社が違うので敢えて申し上げますが長い歴史を持っている伊勢丹さんが持っている共感性は安心感が有ると思う保証性ともいうんでしょうか。創業社長であるCCCさんがこれから築いていかなくてはいけない安心感や保証が組むことで面白い事が起きてくるといいなと思います

(大西)

うちの歴史とか安心感、共感性とかは今の時代にはフィットしていないでしょう。

そこまで否定しなくても…

(大西)

それが有るから日本橋は伸びないんですよね(笑)

大西さんは厳しいからそうおっしゃるけど歴史というのは作ろうと思っても作れないんですよね。新興企業にとっては。物凄い財産でもあります。追ってかなくてはいけないものなんですよね。

(大西)

それは否定はしません。200年、300年と京都とかで歴史のある会社が有るというのは良くありますよね。でもその会社が元々あった織陣の仕事を続けているかというとそうではない変化をしている企業が多くある。その変化を前提とするならば歴史は生きてくると思います。

変化という意味での今を判断していかなくてはいけないという事ですよね。

(増田)

あ のね、僕は小売業のみなさんに言っているんだけどね、beforeインターネットの時僕らが高度成長の時、ものが無かったから、工場で物が作られて、それ を売る場所が有って、店が出来ていってという時代が何十年かあったと思うんだけど、afterインターネットの時ってスマほで何でも買えちゃうじゃん。ア リババ?アリペイ?だったかな?1年間の決済が国家予算に匹敵する80兆円くらい。それくらいの大きな金額がここで決済されているのってどうなん?みたい な。そんなことがあって、店に行かなくてもここで物が買えてしまう時代って凄いし、高度成長の時代ってみんな物を買ったじゃん。前ルイヴィトンの社長に 会った時に日本人にアンケート取って鞄欲しいですかって聞いたら鞄欲しい人は一人もいなかった。でも、ルイヴィトンの鞄欲しいですかって聞いたら結構欲し い人がいたっていう話があって、ものを選んで買うってことがここで終わる時代にじゃあ一体小売業はPR展開として何をしなくてはいけないのかってあって、 僕は4つくらい方向性が有るなと思っていてその一つはデーターベースまわり、もう一個は虎屋さんの様に自分で作って自分で売っているそれだったらネットの 時代が来ようが影響を受けない。でも仕入れるという場合はメーカーさんが有るわけで、そのメーカーさんがネットに乗せちゃったときには小売コストがかから ないから安く売られてしまう。そうなるとお客様は店に行く必要がなくなってしまう。結果としてユニクロさんや虎屋さんなどの自分で作って自分で売るという ビジネスが普通になってきている。だとしたときに大西さんも実はやられているんだけども自分で作って自分で売るというファミリーマートさんでもしているけ どプライベートブランド比率というのがすごく高くなってきている。ただ小売業というのは昔から物を置いて並べてお客様に見せるそういうビジネスモデルが afterインターネットのの時には難しくなって限りなく小売店はメーカーに近づいていくそういう事を一緒にお手伝いしたいなぁと。

Transcription/Yuko Yano
編集者:小川和繁