2018.04.01

隔週連載

【副住職のつぶやき説法1 妙心寺退蔵院・松山大耕】高学歴に高収入。すべてを手に入れたハイスペック男は、幸せではない!?

  ダボス会議への出席や、ローマ教皇への謁見、ダライ・ラマ14世と会談するなど、世界各国で宗教の垣根を越えて活躍する退蔵院の松山さん。地元の京都では、外国人に禅体験を紹介したり、京都でアジア初の宗教間交流駅伝を主宰するなどその活動も幅広く面白い。そんな松山さんから2週間に1度、今を生きる秘訣をお届けします。

「高学歴に高収入。すべてを手に入れたハイスペック男は、幸せではない!?」

「本物の自由や幸せを手に入れるには?」

 先日、山手線に乗った時に車内広告をじっくり見てみた。英会話、マンション、婚活、予備校、転職、ローン…。所狭しと並べられた広告に囲まれた車内は、空間としてものすごく圧迫感があるし、息苦しかった。これを全部手に入れないと幸せになれないのか。毎日、こんなものに囲まれていたら気が滅入るのもよくわかる。
 
 尊敬するあるお坊さんが「よく生きるためには自分の心から発する声に耳を傾けないといけない」とおっしゃった。本当に自分がそれをやりたいのか、求めているのか。静かな環境に身を置き、心の声に耳を傾けると答えは自ずと見つかる。
 
 例えば、ある男性が予備校に通って、いい大学に入って、大企業に就職したとする。キャリアアップのために英会話を学んで転職し、35年ローンを組んで都内にタワーマンションを買う。そして、婚活が実って結婚したとしよう。

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 山手線に張られた広告の品をすべて手に入れたわけだが、果たしてそれが本当に彼がしたかったことなのか。確かに、ステータスを手に入れて優越感はあるかもしれない。しかし、その先に本当の幸せが待っているかというと、到底そうは思えない。なぜなら、周囲との比較の中に幸せはないからだ。

 
「自由」という言葉がある。一般的には何か拘束されていたものからの解放を意味するが、これは欧米の概念で、実はもともと仏教由来の言葉だ。フリーダムやリバティーといった欧米の概念の対訳ではない。本来、自由の「由」は「よる」という意味で、他に由らず、独立して、自存することを説く。晩年のブッダは、弟子達に「自らをよりどころとし、他のものをよりどころとせずにあれ」と教えられた。私たちはどうしても周りの環境や評価に左右されがちだ。みんながそう言っているからやらないといけない。テレビでこう言ってから良いものに違いない。しかし、そこに本当の意味での自由はない。
 食べログの評価が高いからおいしいのではない。トリップアドバイザーに良い口コミが多いから美しいのではない。自分がおいしいと思うから、おいしいんだ。自分が美しいと思うから、美しいんだ。自分の感覚、自分の感性、自分の直観を信じ、それに自存することができれば、自由も幸せも手に入れることができる。
 高度に情報化され、毎日洪水のようにさまざまな情報が飛び交う時代を私たちは生きている。ぼーっとしていたらその流れに飲み込まれてしまう。しかし、いくら流行を追い求めて、我先にと新しい情報を手に入れても本当の満足は得られない。
 周りに惑わされてはいけない。見るべきものは車内広告ではなく、自分自身の心の中にあるのだ。

Daiko Matsuyama Profile Picture小edited

妙心寺退蔵院 副住職 松山大耕
1978年京都市生まれ。2003年東京大学大学院 農学生命科学研究科修了。政府観光庁Visit Japan大使、京都観光おもてなし大使を兼任。2016年『日経ビジネス』誌の「次代を創る100人」に選出。前ローマ教皇やダライ・ラマ14世との会談、ダボス会議に出席など世界各国で宗教の垣根を超えて活動中。

Edit/Emiko Kuribayashi

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