老舗の「壹番館洋服店」の社長であり、仕立て屋として手を動かしながら、銀座人として幅広い人脈をもち、この土地ならではの丁寧な商いをする渡辺新さん。男はこんな風に銀座のお店は楽しむべき! 怖くない、銀座の裏口案内を2週間に1度の連載でお届けします。

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 男たるもの、料亭くらいは知っておきたい。とは言うものの、敷居が高いのが現状だろう。その突破口となるのが米村さんのカウンター席だ。 

 場所は新ばし料亭街。新ばしと言っても、住所は銀座7丁目。ここ新橋演舞場周辺には、名だたる料亭が存在する。毎夜、政財界の真剣勝負が繰り広げられ、50名を超える芸者衆が座敷で活躍する。 

 昭和4年創業の米村さんは、政財界はもちろんのこと、数多くの作家や画家に愛されてきた。料亭なので、基本はお座敷だ。立派な広間もあるが、今回おすすめするのがカウンター席。お座敷カウンターは掘り炬燵なので、初心者にも安心だ。 
 

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 関西発祥の料亭が多いなか、米村さんは江戸料理をいまに伝えるお店。お料理の美味しさは新ばしでも有名だが、そのなかでも名物と言われるのが鯛焼飯。一見シンプルな石鍋の焼き飯だが、骨を丁寧に外して下拵(ごしら)えした実に贅沢なお料理だ。 

 料亭は食材だけでなく、美味しいお料理を彩る食器や床の間の掛け軸、お花や花器までもがご馳走なのだ。さらに、女将さんとの会話や芸者衆の磨き抜かれた舞を楽しむ総合芸術だ。こんな奥行きのある世界を楽しめるような大人になりたいもの。一人前の大人へのハードルは高い。 
 

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 一度行っただけで満足するのではなく、何度も通って馴染み(常連)になる充実感を、そろそろ味わいたい。カウンター席でのお料理だけでも素晴らしい経験だが、余裕が出てきたら女将さんに相談して、芸者衆を呼んでもらうのをおすすめする。

 花柳界で、スマートに楽しめる大人になるのも悪くないだろう。 


米村 
住所/東京都中央区銀座7丁目17−18 
TEL/ 03・3541・1723


《Profile》

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渡辺 新さん
…1966年生まれ。「壹番館洋服店」代表取締役社長。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、渡欧。イタリアのドムスアカデミーで洋服作りを学ぶ。著書に『銀座・資本論 21世紀の幸福な「商売」とはなにか?』(講談社+α新書)。現在、2018年公開予定の銀座の映画作りのサポートにも奔走している。