マーベリック。それは一匹狼であり、“異端児”。10歳でミュージカルの子役としてデビューした、池松壮亮さん。いつしか映画にのめり込み、「そこに何かあるのでは?」と答えを探すようになったと言う彼。演技者としてやっていく覚悟を決めてから、その活躍ぶりはとどまることを知りません。

「今度は何をやってくれるのか?」― 彼の持つマーベリックな世界観に迫ります。

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MAVERICK OF THE MONTH:SOUSUKE IKEMATSU

 
20代でやるべきことを
30代に持ち込む
…みたいなことはしたくない。


 朝のスタジオには、ハイブランドの服に混じって、袴だの下駄だのハイヒールだのが並べられていた。朝早くの撮影になったのは、彼を撮るのなら、この時間の自然光がいいという篠山紀信氏の発案だったし、メイクルームでは長い時間をかけて、彫師が彼の首に龍を描いていた。スタッフの間に流れる、強いこだわりを感じずにはいられない空気…撮影の後、感想を聞くと彼はこう言った。

「(撮られることにおいては)ど素人が、大人たちの高尚な遊びに混ぜていただいたような気がしています」と。

 あまたいる若手俳優の中で、彼が特別な存在であることに異を唱える人はいないだろう。

『ラストサムライ』でトム・クルーズ相手に、「行かないで」と大粒の涙を流した少年役でスクリーンデビューをはたしてから15年。演技者としての飛びぬけた才覚が注目されながら、彼が選ぶのは深夜枠の連ドラや単館で公開されるような映画作品が少なくない。そういう意味においても、“マーベリック”という言葉は彼によく似合っている。

「自分を異端だとも異端じゃないとも思わないし、でも、そう言われることにはわりと慣れてもいます。ただ、自分のことを異端だと言えるのは、本当に突き詰めた人か、そうでなければダサい、と言うのは言葉が違うかな?…でも、そういう感じがするんですね。最大限、自分を褒めるとすれば、“変わっている”かな。でも、そう言われるのは、『僕がまっすぐだからじゃないか』とも思います」と話す池松さん。 

そもそも彼が俳優の仕事を始めたのは、『ライオンキング』のオーディションに受かったことがきっかけだった。

― すでに芸能活動をしていた姉とともに、「度胸試しのつもり」で母に連れて行かれ、ヤングシンバを射止めてしまう。

 12歳で出演した『ラストサムライ』のオーディションも、本人は「野球の試合を休んでまでして、なんで行かなきゃならないんだ」と抵抗したそうだが、面接でその話をしてズウィック監督に気に入られる。続く『鉄人28号』では、1万人のオーディションから主演に選ばれた。要は、才能あふれる名子役としてキャリアをスタートさせているわけだ。しかし、彼はその波に乗ることをしなかった。10代半ばごろから、彼はたまにしか仕事をしなくなる。

「足を突っ込んだところで、このまま適当に終わりたくなかったんです。でも、これしかないんだろうなと覚悟を決めて東京に来て、大学の映画学科に4年間通って、その間にある程度、覚悟が決まりました」と池松さん。

 想像してみた。彼は自分が演技者として選ばれた才覚を持っていることを早くに自覚し、でも、それを受け入れるのに10年の時間を要したのではないだろうか。そう彼に尋ねると、YESでもNOでもなく、こう返ってきた。

「どんな職業の人でも、その職に自分が選ばれたと感じることはあるでしょう。それに例えば30年、40年と俳優をやっても芽がでなかった人が41年目に花開いたら、その人は自分が俳優として選ばれた存在だったと思えるんじゃないでしょうか。選ばれる、って、そういうことじゃないかと僕は思います」

「だって…」という接続詞とともに、こんなことも唐突に言い出す…。

「10代で僕は敗北しているんです。男の子はプロ野球選手かミュージシャンになれなかった時点で、男として敗北でしょう」

 実際、彼は野球少年だった。しかもガチの。

「軟式ですけど、わりと強いチームに所属していました。小中時代、一緒にやっていた友人は、プロになっています。僕も自分では才能あると思っていたんですが、それが野球のいいところでもあって、小学生ぐらいでプロになれるかがだいたい分かるんです。僕にその道は開かれてなかった。そんなときに俳優という道を与えられて、でも、僕自身としては野球をあきらめたくなかったから、俳優というものをどこか二の次にしていたんだと思います」

 プロ野球選手への夢は、「ウルトラマンになりたい」の延長線上にあるようなものだったかもしれないと言う池松さん。それでも、今でも思うらしい…「選ばれるのなら、野球の神様に選んでほしかった。カッコいい男の生き方はそっちだから」と。そんな彼に、俳優として生きる覚悟みたいなものを与えたのが、大学の4年間で見まくった映画だった。

池松壮亮さんへ一問一答!

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
池松壮亮「悲しみを請け負うことの多い人生について」
池松壮亮「悲しみを請け負うことの多い人生について」 thumnail
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・好きな色は何色ですか? 

・好きな音楽は? 
うーん、365日の300日はジャズ

・好きな映画監督、1人挙げるとしたら? 
めちゃくちゃいっぱいいますが……ケン・ローチ

・尊敬する人はいますか? 
今日撮っていただいた篠山さんはほとんど初対面だったんですけど、「どんな人なんだろう、この人は何を残そうとしてるんだろう」って、勝手に尊敬させてもらってました

・同世代で活躍する人で気になる人いますか? 
ちょっと下ですけど、大谷翔平

・やめたい癖はありますか? 
結構たくさんありますね。しぐさ一つ一つでも、たまに自分が好きじゃない自分のしぐさは結構あります

・人生の必需品は何ですか? 
うーん、まぁ俳優なので何も持たなくても。心

・好きな季節は? 
まぁ全部好きですけど、夏生まれなんで夏

・親しい友人は何人くらいいますか? 
3、4人

・生まれ変わったら何になりたいですか? 
生まれ変わりたくないですね

・何歳まで生きたいですか? 
こんなこと言ったら親とか先祖に怒られそうですけど、別に何歳でもいいですし、そんなに長生きしようと思っていないです

・占いは信じますか? 
良いことだけ信じてます

・一番のリラックス方法は何ですか? 
寝てるときですかね

・初恋はいつですか? 
小学校3年生くらいじゃないですかね

・好きな食べ物は何ですか? 
これは昔から変わらず、麺類です

・苦手な食べ物はありますか? 
昔は母親が作るみそ汁が、一番苦手でした

・東京で一番好きな場所はどこですか? 
過去に住んだ街

・海外で好きだった場所はありますか? 
ここ数年で、一番行って衝撃だったというか、もう一度行きたいのはエジプトです

・犬派ですか、猫派ですか? 
どっちでもいいんですけど、どちらかといったら犬ですかね

・朝型ですか、夜型ですか? 
夜型だと思います

・お酒は何が好きですか? 
最近は焼酎ばっかり飲んでますね

・最近買い物して嬉しかったものありますか? 
クルマを買いました

・5日間休みが取れたらどこに行きたいですか? 
うーんなんか、空が広くて青々としたところ

・夢は何ですか? 
夢は幸せを感じることです

・自分の人生にタイトルを付けるとしたら? 
「池松壮亮」


◇PROFILE
池松壮亮さん
…1990年生まれ。福岡県出身。2001年~2003年にミュージカル『ライオンキング』に出演。03年『ラストサムライ』でスクリーンデビュー。14年には『ぼくたちの家族』『海を感じる時』『紙の月』『愛の渦』などで日本アカデミー賞新人俳優賞やブルーリボン賞助演男優賞、キネマ旬報ベスト・テン助演男優賞など数多くの映画賞を受賞。9月28日からは出演映画『散り椿』が全国公開。また『斬、』は2018年11月24日からユーロスペース他全国公開予定。
  


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▶▶▶池松壮亮さんへのインタビュー全記事をご覧いただけます。
『メンズクラブ2018年10月号』をぜひ手に取ってみてください!!


Photograph / Kishin Shinoyama
Styling / Baby Mix
Tattoo Art / Eiji Takahashi(UPROCK)
Hair / Toshihiko Shingu (VRAI) 
Make / Sada Ito for NARS cosmetics(donna)
Text / Yukiko Yaguchi
Edit / Emiko Kuribayashi
Video Shooting / Yu Nakajima
Video Edit / Tsuyoshi Hasegawa