2018年4月20日(金)より公開となる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18』の7作目、ロイヤル・バレエ『冬物語』。その男性主役に大抜擢された、約20年ぶりの日本人プリンシパル平野亮一さんをご存じですか?

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2014年2月公演のロイヤル・バレエ団による「眠れる森の美女」でフロリムンド王子を演じる平野亮一さん。デュエットのオーロラ王女役は崔 裕熙さん / Getty Images

 この快挙を達成した彼への独占インタビューが、このたびここに実現しました。今作の見どころやプライベートまで、ファン垂涎の内容を早速チェックしてください。

表現力や演技力を高めるのは、“顔芸”!

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© ROH, 2018. ph.by Tristram Kenton

―― 平野さんの演じたリオンディーズは、嫉妬心から愛する人や親友を追いやってしまい、激しい後悔の念に駆られるという、現代の人たちも共感しやすいキャラクターかと思いますが、平野さんはこのキャラクターをどのようにとらえていますか?

平野亮一(以下H):誰もが少しは経験したことがあるでしょうし、素質はもっていると思います。僕も自分と照らし合わせると似ているところもあるかなと感じます。「嫉妬」っていうとすごく嫌に感じるんですけど、その分パワフルですよね。つらいことも苦しいことも起きるとは思います。 


―― 平野さんも共感される部分があったということでしょうか。

H:そうですね。どこかそういう素質は、きっとあると思います(笑)。



―― リオンディーズは、踊りから表情まで狂気に満ちた鬼気迫る演技がとても印象的ですが、平野さんは役柄の感情や表現力をどのように習得されていくのでしょうか?

H:僕は「演技」というものを重視するので、考え抜いてひとつひとつの場面や動きに意味をつけて、そこから細かい表現力が出てくると思っています。ただ単に、ピンポイントでフレーズをやるだけだと、ちゃんと話が伝わらない気がしているので、本を読んでいるのと同じように、流れる物語を体でも表現しないといけない。1小節話して、その後2小節3小節を抜かして4小節に行っても、物語はさっぱりわからなくなるだけじゃないですか。だから、間の細かいところまでひとつひとつの動きに言葉を詰め込むっていうのはすごく大切で、それがあるからこそ物語がしっかり伝わると思います。 


―― 表現力や演技力を高めるために、日常的にされていることはありますか?

H:演技力というのは多分、身に着けていくものなんでしょうけど、僕は見て学ぶタイプですね。というのも、昔から素晴らしい方々のドラマティックな役柄を、ずっと近くで見ているので…。どういう表現の仕方をすれば伝わるかというのを、見て学んできました。ほかには顔芸ですかね、顔で表現する(笑)。

オフの日は自然と触れ合ってリフレッシュ

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© ROH, 2018. ph.by Tristram Kenton

―― ハーマイオニーを演じた、ローレン・カスバートソンさんとの共演はいかがでしたか?

H:彼女とは何回か踊っていますし、演技と演技のやりとりって会話をしているようなもので、すごくよかったです。 

  
―― 平野さんが主役を演じられた『冬物語』が、スクリーンをとおして日本のファンにも届けられます。こういったシネマシーズンの取り組みをどう感じていますか? 

H:毎年上映する数も多くなってきて、国外に観に行くと時間もお金もかかりますから、世界中で手頃に僕たちの踊りや舞台を楽しんでもらえるというのは素晴らしいことだと思っています。これをきっかけに、生で観たいなと思ってくれるだけでも嬉しいです。 


 
―― 日本のファンに向けて、注目してほしいポイントをお願いします。

H:演技ですね! でも、僕だけが演技しているわけではないので、周りも観てもらいたいと思います。もしできれば2回観て、自分なりにセリフを頭の中で言いながら観るともっと楽しいんじゃないかなって思います。 


 
―― プリンシパルとしての重責を常に担っていらっしゃいますが、オフの日のリフレッシュ方法や、バランスの取り方などはありますか? 

H:僕は自然が好きなので、散歩が結構好きですね。買い物に行くときも、少し遠くても歩いて行きます。あとは、ロンドン郊外に住んでいるので、自然と触れ合うことがいちばんのリフレッシュ方法です。


いろいろなダンサーたちのいいところどりをしていきたい

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© ROH, 2018. ph.by Tristram Kenton

―― 入団当初から幅広い役柄を演じられている平野さんですが、目標とされるダンサーはいらっしゃいますか?

H:僕は、“この人”という人はいなくて…。やはり、ダンサーひとりひとりにいいところがあるので、そのいいところどりをしたいなと思います。

 
―― 平野さんは、毎回いろいろな役を演じる前に、ルーティンみたいなものを作られていますか?

H:いや、僕は特別なルーティンというのはないですね。メイクをしている間にそのキャラクターに段々気持ちが変化して、ゾーン(役)に入っていくって感じです。



―― 『冬物語』もセリフが聞こえてくるようなバレエでしたが、演じながら気持ちをセリフなどで考えていたりしますか?

H:セリフは頭の中で言います。そういうシナリオは頭の中にあります。



―― では、1幕目と3幕目でガラッと変わった感じですか?

H:そうですね。



―― それも関西弁なのかなって、ちょっと思ってしまいました。(※平野氏は兵庫県出身)

H:いえ、英語ですね(笑)。


 
―― 先日のNHKのドキュメンタリーも多くの反響があり、Twitterでもとても話題になりました。

H:そうなんですか。ありがとうございます。嬉しいです。



―― 『くるみ割り人形』のパ・ド・ドゥをほとんど放送していたことが話題になっていました。

H:本当に大がかりな撮影で、4Kカメラを4~5台使って全幕撮っていましたよ。



―― 夏の『ロイヤル・エレガンスの夕べ』でも、メンバーのひとりに選ばれているそうですね。

H:はい、そうです。僕も高田(茜さん)も。


 
―― 皆さんを生で観られることに、今からワクワクしています。

H:ありがとうございます!


これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
The Winter's Tale trailer (The Royal Ballet)
The Winter's Tale trailer (The Royal Ballet) thumnail
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平野亮一 Ryoichi Hirano

大阪府出身。平野節子バレエ・スクールで学び、2001年にローザンヌ国際バレエコンクールでプロ研修賞を受賞。2002年には英国ロイヤル・バレエへ入団。『眠れる森の美女』のフロリモンド王子、マクミラン振付『パゴダの王子』の王子、『ライモンダ』のジャン・ド・ブリエンヌなどで主演。『ドン・キホーテ』のエスパーダとガマーシュ、クランコ振付『オネーギン』のグレーミン、アシュトン振付『ピーターラビットと仲間たち』のジェレミー・フィッシャーとペティトーおばさん、マクミラン振付『マイヤリング』のベイ・ミドルトン大佐、『くるみ割り人形』のねずみの王様、アシュトン振付『レ・パテイヌール』のホワイトカップル、ド・ヴァロワ振付『チェックメイト』のブラック・ナイト、バランシン振付『ジュエルズ』のエメラルド、スカーレット振付『スウィート・ヴァイオレット』のロバート・ウッドのなど多くの主要な役を演じています。


ロイヤル・バレエ『冬物語』
2018年4月20日(金)より、
TOHO シネマズ日本橋ほかにて全国順次公開
http://tohotowa.co.jp/roh/






Photograph / Getty Images
© ROH, 2018. ph.by Tristram Kenton