2018.05.24

なぜ、彼は異端児となったのか?

立川志らく「たとえテレビでも、忖度しないのが落語家です。」

マーベリック。それは一匹狼であり、“異端児”。落語界の異端児、故・立川談志に“お前は俺と同じ人間”と言わしめた愛弟子は、師匠の想像どおり、落語家として活躍し、落語界を元気にしている。“何にでも首を突っ込め”という師匠の言いつけどおり、テレビはもちろん、山田洋次監督の映画にまで出演を果たす。今度は何をやってくれるのか? 彼のもつマーベリックな世界観に迫ります。

 
MAVERICK OF THE MONTH:SHIRAKU TATEKAWA
 

 
  
 
年をとると難しくなるんだけど、
怖くて尊敬できる人は
常にいるべきです。
 
 もしもその人が今も元気であったなら、まっ先にこの連載に登場願ったであろうと思われるのが落語家・立川談志である。落語家としてまごうことなき天才だが、『笑点』を企画して初代司会者になり、かと思えば参議院議員になったり、果ては真打昇進試験制度をめぐって師匠・柳家小さんと対立して落語協会を脱退。落語立川流を設立した。確信犯的に次々と“事件”を起こす彼に多くの人が魅了されたが、そんな談志にもっとも可愛がられたと自負する弟子が立川志らくである。彼に聞いてみる。立川談志は異端児であったのか。
 
 「談志自身は、そういう言われ方をするのは好んでいなかったでしょうね。自分こそが正統で王道。違っているのはほかの連中。そういう意識が強かった気がします。私もいろんなことをやるからか、落語界の異端児と言われることがあるんだけども、やっている落語は現代においては王道だと思っています。ただ、テレビに出るようになって、あの場では異端児だというのは理解しました。ほかの人は忖度しながら話をするんだけれども、私はそれをしませんから。それで毒舌と言われたり、上から目線と言われたりするんでしょう」
 
 人気者の多い立川流のなかでも、屈指の売れっ子落語家である。が、彼の名を世間に広く知らしめたのはテレビの影響が大きい。一昨年からレギュラーコメンテーターを務める『ひるおび!』をはじめ、多くの番組に出演。昨年はその数、実に246本。貴乃花親方の騒動のときはニコリともせず、池坊保子氏のことを池坊親方と呼んだりするのだから、波風も立つ。
 
 「落語会では当たり前にそういう話をしているわけで、それをそのままテレビでやっただけなんです。ただ、世間の落語家に対するイメージは『笑点』なんです。少し腰が低くて、いつもにこにこしていて陽気で、まわりの機嫌をうかがいながらダジャレを言ったり、なぞかけをしたりする人。でも、私はテレビだからといって自分のスタイルを変えなかった。いつもどおりにやったら話題になった。テレビにとってそれでは不都合なら声がかからなくなるんでしょうけど、逆でした」
 
 しかし彼の発言で“炎上”が起きることもしばしばである。
 
 

mc1807_mar_02

 「落語会に来るのは、お金と時間を割いて私の落語を聞こうという人がほとんどです。でもテレビは不特定多数の人がたまたま目にするわけで、いろんな反応があって当然です。ただ、昔だったらよほどひどいことを言えば投書がきますけど、今みたいにテレビの前でつぶやいた“ばかじゃねえの”みたいな言葉がネットでパーッと広がることはなかった。最初は驚きましたよ。同じことを言っても落語会なら笑って終わることが、テレビだとネットで総攻撃です。向いてないんだと思いました。遠からず『ひるおび!』のレギュラーも終わるだろうと思っていました。ところが逆だった。そもそもワイドショーのコメンテーターってのは大喜利ですよね。タレントだとか作家だとか、いろんな人が同じお題に対して面白いことを言おうとしている。そのなかで私が人と違うことを言うから面白がられたんでしょう。本来、落語家に向いた役割なんです。たぶん、同じようなことを言っても、(北野)たけしさんだったら炎上しない。テレビの前の人が彼がどういう人か理解しているから。私は落語家としては30年以上やっていますけど、テレビでは新参者。キャラが定まってない。視聴率数パーセントでも何百万人が見ているのがテレビ。そうなればいろんな人がいる。芸人だからといって許してはくれません」(次ページへ続く)

1 2 3 4 5 6

PROFILE
立川志らくさん
…1963年、クラシックギター奏者の父と長唄の母の師匠の間に生まれる。日大の落研を経て、85年、立川談志に入門。88年二つ目昇進。95年に真打に昇進。現在は20人の弟子を抱える大所帯。落語家としての顔のほかに、映画監督(日本映画監督協会所属)、映画評論家、劇団下町ダニーローズ主宰(脚本・演出も手がける)でもあり、テレビコメンテーターとしても活躍。また「寅さん博士」「昭和歌謡曲博士」の異名をもつ。6/7~6/17に下北沢で作、演出、出演の舞台「人形島同窓会」全15公演開催。 
 
 
INFORMATION
『妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ』
映画界の巨匠・山田洋次監督が、国民的映画『男はつらいよ』シリーズ終了から20年の時を経て作り上げた、ファン待望の喜劇映画『家族はつらいよ』の第三作。大の映画ファンで知られる立川志らくが山田組初参加。
監督・原作:山田洋次 
脚本:山田洋次 平松恵美子 
音楽:久石譲 
出演:橋爪功 吉行和子 西村まさ彦 夏川結衣 中嶋朋子 林家正蔵 妻夫木聡 蒼井優 立川志らく他 
制作・配給:松竹  2018年5月25日(金)全国ロードショー 
http://kazoku-tsuraiyo.jp
©2018「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」製作委員会

Photograph / Jan Buus
Styling / Babymix
Text / Yukiko Yaguchi
Edit / Emiko Kuribayashi
Video / Tsuyoshi Hasegawa
Web / Hikaru Sato

Page Top