今回の「METガラ」のホストのひとりでもあった、人権活動の弁護士アマル・クルーニー。彼女がパンツ付きのドレスを選んだには、メッセージがありました。

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  Amal Clooney  

 わずか数年のうちに、レッドカーペットで大きな影響力を持つ存在になったアマル・クルーニー。

 ヴェルサーチのパステルカラーのドレスから、ジャンバティスタ・ヴァリの愛らしいミニドレスまで、人権弁護士の彼女はいつも、大胆さとエレガンスとクラス感を見事にミックスした選択をしています。

 現地時間の5月7日夜にNYで開催されたファッション界最大のイベント「METガラ」で、泣く子も黙るリアーナやドナテラ・ヴェルサーチとともにホストを務めた彼女。今年のガラのテーマ「Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination」にマッチしていただけでなく、独自のツイストを利かせたアマルは、ロンドンを拠点に活躍するデザイナー、リチャード・クインのルックで登場。

 パンツを着用した数少ない女性のひとりとして目立っていました。(次ページへ続く)

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 ガラの翌日、デザイナー、リチャード・クインはドレスについて「ルック全体としてはハイブリッドで、テーマに寄り添いつつもエッジを利かせるというのがアイディアだったんだ」と米女性誌『ハーパーズ バザー』に語っています。「女性が直面している厳しい抑圧を引き合いに出すことで、女性の力強さと現代の宗教というものを彼女なりにとらえ、彼女はパンツを着用することに決めたんだ」と。

 ISISにより性奴隷として捕われていたヤジディ教徒の女性の弁護をはじめ、男女同権の活動家としても有名なアマル。2016年に彼女が「日々、フェミニズムの活動を」と強く促したスピーチは、大きな話題になりました。

 先のロンドン・ファッションウィーク期間中、エリザベス女王本人から“Queen ElizabethⅡ Award for British Design”賞を授与されたリチャードですが、ガラのわずか数週間前に初めて、ドレスのアイディアを送ってほしいとアマルから依頼されたのだそうです。

「アマルとは電話で話したんだ。彼女はとても優しく知性的で、すぐに彼女のためにドレスを作りたいと思ったよ」と打ち明けています。「アイディアを何度かやりとりした後、ペッカムにある僕のスタジオにやって来て、いくつか試着したよ。とてもいい話ができて、試着しながらアイディアをやりとりした結果、例の一着ができあがったというわけなんだ」とリチャード。(次ページへ続く)

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エリザベス女王からトロフィーを授かるリチャード・クイン。

 当日、夫ジョージ・クルーニーと腕を組んで登場したアマル。リチャードが手がけたドレスには、教会のステンドグラスを模したフローラルプリントのトレーンがたっぷりとついており、後ろから見るとドレス、前から見るとシックなパンツというデザイン。

 ディテールにこだわったドレスだけに、最初のフィッティングからたった数週間で完成したとは驚きです。

 ロンドン市内の南西部にあるリチャードのスタジオで、このドレス製作に携わったチームは、威圧的すぎず、かつ忠実すぎることのないよう、テーマにオマージュを捧げたかったと話しています。宗教的シンボルでもあるバラやユリを取り入れるのは、アマルのアイディアだったそうです。

「宗教というテーマを控えめに用いたかったので、跡が残るようにブラシを強くかけ、ステンドグラスの窓のように見せた。ディテールの美しいプリントに仕上げるため、エプソンのデジタルプリンターを使って、箔の上に乗せたんだ。アマルも気に入っていたよ。彼女はセンス抜群なので、僕たちは彼女のそのスタイルや存在感を弱めることなく、従来のレッドカーペットスタイルからは想像もできないようなルックにしたかったんだ」と、リチャード。

 リチャードはまた、デザインの過程はオーガニックで楽しく、アマルがスタジオを訪ねてくれたことをチーム全員がどれほど喜んでいたかも告白。「話のわかる人だと、デザインのプロセスはとてもオーガニックで楽しいものになる。アマルは本当に楽しくてスイートで、気さくな人だよ」と。(次ページへ続く)

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 テーマが拡大解釈されることはよくあるため、予測できたことだが、アマルを含め驚くほど長いトレーンのドレスが数多く見られることとなった今回のガラのレッドカーペット。

「ドラマティックな入場によく似合うよね。階段はトレーンを見せつける方法としてもピッタリだし」と会場のことを考えれば、豪奢なシルエットもふさわしいとリチャードは語っています。

 ゆったりと広がるスカート部分とパンツの組み合わせには、実は機能的な利点も。「彼女の動きを制約することなく、会場にふさわしい壮麗なデザインにしたかった。抑えつけられていると感じさせないことが大事だったんだ」。

 重要なイベントのためにデザインする際にはよくある、直前のちょっとした手直しも、ドレス作りのプロセスのひとつ。リチャードとアマルのコラボレーションも、その例外ではなかったようです。「直前に、プリントがもっとステンドグラスっぽく見えるよう手を加えて、テーマによりふさわしくなるようにしたんだ。でも、とても穏やかで簡単な作業だったよ」。

 どうやらアマルは、デザイナーにとってもパーフェクトなクライアントと呼んでよさそうです! 今後の彼女のファッションに世界中の女性陣はますます注目ですね。


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From: Harper’s BAZAAR UK
Photography / Getty Images
Translation / Mitsuko Kanno