「絶対領域」、「チラリズム」…
さまざまな言葉で言い表される
太ももから足首にかけての曲線美。
昨今のトレンドとして、
裸ギリギリのシアードレスが
目立っていましたが、
ここ最近は、美脚を強調した
スリットドレスが優位に立ってきたような…。
胸元は必要以上には露出せず、
(たまに必要以上に露出している方も!)
太ももは大胆に露出するドレスで
レッドカーペットを闊歩するセレブたちが
いま最も大人の色気を放っている、
そう感じて仕方ないのです。
たとえば2012年のアカデミー賞授賞式の
レッドカーペットで超話題となった
アンジョリーナ・ジョリーのようなドレス。
これこそ、大人(男性も女性も)を
魅了するスタイルなのではないでしょうか。
2012年2月26日、第84回アカデミー賞受賞式で話題となったアンジーのドレス、覚えていますか?
Photo by Jason Merritt(Getty Images)
「若い頃は胸元ばかり気になっていたけど、最近、オヤジになってからはチラリと見える太もももほうがたまらない! ガツンとエロティックさを感じちゃうんだよね…」などとのたまう、わりと年の重ねた男性の方々が最近周りに多いのです。「ま、それはライティングを担当させていただいている私も、それなりに…」というのはさて置いて。ここでちょっと女性目線から、なぜ私たち女性は脚を出すドレスを着たりするのか、ちょっと触れさせていただきます。
男性たちは、女性たちのこのような大胆な露出を、エロティックな目線で捉えがちだと思います(笑)。ですが、実は、そもそもなぜ女性たちは、決して異性に対するセックスアピールで着こなしているのではないのです。(なかには、それが目的の方はいらっしゃると思いますが…)ただただ、そのドレスが可愛いから…、脚が長くスタイルがよく見えるから…、それが女性にとっての一番大きな理由だと思うんです。
試しに今お隣りにいる彼女でも、お友達でも、妹でも、通りすがりに女性にでも(それは犯罪になる可能性もあるので、極力避けましょう!)、確認してみてください。そもそもお洒落とは、自己満足の世界なのです。他人がどう思うとどうでもよく、そこにエロく見えるからなんて気持ちはナッシング、微塵も思っていない…というのはデフォルメしすぎかもしれませんが、私の友達のなかのコモンセンスなのです!
話はちょっと逸れてしまいましたが、それではここで、そんな脚線美の代表的な存在であるアンジェリーナ・ジョリーのドレススタイルを振り返ることで確認作業を一緒にしましょう。ハリウッドのトップ女優であり映画監督、そしてプロデューサー、さらには6児の母でもあり、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の特使も務める彼女、そんな彼女がなぜ脚を出し続けているのか???
アンジーに直接聞けるわけないので、これは想像にすぎませんが…。彼女は自らの脚で、自らの生き様を表現しているのではないでしょうか。ただ見(魅)せるだけではなく、「少しだけど結構見せるわよ、でも全部見せちゃうとつまらないでしょ。きちんとケアすれば、女性のカラダはアクセサリー以上の存在になるのよ!」的な、そんな言葉が聞こえてきそうです。そこには色気というよりも、勝気で知的かつ大胆な自立する(したいと願う)女性の雄姿が見えないでしょうか。スラッとまっすぐに伸びた脚は、どんな状況でも自分を忘れずにいるという、一つの固い意思の表れのような…。皆さんも、そんな勝手な思いをしながら、アンジーの脚見せドレススタイルを年代順に解析してみてください。もしかすると、どこかの時代までは「やぱり男性を…」と思える表情を垣間見ちゃう方もいるかもしれませんが…。
そして最終的には、ぜひとも楽しんでください、男性ですものね、仕方ないのは理解しています(笑)。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 01
Photograph/Lalo Yasky(WireImage)
2003年 スペイン・マドリッドで行われた映画『ビヨンドボーダーズ』のワールドプレミアの様子。珍しいパステルグリーンのドレスは“Zac Posen(ザック ポーゼン)”のもの。カラダにピッタリとしたドレスの裾から覗く美脚は、健康的な印象です。映画『60セカンズ』、『トゥームレイダー』などの大ヒット作に出演し、ハリウッド人気女優としての地位を確立した頃のアンジー。この頃にはすでに、ユニセフの親善大使としての活動も行っています。すべてにおいて意欲的なアンジー。カラダ全体からエネルギッシュさが滲み出て、まさに女豹のよう。これを色気を漂わせてるって勘違いしている殿方も多いようですが…。同性から言わせれば、これは自らの未来を見つめる目になのです。ひいき目かもしれませんが…(笑)。ダウンした巻髪スタイルや最低限のアクセサリーは、このときすでに確立されたスタイルとなっていますが、まだ全体的に露出の多めなスタイルが多いのも特徴ですね…。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 02
Photograph/Steve Granitz(WireImage)
2009年1月、アメリカ ・ビバリーヒルズのビバリーヒルトンホテルで行われた第66回ゴールデングローブ賞のときのスタイリングです。フィットしたドレスで自らのボディでメリハリを表現するスタイルが好むアンジーにしては、珍しくフワッとしたドレスとなっています。こちらのドレスは“Atelier Versace(アトリエ ヴェルサーチ)”のもの。シューズは同色で“JIMMY CHOO(ジミー チュウ)”のものを合わせている。ヘアもメイクもナチュラルに、全体的にフンワリとした雰囲気を醸し出しつつ、優しさのなかにもスリットを取り入れることで全体のイメージにメリハリをつけてのでしょう。ブラット・ピットをパートナーとし、二人の間に子供も設けたあとのアンジー。強さのなかに母の優しさを感じるようになってきた気がします。慈善活動も積極的に行っていたこの時期、世界中の様々な団体にジョリー・ピット基金の名前で多額の寄付を継続的に行っています。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 03
Photograph/Jun Sato(WireImage)
2010年7月、東京・有楽町にある国際フォーラムで映画『ソルト』のジャパンプレミアが行われたときの1枚です。決して露出が多いスタイルではないようにみえるですが、スカート部には多方向からスリットの入った“Versace(ヴェルサーチ)”のドレス。角度を変えて見ると、まるで違うドレスのように見える1着です。まさに映画の役を表現したのかもしれません、様々な顔を持つスパイ役にピッタリです。足元は“Salvatore Ferragamo(サルヴァトーレ フェラガモ)”の同色のシューズを合わせています。この頃のアンジーは、前髪があるんですね。前髪があると柔らかい印象になるのは通説ですが…、このアンジーもその例に漏れず。なかなかない、貴重な1枚だと思います。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 04
Photograph/Jamie McCarthy(FilmMagic)
2010年12月、アメリカ・NYのジーグフェルドシアターで行われた映画『ツーリスト』のワールドプレミアのアンジー。ジョニー・デップとの共演が話題を呼びました。ここで着用するは、7分袖のアンゴラウールで仕立てたドレスは、“Atelier Versace(アトリエ ヴェルサーチ)”のもの。“Salvatore Ferragamo(サルヴァトーレ フェラガモ)”のパンプスも同色で合わせています。この足元の合わせ方は、アンジーのセオリーなのでしょうか。映画での役柄のような淑女の雰囲気たっぷりな柔らかい印象のドレスには、ハーフアップのダウンスタイルで可愛らしさを演出しています。自身の役柄についても、「今まで演じたことのないエレガントなレディの役で今まで経験したことのない大きな挑戦だった」と答えているとおり、クールでタフな女性を多く演じてきたアンジーにとって難しい役どころだったに違いありません。ヘアスタイルに関しては、ただ下ろしただけのダウンスタイルやポニーテールなど、シンプルな髪型が多い中で、こちらはとても珍しい1枚になっています。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 05
Photograph/Mike Marsland(WireImage)
2011年5月、フランス・カンヌで行われた第64回カンヌ国際映画祭でのレッドカーペット上。夫であるブラッド・ピットの主演作『ツリー・オブ・ライフ』のプレミアに同行したときの写真です。彼女が選ぶドレスとしては珍しいダークブラウンですが、アンジーらしく上品に着こなしていますね。左側にドレープをふんだんにあしらったボリューム感ある“Versace(ヴェルサーチ)”のドレスには、ダウンした髪型がとても良く似合います。正式な場でも最低限のアクセサリーしかつけないのがアンジー流。その代わりに、「わたしの脚こそ真のアクセサリーよ」と主張しているかのようにも見える、板についた脚の角度。素晴らしいです! ミニマムなスタイルもアンジーの美脚を自然と引き立てています。…というか、この脚を活かすために、ミニマルなドレスを選らんでいるのでしょうか? そのくらいの知的さを帯びたアンジーに乾杯(完敗)ですね!! 主役のブラピより絶対目立っていると思います(笑)。ちなみにこの作品は、最高賞である「パルム・ドール」を受賞。アンジーは、勝利の女神でもあるのかも? いや、そうでしょう!!!
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 06
Photograph/Jon Kopaloff(FilmMagic)
2011年5月、アメリカ・カリフォルニア州ハリウッド、グローマンズ・チャイニーズ・シアター,で行われた映画『カンフー・パンダ2』のプレミアでの1枚。この日着用したのは、ミディアムレングスが珍しい“Michael Kors(マイケル・コース)”のスレンダーなシルエットのドレス、そしてベルトです。パンプスは“Salvatore Ferragamo(サルヴァトーレ フェラガモ)”のパンプスをあわせ、カジュアルさとエレガントさを絶妙のレシピで融合しています。少し前に切った前髪を自然に横に流し、優しい雰囲気のアンジー。アニメのプレミアだからでしょうか、ガッツリとしたドレスではありません。そして露出を控えめにしています。しかし、もはやアンジーのアイコン存在となったスリットから覗く脚、そこの主張は忘れません。ここでお披露目の場に相応しい、華やかさが加わっているのです。この頃からは女優業に加え、プロデューサーや監督としての活動も始め、また新たなアンジーの活動が垣間見える時期となっています。と同時に、自己プロデュース、自己演出の腕前もアゲアゲのようにも思えるのでした!
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 07
Photograph/Steve Granitz(WireImage)
2012年1月、アメリカ・カリフォルニア州ビバリーヒルズにあるビバリーヒルトンホテルで行われた、第69回ゴールデングローブ賞授賞式でのアンジ-。個々でのアンジーは、すべてにおいてパーフェクトな着こなしを見せていますね。ネックの切り替えが美しいクラシカルなホワイトドレスは、“Atelier Versace(アトリエ ヴェルサーチ)”。“Lorraine Schwartz(ロレーヌ シュワルツ)”のダイヤモンドジュエリーに、足元は“Christian Louboutin(クリスチャン ルブタン)”を。艶やかな白肌に、赤のリップとどこから見ても完璧な女神のようでした。この一分のスキも感じさせない貫禄のお姿。当時、若干(?)36歳。同じ女性として、恐ろしさすら感じます。スリットから覗く真っ白なお御足の美しいことといったら、あり得ません。うらやましすぎです! まさにPARFECT WOMAN!! そして夫であるブラピと、正式に婚約を行なった年でもあるのでした。幸せ絶頂期のアンジーです(かといって、なおも絶頂だと思いますが…彼女ですから)。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 08
Photograph/Ethan Miller(Getty Images)
2012年2月、アメリカ・カリフォルニア州ハリウッドで行われた、第84回アカデミー賞の1枚。数々のメディアで“アンジーの右脚“と揶揄され、その逆のリスペクトもされたお騒がせドレスは、“Atelier Versace(アトリエ ヴェルサーチ)”のもの。“Salvatore Ferragamo(サルバトーレ フェラガモ)”のハイヒールを合わせたその姿は、エネルギーと自信に満ち溢れてみえます。非好意的なメデイアの報道に対し、後日アンジーは「女性として自分の好きなドレスを選んで、それを着て外出し、一晩を過ごした。それだけのことよ」とあっさり。流石、自分が目指すものが何か、明確に見えている、それを象徴するようなアンジー様のスタイルである、コメントであります!!
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 09
Photograph/Barry King(FilmMagic)
2014年5月、アメリカ・カリフォルニア州ハリウッド、エルキャピタン劇場で、映画『マレフィセント』ワールドプレミアが開催されたときの1枚。ウエストをギュッと絞り、裾にたっぷりドレープを効かせ、ラバーでコーテイングされたシルクのストラップレスのドレスは、“Atelier Versace(アトリエ ヴェルサーチ)”のもの。スパイクの付いた個性的なバングルとピアスは、“Stella McCartney(ステラ マッカートニー)”のカスタムメイドだそう。まさに映画の役を意識した、とっても妖艶なスタイルです。ドレープが多いので中々見えにくいスリットですが、いざそれが覗くと、とてもドキッとさせられますね。子どもたちの後押しによって正式にブラピと夫婦になり、幸せも「更上一層樓(さらに のぼる いっそうのろう)」かと思いきや、激ヤセ報道などがされ始めたのもこの頃です。アンジーに何があったのか!? どんな噂があったとしても、いまやすべては藪の中…。
脚見せの天才、アンジョリーナ・ジョリー 10
Photograph/Gary Gershoff(WireImage)
2015年11月、アメリカ・NYのニューヨーク近代美術館で行われた、WSJ(ウォールストリートジャーナル)イノベーターアワードにて、賞を受賞したときのもの。バスト部分にベルベットを使用したシンプルなドレスに合わせたています。時計は、“CHANEL(シャネル)”の人気ウォッチ「BOY FRIEND」。ドレスに時計を合わせる珍しいスタイルに、みんなが釘付けになりました。ドロップ型のイヤリングと、写真には写っていませんが、バックスタイルはベロアのリボンがあしらわれた、セクシーさととも大人可愛いさも融合したスタイルとなっています。アンジーにしては比較的浅めのスリットですが、デコルテの抜け感との相性がとても良くバランスの取れたスタイルとなっています。ここもアンジーの計算のように思えてなりませんね。知的な雰囲気を残しつつ、スパイシーな雰囲気になっているのも、このスリットのおかげなのです。きっと…。この時期は幸せ結婚生活から一転、乳がん予防のための乳腺切除や卵巣、卵管切除の報道など話題が絶えませんでした。そしてついに先日、とうとう離婚をの申し立てをしたとか…。まさに波乱万丈! アンジェリーナ・ジョリーに乾杯です!! が、気になることもあります、母性をもつ女として…。子供たちそれぞれの思いが心配でたまりません…。とはいえ、アンジーです。なんとかハッピーにおくることでしょう、そう期待してやみません!
(C)Getty Images
Text/Yuko Yano
編集者:小川和繁