日本では、自民党の杉田水脈議員(衆議院比例中国ブロック)が、「『LGBT』支援の度が過ぎる」上で、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と発言し、その思想が、ネットを中心に大変話題になっています。

 しかし、世界に目を向けて見ると、多様性の重要性が、着実に根付いてきているのです。

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 I'm The First Black Woman To Be Crowned Miss Universe Great Britain

 これまでのミスコンテストは、どれを見てもダイバーシティには程遠かったとの事実。

 人種、ジェンダー、性的指向、体型の多様性が乏しく、2016年に行われたミス・ティーンUSAのファイナリストたちなんて、5人とも白人な上、見た目もそっくり過ぎて見分けがつかないほどでした。

 批評家たち曰く、コンテストに参加する女性たちは、ほぼ男性で構成された審査員陣を喜ばせることにエネルギーを費やし、視聴者も「どうせ映画『デンジャラス・ビューティー』に登場するような白人女性がたくさん登場するんでしょ」と決めつけてしまう傾向にあったのです。

 ちなみに2015年まで、ドナルド・トランプ米大統領がミス・ユニバース機構のオーナーでした。彼の影響もあるのでしょうか?

 しかし世の中は少しずつ、着実に変化を見せているのです。アメリカでは、ミス・マサチューセッツの選考会に出場していたモード・ゴーマンさんが、最終選考まで残ったにも関わらず、途中で辞退し、ミス・プリマス・カウンティの称号を返還。その理由は、選考会でセクハラを告発する「#MeToo」を馬鹿にするような演出があったからでした。

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 スペインでは、トランスジェンダーの女性、アンジェラ・ポンセさんがミス・ユニバース・スペインで優勝し、代表に選ばれました。

 また、イギリスでも25歳のディー・アン・ケンティッシュ=ロジャースさんが、黒人女性として初めてミス・ユニバースのグレートブリテン代表に選出。イギリスを代表して黒人女性が世界大会に出場するのは、66年の歴史を誇るミス・ユニバース史上初めてなのです。

 それについてディー・アンさんは、「あらゆるコミュニティの人たちのロールモデルに選ばれたことを光栄に思う」とUK版『ELLE』にコメントし、「でも黒人社会にとって、私の勝利が特別な意味を持つということも意識しています。私が優勝したことで、イギリスの多民族で多文化な社会も、互いに力を合わせて頑張ることの大切さを感じてもらえたら嬉しいです」と続けました。

 法学部を卒業したディー・アンさんは、ミス・グレートブリテンの選考会で31人のファイナリストの頂点に。今回のコンテストで審査員は「ステージの上ではスターのように輝き、オフステージではみんなのロールモデルになるような女性」を選ぶことが課せられたとか。

 スター性はもちろんのこと、ロールモデルとしてふさわしいかどうかは、彼女の経歴を見れば一目瞭然。

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 イギリス領のアンギラ出身のディー・アンさんは、今でもイギリス・バーミンガムとカリブ海に浮かぶアンギラを行き来しています。

 バリスタの資格を持つほか、アスリートとして2度もコモンウェルスゲームズに出場。インド・デリーで開催された2010年大会では、400メートル走、スコットランド・グラスゴーで行われた2014年大会では七種競技に選手として参加しました。

 そんな彼女が初めてミスコンに参加したのは2017年のこと。ミス・アンギラの選考会に出場し、優勝を果たしています。ダイバーシティについて、彼女の意見を聞いてみると「私は自分が黒人女性であるということを十分承知の上で、ミス・グレートブリテンにエントリーしました。でも黒人女性であることが不利だとは思っていませんでした。むしろ歴代の優勝者たちの影響で参加してみようと思ったんです。同じように法学部を卒業し、2017年に優勝したアナ・バドジー(Anna Burdzy)なんかもその一人です」と説明しています。

 そして「コンテストの審査に何か問題があるわけではないと思います。審査基準はとても厳しいし。それよりもコンテストを見ている人たちの受け止め方やエントリーする女性たちの気持ちの方が大事だと思っています。私たちは女性たちに自信とチャンスを与えられることができる、ということをもっと多くの人たちに知ってもらいたいのです。ミス・コンテストは女性たちのボディを見せるためだけに開催されているわけではありません。私はコンテストを通じて、女性たちが協力し合い、フェミニズムのさらなる発展を目指すシスターフッド(女性同士の連帯)の一員になれたのだから」とコメントしています。

 今は勝利の余韻を噛み締めているディー・アンさんですが、すぐに世界大会に向けて準備を始めないといけないそうです。

「私が支援するチャリティ団体A-sisterhoodの認知度を高める活動を続けたい。この団体は、世界中の女性たちをエンパワーしています。そしてグレートブリテンを代表して、ミス・ユニバース世界大会で活躍できるよう頑張りたいです」と。

 2018年12月にフィリピンにて開催される世界大会には、日本からもミス・ユニバース三重でミス・ユニバース・ジャパンに選ばれた加藤遊海さんが出場することが決定しています。より多様性に富んだミスが競演する今大会で、彼女の活躍にも大いに期待したいですね。

From ELLE UK
Courtesy of Miss Universe Great Britain, Angela Ponce(via Instagram)
Photography / Getty Images
Translation / Reiko Kuwabara