『夢をかなえるゾウ』シリーズ売上300万部『人生はニャンとかなる!』シリーズ売上200万部の、人気作家・水野敬也が、自身の最大の弱点「お洒落」に体当たりで臨む企画。日本最高峰の美女たちに、水野のお洒落理論は通用するのか⁉
>>>「作家・水野敬也が河北麻友子とデート!『彼女のためのハンカチにグッとくる?の巻』Part 1」の続きです。
今月のお相手・河北麻友子「彼女のためのハンカチにグッとくる?の巻」
服に着せられていた
自分にサヨナラ!
これで彼女を
魅了してみせる!
――会食当日。私はザ・プリンス パークタワー東京の33階のバー「スカイラウンジ ステラガーデン」で河北麻友子の到着を待っていました。「和」を推すべきと言っておきながら舌の根も乾かぬうちに西洋の「バー」が登場していますが、事前のリサーチによって、河北麻友子の大好物は生ハムということがわかったからです。候補となった和食のお店に「生ハムありますか?」と尋ねたところ、すごく丁寧な口調で「あるわけねーだろ」的な返答をいただきましたので、このお店を選ばせていただきました。
ただ、結論を言うと、お店選びは大正解でしたね。ベタによい夜景のお店を選んだことで、自信を持って彼女の到着を待つことができたのです。
こうして、(今回こそは必ず美女を魅了してみせるぞ!)鼻息荒く彼女の到着を待っていたのですが、「こんにちは」スカイラウンジ ステラガーデンの個室に現れた河北麻友子を見た瞬間、「出直してきやす!」の掛け声とともにスカイラウンジの窓ガラスを突き破り、スカイダイビングして逃げ出したい衝動に駆られました。
「私、デニム好きなんです!
今日は2人ともリンクしてる…笑」
河北麻友子さん、女優。ニューヨーク出身。「第9回 全日本国民的美少女コンテスト」で、グランプリ・マルチメディア賞をW受賞。『ヒルナンデス!』(日本テレビ)や『BeauTV~VOCE』(テレビ朝日)などの情報番組にレギュラー出演中、「ViVi」専属モデル。ドレス17万円(ディースクエアード) ●お問い合わせ先/ディースクエアード 東京 TEL 03・3573・5731 イヤリングはスタイリスト私物。
よく漫画やアニメは顔のパーツをデフォルメして書くと言われますが、まさに2Dの世界から飛び出してきたような、空想上の女性のような、異常に美しい顔立ちをしていたのです。
しかも、めちゃくちゃお洒落なんですよ。
ていうか、それ何着てるの? デニムなの? ドレスなの? というわけのわからなさがオーラに拍車をかけており、そのオーラに圧倒された私はガチガチに緊張しながらメニューを開き、彼女の大好物である生ハムやお肉をオーダーし、いよいよ会食が始まったのですが、のっけからいきなり窮地に立たされることになりました。
将来はハリウッド映画に出たいという彼女に対して最初の質問、「好きな映画は何ですか?」と投げかけたところ、こんな返答があったのです。
「『チュイニンディ』です」
え、何? 今、何つった?
ニューヨーク育ちである彼女の英語の発音が良すぎてまったく聞き取れませんでした。今回、唯一自分が誇れる「作家」を押し出すためにモンブランの高級万年筆を用意していたのですが、その万年筆を使ってメモ帳に『チュイニンディ』と書き込むことしかできませんでした。(後から調べてみたところ、これはデンゼル・ワシントン主演の『トレーニング デイ』である可能性が濃厚だと判明しました)
――そして、前回の記事を読んでいただけた方はご存知だと思いますが、世界一メンタルの脆い成人男性でギネス登録出願中の私は、一つ問題が起きると頭が真っ白になって何も考えられなくなってしまうのです。この性格は、細かいことにも完璧を求めるという点で仕事には大いに役に立つのですが、女性とのコミュニケーションにおいては自爆装置としての機能でしかありません。
(やはり愛知県の片田舎で育った俺と、ニューヨーク帰りの彼女とでは住む世界が違うんだ……)
こうして早々に戦意喪失した私は、ありきたりな質問を投げかけて、この日の会食を終わらせようとし始めた、そのときでした。
「水野くん」
――聞き覚えのある声でした。(次ページにつづく)
そう。この声は、
前回に続き水野にアドバイスをくれたL.L.beanのトートバッグ「シロアカ」(イラストは自筆)
――私がお洒落から目を逸らそうとすると現れる、白地に赤のラインが入ったL.L.beanのトートバッグ(の幻覚)でした。
(シ、シロアカ……)
てっきり床にいるのかと思ったのですが、彼の姿はどこにも見当たりません。
「ここだよ」
声は、意外にもテーブルの上から聞こえました。そしてそちらに目を向けた瞬間、衝撃で目を見開くことになりました。トートバッグの赤いラインが、生ハムでできていたからです。
彼は僕の目を見て言いました。
「自信を持つんだ水野くん。今日の君の『和』を中心としたコンセプトは、すごく素敵だよ……」
そうなのでした。私は今回、生まれて初めて等身大の自分と向き合い、自分に似合う服装を選択したのです。まさに、劣等感にまみれた自分と「和解」した服装。まずはこの点について彼女にたずねるべきだと思いました。
私は、彼女に対する質問をいったん止め、今日の自分のファッションについて感想を求めました。すると彼女は言いました。
「最初見たとき、すごく素敵だと思いました。ドレッシーすぎないけど、崩し過ぎてないし、この服装悪く思う女の子はいないと思います」
河北麻友子、絶賛でした。
連載第2回にして、美女が求めるファッションの一つの形に辿り着いたのです!
この言葉で自信を取り戻した私はフランクな雰囲気で彼女と話すことに成功し、「私、ファーストフードがすごい好きで朝マックめっちゃ食べるんですよ」という彼女に親近感を抱き、「河北さんは実用書なんて読まないですよね」と聞いたところ、「こんまりさんの片付けの本が英語版で出ていたので読みました」と聞き、僕の本『人生はニャンとかなる!』が英語版になっているので送らせていただきますなどと話はどんどん盛り上がっていきました。と、同時に、別世界の住人だったと思っていた彼女との壁は、実は自分が作り出していたことに気づいたのです。
そして、会食も終盤に差し掛かり、対面の席から隣の席に移動することに成功した私は、今日のデートのために用意してきた最大の武器を仕掛けることにしました。(SPA!2012年11月 13日号より)
「好きな男性のタイプはレディーファーストなどがさりげなくできる人です」(ゲイナー2011年8月号より)
「ドアを開けてくれたり、荷物を持ってくれたり、レディーファーストな対応をされるとぐっときます」
彼女がいわゆるアメリカ的なレディーファーストを好むということは分かっていたのですが、ここに『和』の要素を取り入れ、「自分らしさ×レディーファースト」かつ、そこにお洒落の要素まで入れ込むという、二重、三重にも張り巡らされた完璧な戦略を考案していたのです!(次ページにつづく)
その戦略とは…
――『和』の最高の感動話である『一杯のかけそば』を話し、河北麻友子が涙を流したところにサッとお洒落なハンカチを差し出すというものでした。
(シロアカ……見ててくれよな)
「このチョリソー、おいしい!止まらなくなる!」
私は皿の上に置かれた最後の生ハムを口の中に押し込むと、河北麻友子に向かって真剣な表情で言いました。
「河北さんに、聞いてもらいたい話があるのです」
そして「これは本当にあった話なのですが」と前置きし、語り始めました。
「この物語は、北海道の街にあるそば屋『北海亭』から始まります……」
――16歳までニューヨークにいた彼女は間違いなく『一杯のかけそば』を知らないでしょう。そして、この話を聞いて泣かない日本人はいません。絶対にいません。そして、河北麻友子が涙を流したところにお洒落なハンカチをそっと差し出すという「レディーファースト」的な神対応で、チェック・メイトです。
そして――私が丁寧に、丁寧に、『一杯のかけそば』の物語を語り上げ、ラストの、「――北海亭と書かれたのれんを、ほんの一足早く吹いた睦月の風が揺らしていました」 を言い終え、自信満々に顔を上げて河北麻友子を見たときでした。
彼女は――一切、涙を浮かべていない、ただただ、魅力的なだけの瞳を私に向けてこう言ったのです。
「すみません。最初に『本当にあった話』と言われたんで、途中まで怪談だと思って聞いてました」
衝撃のあまり気を失いそうになっている私に対して、彼女はトドメを指すように言いました。
「水野さんの話し、面白かったけど、ちょっと長かった…笑」
「あと、話が長いです」
――こうして、最後の最後、完全な戦略ミスにより盛り上がっていた空気を台なしにしてしまった私は、会食が終わったあと、彼女のために用意したハンカチで自分の涙をそっと拭ったのでした。
◇今回2人がデートしたのはこちら!
彼女も喜ぶ個室で33階からの
夜景と絶品肉料理を味わう!
東京タワーを間近にゆったりできるペアシートが並ぶ「スカイラウンジ ステラガーデン」は、芝公園のホテル「ザ・プリンス パークタワー東京」の33階にある。専用のワインセラーも隣接しワインも幅広く選べ、人気の神戸ビーフのハンバーガ-をはじめとして料理も豊富でワインやカクテルが進みます。個室は20名まで。
《SHOP INFO》
住所/東京都港区芝公園4-8-1
ザ・プリンス パークタワー東京33F
TEL/03・5400・1154
営業時間/17:00~26:00
(休前日15:00~、土・日15:00~24:00)
無休
《こんなお店もおすすめ》
日本初上陸、ガーデンプレイス
39階のモダン・タイ・レストラン!
今年8月にリニューアルオープンした、恵比寿ガーデンプレイスタワーの展望レストランに店を構える「ロングレイン」。大型ダイニングで、運ばれてくるタイ料理はどれも本場さながらのスパイシーさを感じる。
《SHOP INFO》
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-3
恵比寿ガーデンプレイスタワー39F
TEL/03・5424・1300
営業時間/11:30~16:00、17:30~23:00
(土・日・祝日のみ、11:30~23:00)
休み/恵比寿ガーデンプレイスの休館日に準ずる
地上約250mのテラスで
心地よく酔う夜のひととき
東京湾やお台場などを眺めながら、ソファに座り、お酒が楽しめる「ルーフトップ バー」。プレミアムティーや季節のフルーツをベースにしたカクテル、ビールにシャンパンなど会社帰りに立ち寄りたくなる1軒。
《SHOP INFO》
住所/東京都港区虎ノ門1-23-4
虎ノ門ヒルズ アンダーズ 東京52F
TEL/03・6830・7739
営業時間/17:00~24:00
(金・土のみ、~25:00)
無休
Photograph / Jan Buus(whitestout) Styling / Tatsuya Imai[Keiya Mizuno],Yuta Kaji[Mayuko Kawakita]
Hair &Make-up / Akihiro Motooka[Mayuko Kawakita] Text / Keiya Mizuno Edit / Yasuhiro SatoCooperation / The Prince Park Tower Tokyo