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カッコいい大人の着こなしはもちろん、
その人物はどういったマインドを
もっているのか知りたいし、真似たい…、
と思う男性も多いはず。

「これで人生変わりました」と
言える本を推薦いただく連載。

今回は、2012年にサイバーエージェントの
取締役に当時最年少の29歳で就任した
山内隆裕さんからご紹介いただきます。

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『超訳 孫子の兵法 文庫版』 許 成準著 彩図社 648円。

  
 『孫子の兵法』は、紀元前6世紀に書かれた中国最古の兵法書です。戦争での戦い方を説いた本ですが、ビジネス書として現代でも世界中で読まれています。

 初めて読んだのは、CyberZ(サイバーゼット)を立ち上げた時期。他の訳も何冊か読みましたが、いちばんわかりやすかったのがこの本でした。

 資本主義、競争社会を生き抜くための実践的なノウハウはもちろん、人としてどう成長していくべきかも語られていて、経営者に限らずどんな人が読んでも学ぶべきところがあると思います。うちの会社では管理職以上の社員の課題図書になっていて、先日もこの本にある“五事七計”をテーマにマネージャー研修をおこないました。“五事”とは戦う際に大切な5つのこと。そのひとつがリーダーである“将”、会社でいうマネージャーになります。

 彼らに共通の概念がなく思い思いの方向に走ってしまうと、組織の方向性とズレてきてしまう。そこでマネージャーとして、どうありたいかというビジョンを共有するのが研修の目的でした。1人で仕事をするのではなく、どう人を動かし、相手の気持ちを考えながらお互いに成長していくかということを、この本から学びました。

 僕は人が成長していくには、方法論と人格面のあり方の2つが必要だと思っています。

 特に大切なのが人格。たとえば月単位での目標達成など短期間で成果を求められると、若いうちは達成する方法ばかりを考えて、ほかが疎かになることも多い。 

 極端に言えば、達成するために人に迷惑をかけたり、軽率なことをしてしまうこともあるわけです。そうならないためにも、リーダーとして上に立つ人間は思いやりや情け深さをもった、この本でいう“仁慈”に富む人格であることが大切なのです。 

 ファジーだし抽象的なので、MBAの資格やTOEICの点数のように体得した結果が数字や形で得られるものほうが若い人にとっては落ち着くんですよね。でも、人格があってこそスキルが身に着いて、優秀な部下たちもついてくる…。この本では、そういったことも書かれています。

 軸となるしっかりとした人格があり、同じビジョンに向かって変化に対応することが、僕らの生き残る道であり強み。こうした考え方を柔軟性のある若いときに知っておくことは、自分が成長するうえでとても大切だと思います。

 
《今月のセレクター》

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株式会社 CyberZ代表取締役
山内隆裕さん

2009年スマホに特化した広告マーケティング会社CyberZを立ち上げ、国内トップシェアに。2012年にはサイバーエージェントの取締役に、当時最年少の29歳で就任。


《他にも人気書店スタッフおすすめ! バイブルになる新刊をご案内します》

TSUTAYA TOKYO ROPPONGI BOOKスタッフ 大野静子さん推薦!

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『Woody』 デイヴィッド・エヴァニアー著 大森さわこ訳 キネマ旬報社 3700円。

 
数多の女優を虜にする
ウディ・アレンの素顔とは

 御年80歳! 映画界で常に旬であり、最前線からヒット作を飛ばし続ける映画監督ウディ・アレンの最新評伝。

 ユダヤ人という生い立ち、NY生活、ベルイマンへの傾倒…。もっとも興味深かったのは、“映画的”な女性たちとの出会いと別れ。不安定な女を描かせたら右に出る者はいない彼の女性観を的確に捉えたセラピストのコメントを読み、『夫たち、妻たち』のDVDを借りに走りました。読んでから観るか、観てから読むか?

三省堂書店 有楽町店 副店長 家城恒範さん推薦!

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『宝くじで1億円当たった人の末路』 鈴木信行著 日経BP社 1400円。


自分がその選択をしていたら、
果たしてどうなっていたのか? 

 インパクトのあるタイトルですが、宝くじ高額当選者の体験談ではありません。「あんなことをしたら、どうなるんだろう」とみんなが気になっている、さまざまな人たちの末路を集めた本です。 

 読んで思い出したのは、Eテレで放送されスタッフの間で大ブームだった番組『ねほりんぱほりん』。他人の人生はのぞきたくなるもの。本書でさまざまな選択の末路を知り、自分の身に起こったときの心構えをしてみてはいかが?

オリオン書房 ノルテ店 文芸書担当 白川浩介さん推薦!

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『私の名前はルーシー・バートン』 エリザベス・ストラウト著 小川高義訳 早川書房 1800円。

 
淡々と紡がれていく物語に
自分自身の人生が重なる

 思いがけず長期入院することになった主人公のもとに、疎遠になっていた母親が見舞いにきます。母親とのとりとめもない会話から、主人公は自分の来し方に思いを馳せます。

 人生は必ずしも思いどおりにはいかないけれど、それを美化するでも飾り立てるでもなく、他人の人生と比べた優劣なども関係ない。主人公の人生を追体験するうちに、自分の人生に思いを馳せずにはいられません。静かに心に染み入る物語です。

Composition & Text/Emari Majima