『ブラックパンサー』は、マーベルのスーパーヒーロー映画に新しい風を吹き込みました。

黒人キャストを中心としたストーリーは、植民地主義や搾取をテーマに取り上げます。舞台となるのは、ブラックパンサーの母国であるアフリカの架空の都市「ワカンダ」。この地では、信じられないほど達観したアフロ未来主義者や多くの複雑な女性キャラクターたちが登場し、悪党たちと闘いながら物語が進んでいきます。

まったく新しいヒーロー映画に思えるこの作品ですが、ライアン・クーグラー監督によれば、映画史のなかでももっとも印象的ともいえる2人のキャラクターからヒントを得たそうです。

クーグラー監督は、2018年5月11日に行われたカンヌ国際映画祭でのQ&Aセッションに登場しました。こここで彼はマーベルから『ブラックパンサー』を任された際、このキャラクターをマーベル版「ジェームズ・ボンド」のようなものにするよう依頼されたことを明かしています。

「思いもよらない提案でしたが、良いアイディアだと思いました」とクーグラー監督。そこで彼は、『007』シリーズを片っ端からチェックし、メモを取っていったそうです。

「製作チームで、たくさんのボンド映画を観ました。ですが、これは初期のリサーチ段階で、どんなテーマを掘り下げたいかが明確になってきてからは、他の映画を見始めました」と、クーグラーは語っています。

「重要だったのは、『秘密に包まれた知られざる国に住む、ある男性を描く映画を作るのだ』ということに気づいたことでした。『この男性はファミリーと力を合わせて働いており、父が亡くなったことで権力の座に就くことになる』というような要素を考え合わせたとき、『ゴッドファーザー』を参考にするべきだと思ったんです。こうして『ゴッドファーザー』シリーズをベースにしてから、多くの可能性がひらけました」とクーグラー監督。

ブラックパンサーの座り方は『ゴッドファーザー』からの影響!?

ライアン・クーグラーのようなクールな監督から、「何らかの作品をベースにした」という話を聞くのは驚きですが、今ならこのアイデアが素晴らしいものであったことは明白です。とはいえ、当然のことながら、「スーパーヒーロー映画で『ゴッドファーザー』のような作品を目指す」という話を製作チームに伝えるのは、かなり格好悪かったと言います。

「作ろうとしているスーパーヒーロー映画について、『ゴッドファーザー』のようになると伝えるんですから。製作チームに『あまりに理想が高すぎる』と思われないかヒヤヒヤしました」とクーグラー監督。

ブラックパンサーの座り方は『ゴッドファーザー』からの影響pinterest
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クーグラーはこれらに加え、ワカンダという馴染みのない場所に観客を没入させる方法を探るため、ロン・フリック監督の『Baraka』や『Samsara』といったドキュメンタリー映画も参考にしたと言います。

「全体芸術部門のメンバーたちと一緒にこういったドキュメンタリーを観て、ワカンダという地域をどのように感じてもらうかについて、よく話し合っていました」とグーグラー監督。

また、プロジェクトのプレッシャーに圧倒されそうになったときには、妻にも助けられたと語っています。クーグラーは『ブラックパンサー』のコミック版に立ち戻ることで、子ども時代にこのヒーローに出会ったときの感情を再発見したとのことですが、これを提案してくれたのは彼女だったそうです。

「妻は素晴らしい女性なんです。彼女のアイデアで、子ども時代に初めて『ブラックパンサー』と出会ったコミック店を訪れ、改めてパンサーの漫画を買ってみました。そうして、当時感じた素晴らしさを思い出せたのです」とクーグラー監督。

「壁に直面しそうになるたび、当時の感情を思い出しました。子ども時代の自分に会って、「将来、お前は『ブラックパンサー』の監督になるんだ」と伝えるところを想像しました。少年時代の私は驚いて、口がふさがらず、そして目を輝かせたことでしょうから…」とさらに語っています。

世界中で大ヒットを記録し、多くのファンが胸に手をクロスしながら「ワカンダ・フォーエバー!」と叫んでいることでしょう。また、現在公開中の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でも、ブラックパンサーは登場。ワカンダでアベンジャーズの面々とともに敵と戦います。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。