時系列が異常なほど複雑なシリーズ映画 8選
作品同士が垣根を超えてつながったり、リメイク作品が次々に製作されたり、人気シリーズが続々と生まれる現代において、映画のなかの世界はますます複雑になりつつあります。
複数の時間軸が入り乱れる作品は、どれも面白いものです。とはいえ、シリーズ作品で未来を描いたかと思えば、今度は前日譚(ぜんじつたん=プロローグ)を作ったり、過去の作品を無視したまったく新たなストーリーを取り入れたりなど、聴衆を置いてきぼりにするような場合は考えものですね。
今回はそんな時系列が複雑で、とにかく混乱してしまうシリーズ映画(『X-MEN』や『ターミネーター』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など)をピックアップしてみました。
『X-MEN』シリーズ
X-MENの時系列はとてつもなく複雑で、『デッドプール』を除くすべてのシリーズ作品に出演しているヒュー・ジャックマンもイライラするほどです。
ヒュー・ジャックマンは英エンタメサイト「デジタルスパイ」のインタビューのなかで、「X-MENの時系列を追うことは、チェスで相手を罠にかけようと躍起になるようなものです。実際はストーリーを理解する役には立たず、気が狂いそうになるんです」と語っています。
X-MENについて、現時点で理解されているのは以下のようなことです。
X-MENの初代3部作(『X-MEN』、『X-MEN2』、『X-MEN: ファイナル ディシジョン』)の時間軸は1つだけです。また、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』についてもこの時間軸上にあり、当然ながらこの作品はウルヴァリンの起源を描いています。
『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』とこの続編の『X-MEN: フューチャー&パスト』は、『X-MEN: ファイナル ディシジョン』および『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』に後付けの設定を加えるものです。『X-MEN ZERO』ではデッドプール役でライアン・レイノルズが出演しており、これは近年の映画版『デッドプール』で同じくレイノルズが演じたデッドプールとはまったく異なるキャラクターですが、『X-MEN: フューチャー&パスト』での後付けの設定(歴史の改変)によって、『X-MEN: ファイナル ディシジョン』および『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』で描かれた未来がなくなり、新たなデッドプール映画が可能になったというわけです。また、『X-MEN: ダーク・フェニックス(原題)』の時系列も同じ理由からのが製作になります。
『X-MEN: アポカリプス』は『X-MEN: フューチャー&パスト』、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』の時間軸上にある続編で、歴史改変後の80年代が描かれます。ただし、すでに改変された『X-MEN: ファイナル ディシジョン』の未来が訪れることはありません。
『X-MEN』シリーズの主人公ウルヴァリンを演じたヒュー・ジャックマン。
なお、『X-MEN: フューチャー&パスト』の主役はウルヴァリンですが、同じくウルヴァリンが主役の『LOGAN/ローガン』は、シリーズから独立したストーリーとなっています。
では、TVシリーズの「ザ・ギフテッド(The Gifted、原題)」はどうなるのでしょうか。正直、私たちにはわかりません。そして、キャストたちもまだ知らないようです。
ただ、ここで明確に言えることがひとつだけあります。それは、この説明を読んでもわかりにくいということですね、すみません。
『ソウ』シリーズ
『ソウ』については、「残虐なゲームを楽しむ男の、ぞっとするような拷問がエスカレートしていくシリーズ」という印象をもっている人もいるでしょう。
でも、実際はまったく違います。この映画は、続編が出るたびにますますストーリーが複雑になってきました。回想シーンが多用されるこのシリーズは、全作品を一日で観たとしても、ストーリーの全容を把握するのが困難なものです。
シリーズのストーリーを詳しく説明していたら、この記事にはおさまりきらないほどですが、以下の解説はストーリーを把握する手助けになるでしょう。
『ソウ4』は、『ソウ3』と同時進行で進んでいる話です(最後の最後まで見てやっとわかるものですが…)。また、『ソウ5』は『ソウ3』のしばらく後に始まるものです。『ソウ6』のエンドロールのなかでは、『ソウ2』と『ソウ3』の間にあった出来事が明らかになります。
ちなみにトビン・ベル演じるジグソウは、『ソウ3』の時点で死んでいます。とはいえ、彼はその後の作品にも顔を出しますが。
『ワイルド・スピード』シリーズ
このシリーズは一見シンプルですが、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』の存在が、時系列を複雑にしています。この作品では、ファンに人気のあったハンというキャラクターが死亡するシーンがあります。このため「3」は、時間軸上「4」、「5」、「6」(いずれもハンが登場する)の後に位置します。また、「7」は「3」の9年後を描いています。
改めておさらいすると、『ワイルド・スピード』シリーズは、「1」、「2」、「4」、「5」、「6」、「3」、「7」、「8」の順となっています。
『ターミネーター』シリーズ
未来を変えるために、タイムトラベルをする殺人アンドロイドを描くこのシリーズのストーリーを考えれば、時系列が分かりやすくなるはずです。
まず混乱するのは、未来から過去にタイムトラベルをし、自らの未来を作り出す、あるいは変えてしまう人々の存在です。たとえば、カイル・リースはこの一人で、彼は未来の世界での上司ジョン・コナーの父になってしまいます。
3作目『ターミネーター3』では、ストーリーはさらに複雑になります。この作品では、平和な未来の可能性が消え去り、「審判の日」(この概念からいくつものターミネーターの続編が生まれました)が回避不可能になります。なお、4作目『ターミネーター4』では幸いにもタイムトラベルはありませんが、これに続く『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』はひどいものです。
世界中で不評が相次いだ5作目『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』は、基本的には後付けの設定を加えるものでした。が、最終的に、過去の素晴らしいターミネーター作品で描かれてきた物語を書き換えてしまうのです。これは愛されてきた作品群を燃えさかるゴミ箱に放り込むようなものです。
『ターミネーター 6(仮題)』では、シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが再びメガホンをとることになりますが、サラ・コナー役で復帰するリンダ・ハミルトンとともに、ターミネーターシリーズの再起を成し遂げてほしいものです。『ターミネーター6(仮題)』は、『ターミネーター3』から『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』までの作品はなかったものとして制作されるそうです。
『猿の惑星』シリーズ
ここで言及するのは、オリジナルの『猿の惑星』シリーズについてです。ティム・バートンが監督し、酷い出来と評されることとなったリメイク版『PLANET OF THE APES/猿の惑星』、いっぽうで素晴らしい作品と評されるようになった『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』へと続く最新の三部作については触れていません。
オリジナルの『猿の惑星』シリーズは、『猿の惑星』(1968年)、『続・猿の惑星』(1970年)、『新・猿の惑星』(1971年)、『猿の惑星・征服』(1972年)、『最後の猿の惑星』(1973年)の5本の作品からなります。このシリーズが混乱するのは、第1作『猿の惑星』で主人公たちが不時着した惑星が地球であったことが判明した後、ストーリーがタイムパラドックスの要素を含むことになるからです。
1作目『猿の惑星』では、宇宙船で地球に帰還しようとしていたチャールトン・ヘストンが、何らかの相対性理論上のトラブルに直面し、謎の惑星に不時着することになります。しかし、高度な知能を持つ猿たちに支配されていたこの惑星は、西暦3978年の地球だったということが明らかになります。
2作目『続・猿の惑星』では、この地球が滅びることになります。しかし、第3作『新・猿の惑星』では、高い知能をもっていた猿が2匹、消滅する地球から宇宙船で脱出していたことが明らかになります。そして、この宇宙船は再び相対性理論上のトラブルに直面し、今度は1971年の地球に不時着することになるのです。
その後、2匹の猿は死にますが、シーザーという名前の息子が生き残ります。このシーザーが猿たちの反乱を率いて、最終的に地球は再び猿の惑星となるというストーリーです。
『ハイランダー 悪魔の戦士』シリーズ
このシリーズは、フランス人俳優のクリストファー・ランバートがスコットランド人のキャラクターであるコナー・マクラウドを演じ、スコットランド出身俳優として、もっとも有名なショーン・コネリーがエジプト生まれの不死身の剣士、フアン・サンチェス・ヴィラ=ロボス・ラミレスを演じるという混乱に満ちたスタートを切りました。
不死の者たち(宇宙人という設定もあります)の物語においては、至るところに回想シーンが登場します。6作の映画と2作のテレビシリーズで描かれるのは、1万年にもわたる歴史で、圧倒的な脳のキャパシティとオタク気質がなければストーリーの全容を把握するのは困難でしょう。
また、コナーとラミレスが初めて出会ったときのエピソードについても、2つのまったく異なるものがあり、ツッコミどころ満載です。この部分については、おそらく生まれ変わりと何らかの関係があるのでしょうが、皆さんは理解できたでしょうか?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ
このシリーズは3作のみ(ただし、ショートフィルム『ドク・ブラウン 世界を救う!』を除く)ですが、すべてがタイムトラベルがストーリーの中心となるので、実際かなり複雑です。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のなかでドク・ブラウンが説明したように、このシリーズのタイムトラベルのルール上、タイムトラベラーが過去の重要な出来事に変化をもたらした場合には新たな未来が生まれる。そして、これまであったはずの未来は消えてしまいますのです(ただし、タイムトラベラーのみが以前の未来を覚えています)。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、主人公のマーティーが1950年代にタイムトラベルをします。しかし、この時代の彼の母は、彼の父ジョージではなく、マーティーに恋をしてしまうことに…。これによって、マーティーが存在しない新たな未来が生まれそうになってしまいますが、最終的にはこれも解決します。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、マーティーとドク、マーティーの恋人ジェニファーが2015年にタイムトラベル。マーティーとジェニファーの未来の息子が、犯罪を犯すのを阻止しようとします。
しかし、これが成功に終わりそうになったところで、未来の老いたビフがデロリアンを盗み出し、1955年の自分にスポーツ年鑑を手渡します。これによって若きビフが大富豪になる新たな未来が生まれてしまうのです。その後、何人ものジェニファーが登場する時代を超えた大騒ぎが繰り広げられ、マーティーは最終的に1955年のビフからスポーツ年鑑を奪うことに成功しるのです。最終的には、落雷がデロリアンに乗ったドクを1885年に飛ばし、マーティーは1955年に残されてしまうのです。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』では、マーティーが1955年のドクのもとへと訪れ、デロリアンの修理を手伝ってもらうことになります。このデロリアンは、1885年に飛ばされたドクがマーティーのために隠していたもの。
マーティーは1885年に戻り、ドクが殺されるのを防ごうとします。その後、蒸気機関車の助けを借りて、元の時代(1985年)に戻れることになります。ですが、ドクは恋に落ちたクララという女性とともに、1885年にとどまることになります。しかしドクはその後、妻となったクララと二人の子供とともに1985年のマーティーのもとを訪れるのです。
考えすぎなければ、とても簡単ではないでしょうか。
『パペット・マスター』シリーズ
このシリーズの複雑な時系列と「Demonic Toys(悪魔のおもちゃ工場)」シリーズとのクロスオーバーについて、詳細を説明するには時間があまりありません。
このシリーズは非常にごちゃごちゃしたもので、1902年のパリを舞台にした『Retro Puppet Master』から、複数の過去作を寄せ集めた作品までとさまざまです。が幸い、映画SNS「Letterboxd」の有志が、これらの順番を時間軸で並べてくれています。参考にしてみてください(https://letterboxd.com/mook/list/viewing-order-puppet-master-universe/)。
From ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。
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