ハリウッドは賞レースシーズン真っただ中。ゴールデン・グローブ賞、全米製作者組合賞(PGA)、全米映画俳優組合賞(SAG)などが続々と発表されました。そんなアカデミー前哨戦としても叫ばれる各賞の結果を受け、2018年3月4日に開催される映画界最大の祭典、第90回アカデミー賞の受賞予測がさらに白熱!
今年のアカデミー賞の有力候補に挙げられているのが、13部門にノミネートされた『シェイプ・オブ・ウォーター』、8部門にノミネートされた『ダンケルク』、そして7部門にノミネートされた『スリー・ビルボード』などなど…。けれど、ノミネート数が多いことが必ずしも受賞につながるわけではないので、本番当日までドキドキワクワクは続くわけです。そこで授賞式まであと3週間あまり…ということで、ひと足早くオスカー主要8部門の最有力候補をおさらいしましょう!
From Harper's BAZAAR
Translation / Ai Ono
作品賞: 『シェイプ・オブ・ウォーター』
ギレルモ・デル・トロ監督の優しさに満ちたファンタジー・ロマンスです。
2018年1月20日(現地時間)に開催されたPGA賞では、見事作品賞に輝きました。PGAの会員の多くがアカデミー賞を運営する映画芸術科学アカデミーのメンバーになっていることから、以前はオスカーの前哨戦とも言われていた賞。しかし、直近2年間でPGAの作品賞に選ばれたのは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2016年)と、『ラ・ラ・ランド』(2017年)、一方アカデミー賞では『スポットライト 世紀のスクープ』と『ムーンライト』が受賞しているので、PGA賞での受賞が必ずしもオスカーを保証してくれるわけではなさそうです。
でも、『シェイプ・オブ・ウォーター』は今年のアカデミー賞で最多13部門にノミネートと勢いに乗っているだけに、作品賞受賞の可能性は高いのです!
対抗馬として注目されているのが、マーティン・マクドナー監督のリベンジ・サスペンス『スリー・ビルボード』。
トロント国際映画祭の最高賞に当たる観客賞も受けている話題作ですが、昨今のハリウッドでは「#OscarsSoWhite(白すぎるオスカー)」という問題が大きく取り上げられていることもあり、本作における人種差別、その改善を訴えているわけではない内容には反対意見も多数ですが…。
監督賞: クリストファー・ノーラン(『ダンケルク』)
アカデミー賞において、作品賞と監督賞が同一作品から選ばれることは少ないのです。
実際に直近5年間を振り返っても、それぞれ別の作品から選ばれており、本年度作品賞の最有力候補である『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロも監督賞ではフロントランナーにはならないようです。
今年の候補者で過去に監督賞にノミネートされたことがあるのは、『ファントム・スレッド』のポール・トーマス・アンダーソンのみ(ノーランやデル・トロは、脚本賞など別カテゴリーでのノミネート経験はあります)。
『ダンケルク』は素晴らしい技術や監督上の芸才が称賛されることだけでなく、これまでのアカデミー賞では縁がないとされていたSFやアクションといったジャンルの製作者が、今後ふさわしい評価を受けるためのきっかけになる作品とも言われています。
主演女優賞: フランシス・マクドーマンド(『スリー・ビルボード』)
本年度のアカデミー賞で、6部門7ノミネートの『スリー・ビルボード』。中でも受賞がほぼ確実視されているのが、主演女優賞候補のフランシス・マクドーマンドです。
子供を亡くしたことで悲しみに暮れ、復讐心に燃える主人公ミルドレッドを静かに、そして激しく演じきった彼女の受賞に反対する者はいないでしょう(『スリー・ビルボード』の作品賞ノミネートには賛否両論あります)。フランシスにとっては2006年の『スタンドアップ』(助演女優賞)以来、12年ぶりのオスカーノミネート。初受賞は、1997年の『ファーゴ』(主演女優賞)でした。
ただひとつ気になるのは、今年のSAG賞で主演女優賞を受賞したフランシスが受賞スピーチで、「もっと若い俳優にチャンスをあげてほしい」と訴えたこと。「若い俳優たちもどんどん出てきています。彼らのために扉を開けることも必要だと思います」と…。
アカデミーが彼女の言葉を真摯に受け止めたなら、『レディ・バード』のシアーシャ・ローナンの受賞もあり得るかもしれませんね。
主演男優賞: ゲイリー・オールドマン(『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』)
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』の作品自体や、ゲイリー・オールドマンの印象的な演技に深く感動している人は少ないようですが、今シーズンの賞レースの主演男優賞はゲイリーの独壇場でSAG賞やゴールデン・グローブ賞を含む数々の賞を手にしています。
イギリスを代表する名優であり、日本でも人気の高い俳優の1人ですが、実はオスカーにノミネートされるのは意外にも今回が2回目(一度目は2012年の『裏切りのサーカス』)で、受賞経験はありません。
対抗馬として挙げられるのは、『ファントム・スレッド』のダニエル・デイ=ルイスです。彼は本作をもって俳優を引退することがすでに発表されています。しかし、ダニエルは2008年の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(主演男優賞)、2013年の『リンカーン』(主演男優賞)と、過去10年で2度オスカー像を手にしているため、今年は他の俳優が選ばれる可能性が高そうですね。