「音楽の祭典」であるグラミー賞授賞式2015が行われ、テイラー・スウィフトが3年連続受賞ました。

数多くの才能あるミュージシャンが混在する現在のミュージックシーンでは、あらゆるジャンルが世界中で人気を得ていますよね。そこで、『エスクァイア』UKのエディターは、ロックやポップ、さらにはマラウイ/スウェーデン人が手掛けたインディーエレクトロニカの世界から、2015年にリリースされたベストアルバムを20枚リストアップしました。

『Panda Bear Meets The Grim Reaper』– Panda Bear

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メリーランドのアニマル・コレクティヴで活動するパンダ・ベアが、1月に5枚目となるソロアルバムをリリースしました。タイトルにある“Grim Reaper(死神)”という言葉から想像するイメージほど死を彷彿させる内容ではなく、実際のところ、遊び心に溢れるエキセントリックなダンスミュージックの秀作。パンダ・ベアは明らかに、リスボンの自宅スタジオで、フィルターをかけたヴォーカル、ドラムミング、豊富なサンプラーを使って思い切り楽みながら製作したはずです!

『What A Terrible World, What A Beautiful World』– The Decemberists

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アメリカ・ポートランド出身のバンド、ザ・ディセンバリスツは輝かしいフォーク−ヒップスターの歴史におけるストーリーテラー的存在なのです(暖炉に椅子を引き寄せ、2005年のクラシックなアルバム『The Mariner’s Revenge Song』をじっくりと聞いてみよう)。4年間に渡る非公式の活動休止を経て、この1月、7枚目のアルバムリリースとともに復活を果たしました。おかしさ、不安、悲しみ、愛。心にチクリとくるトラックが詰まった1枚になっています。

『Uptown Special』 – Mark Ronson

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マーク・ロンソンは遥か昔、小説家マイケル・シェイボンの作品を高く評価していると話しました。しかし、このピューリッツアー賞受賞の作家がこれほどまでにロンソンの歌詞に影響を与えていたのかについて、僕らは今まで侮っていました。ブルーノ・マーズ、アンドリュー・ワイアット(マイク・スノー)、ケヴィン・パーカー(元ティーム・インパラ)などをゲストボーカルに迎え、ファンキーでダンサブルに仕上げています。

『We Are Undone』 - Two Gallants

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サンフランシスコ拠点のバンド、トゥー・ギャランツは、ロイヤル・ブラッドがまだタイトでショートなブラックジーンズを履いていた頃はノイジーデュオをやっていたのです。しかし、彼らのサウンドは進化を遂げ、2004年のデビューアルバム『The Throes』以来の、素晴らしい出来を披露しています。彼らの故郷は、技術世代がなす目まぐるしい消費主義の中心地なのです。そしてこのことが、彼らの5枚目のアルバムのテーマは、少し乱暴で感傷的なものになっています。

『Vestiges & Claws』 - José González'

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スウェーデン出身のホセ・ゴンザレスが、3枚目のアルバムとともに帰ってきました。本作は、2005年の『Veneer』から始まり、2007年の『In Our Nature』へ続いた、アコースティックサウンドのトリロジーを締めくくる1枚なのです。繊細なフォークミュージックの愛で奏でられた、暖かなハグを感じる作品ではないでしょうか? 最近のアフリカン・ドローン−ブルースへの興味のほか、実存主義的な生のテーマ、何が一体良いのか(実際には他にも沢山あるが)などへの問いかけも垣間みられる内容となっています。

『The Very Best』 - Makes A King

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マラウイ人とスウェーデン人のデュオによる、3枚目となるアルバム『The Very Best』は、前作と比べてエレクトロ色は薄くなっています。恐らく、マラウイ湖畔の村で録音した環境が影響しているのかもしれません。ヴァンパイア・ウィークエンドのクリス・ベイオ(あと、コオロギの鳴き声も)を始め、ゲストミュージシャンが参加しています。

『The Magic Whip』 - Blur

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「音楽への偉大な功績」を残し、再結成ツアーを経た今、ブラーが現在進行形のバンドだということは忘れがちです。ブリットポップの全盛期を支えた音楽プロデューサー、ステファン・ストリートとの12年ぶりのアルバムに大きな歓声を贈りましょう。本作のカバーは、「中国語で書いてみたよ、ありがとうみんな」的で、やや思い上がった印象を与えるかもしれないが、サウンドはあの当時のブラーと変わらないのです。バンドはまだまだファンを楽しませる才能に溢れていることを証明しています。

『In Colour』 - Jamie xx

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デビューアルバム『イン・カラー』をリリースして以来、今、Jamie xxほど大きなポスターになって街中を騒がしているレフトフィールド・エレクトロニカ系のアーティストはいないでしょう。 

オープニング曲「Gosh」のドラムループからすぐに分かりますが、Jamie xxの本作は、スチールドラムやグロッケンシュピール、ゴスペルボーカル(恐らく、タイトルはここから来ていると思われる)などを使っており、明らかに新しい奥行きと深みが感じられます。繊細な美しさに溢れる本作のファイナルトラックが終わったときに、すぐさま最初から聞きたくなってしまうのです。

『Currents』 - Tame Impala

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『Lonerism』と2010年の『Innerspeaker』が、テーム・インパラのキーマン、ケビン・パーカーを、ポストロックの未来と称賛した一方で、最新作『Currents』は、よりポップでファンキーなリズムのトラック、恐ろしいほど分かりやすい詩が並ぶ1枚になっています。果たして、コアなファンはこれを気に入るのでしょうか?恐らく、それは難しいかと。では、彼に“興味深い”友達が増え、異種交流的なプロジェクトが舞い込んでくるだろうか?間違いなく、そちらの方向が妥当でしょうね。

『What Went Down』 - Foals

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(偽の)音楽的な悟りの境地に辿り着いた若者のためのバンドとしてフォールズを仕立てた、ブリープとスタッカート、インディーダンスなどの要素が溢れる独特な進化の世界へようこそ。レディング出身の4人組の4枚目となるアルバム『What Went Down』は、ぐっとヘビーにダークなサウンドになっており、総括して前作よりも面白い内容に仕上がっています。 

レコーディングはフランス・プロヴァンスで行われたようですが、ベーカリーへののどかな散歩というよりは、より汗臭くて熱狂的なサウンドに仕上がっているのです。

『Born In The Echoes』 - The Chemical Brothers

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商業的なダンスミュージックの人工的進化をスルーし、最近のグラストンベリーのライブで復活したケミカル・ブラザーズ。彼らは、かつてなく重要で刺激的なミュージシャンであることを証明し、フロントランナーとして色褪せない存在感を見せつけました。 

このデュオの8枚目となるスタジオアルバム『Born in the Echoes』は、最高傑作です。ラジオにぴったりなポップチューン「Go」と並んで、ダンスフロアが陶酔状態に陥るトラック「'Sometimes I Feel So Deserted」が収録され、感動的とも言えるゲスト(ベックやセイント・ヴィンセント)も多く登場するのです。電子音楽は、単に劣化の道を進んでいる訳ではないことが分かることでしょう。誰か、デヴィッド・ゲッタに伝えてください!

『Elaenia』 - Floating Points

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『Elaenia』(タイランチョウ種の鳥の名前)は、フローティング・ポインツこと、マンチェスター生まれのサム・シェパードによる、間違いなくエキサイティングなアルバムなのです。クラシックとジャズを学んだ音楽学生だった過去と、レアなシンセサイザーの熱狂的なファンという彼のバックグラウンドが活かされているものの、“聞きやすさ”のために何かを犠牲にするようなことはしていません。 

羽根のように軽いブレークビート、ジェントルなブラジリアン・ジャズファンク、豊かなストリングサウンドのスペーシーなサウンドスケープ(敢えて言うならば)。『Elaenia』は、気分を爽快にしてくれるだけでなく、オープンマインドにしてくれる1枚なのです。

『Sun Leads Me On』 - Half Moon Run

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Half Moon Runは、カナダの4人組インディーロックバンドです。2012年発表のデビューアルバムの『Dark Eyes』を通して、記憶に残るハーモニーワークが世界に披露されました。 

彼らの2枚目『Sun Leads Me On』も、同じディレクション(溢れんばかりのフォーキーなハーモニー)のサウンドを提供しているが、全体を通してややエクスペリメンタルな要素が増えています(踊るようなハーモニクスなど)。マーキュリー賞を受賞したArctic Monkeysの『Whatever People Say I Am, That's What I'm No』を手がけたイギリス人プロデューサー、ジム・アビスがスタジオで構えていたことを考えれば、Half Moon Runは、進化を恐れない期待のバンドだと言えます。

『Constant Bop』 - Bop English

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Bop Englishがおかしな名前だと思うなら、それは正しい感覚です。その正体は、テキサス出身のバンドWhite Denimのメンバー、ジェームス・ペトラリ。彼は、4年の歳月を費やし、粋で独創的なロックのレコードを製作しました。やっと作品が仕上がったとき、彼は「自分の肌が、“洞窟に住むサンショウウオのようになってしまった”」と話したようです。そして僕らは彼に言いたいのです。このアルバムにはその価値があったのだと!

『Colours of the Night』 - Peter Broderick

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ブローデリックは、2012年の『http://www.itstartshear.com』のあとに患った意味不明の病気から回復する中、スイスでこのアルバムをテープに録音しました。ここまでだと、トーマス・マンのようですが、ブローデリックの場合はハッピーエンドが用意されているのです。なぜなら、エクスペリメンタルフォーク、ドゥーワップ、その他色々な要素を取り混ぜたこの素晴らしく斬新なアルバムが仕上ったのですから。

『White Men are Black Men Too』 - Young Fathers

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エディンバラ出身のトリオであり、昨年のマーキュリー賞の受賞という驚きの結果をもたらしたヤング・ファーザーズが早くも帰って来ました。2枚目となるスタジオアルバムは、辛辣な発想と魅惑的な脅迫感に溢れています。彼らはこの作品を“ポップ”と定義しています。もちろん、それでも良いじゃないでしょうか。でも、あなたの知っているポップとこれとは、ちょっと質が違うのです。

『Ivy Tripp』 - Waxahatchee

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ケイティー・クラッチフィールドのワクサハッチーは、レナ・ダナムの『Girls/ガールズ』の音楽版といったところでしょう。混乱した青春に対するスマートで創造性あふれる黙想。彼女の故郷ロングアイランドの小学校の体育館で一部が録音されました。彼女の3枚目となる本作は、繊細さと如才のなさが顔を出している魅力が詰まっているのです。

『Sound & Colour』 - Alabama Shakes

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アラバマ・シェイクスの2012年のデビューアルバム『Boys & Girls』は、優れた演奏力にソウルフルなブルースとキラキラとしたロックサウンドがブレンドされ、一躍センセーションを巻き起こしました。これはすべて、カリスマ性のあるブリタニー・ハワードの才能によるところです。 

2作目の『Sound & Colour』は、よりサイケでエクスペリメンタルな内容ですが、幸いにも多くの才能なきバンドが犠牲になってきた“アーティスティックな”自己陶酔の世界へは足を踏み入れていないのです。

『Making Time』 - Jamie Woon

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2010年のシングル「Night Air」とデビューアルバム『ミラー・ライティング』の発表以来、ジェイミー・ウーンは、ジャイルス・ピーターソンをはじめとするイギリスのミュージックシーンで影響力を持つ人々に支持されてきました。この32歳のイギリス人シンガーソングライターは、エイミー・ワインハウスと1年違いでブリット・スクールを卒業しています。 

ウーンの2枚目となるアルバム『メイキング・タイム』は、現在音楽業界で復活の兆しを見せているソウルミュージック(Kwabsやレオン・ブリッジズなどをチェック)の要素だけでなく、R&Bに影響を受けたグルーヴィーなトラックも収録しています。壮大なメロディーが好きで、まだ彼のことを知らないならば、今こそジェイミー・ウーンをチェックするべきです。

『Gliss Riffer』 - Dan Deacon

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2012年に発表したアメリカ横断のエピック(こう呼ぶのに十分だが)『America』以来、ついにカルトミュージシャンのダン・ディーコンが復活しました。このアルバムでは、より小さなスケールの実験的な世界を構築していますが、だからといって野心に欠けると思ってはいけません。『Gliss Riffer』は基本的にはエキセントリックだが、“less is more(少ないことはより多いことだ)”の逆を行くべく、粘っこく味わい深い大渦巻きの中で、様々なサウンドのレイヤーが重なり合い大きく膨らんでいくのです。エレクトロニカのミルフィーユはいかがですか?さあ、ガッツリ頬張ってみましょう!

Source / ESQUIRE UK
Translation / Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。