2017年1月26日(木)に公開したPart 1では、デヴィッド・ボウイやビヨンセ、レディオヘッドのようなベテランバンドによる秀作も紹介しました。
今回のPart 2でも、魅力溢れる10枚のアルバムをご用意。ぜひ、チェックしてみてくださいね!
HAMBURG DEMONSTRATIONS - PETER DOHERTY
アーティスト名/
ピーター・ドハーティ
アルバム名/
Hamburg Demonstrations
イギリス出身のミュージシャン・詩人であり、ザ・リバティーンズでの音楽活動によって最もよく知られているピーター・ドハーティ。彼の存在は音楽家としても人間としても、彼自身を含む多くの人にとって、驚かされるでしょう。
彼のセカンドソロアルバム「ハンブルグ・デモンストレーション」は同じドイツの都市で6カ月にわたりレコーディングされていたもので、メロディが印象的なまでにありません。悲痛な叫びから、社会政治の怒り(うち1曲はパリのテロについてのものだ)と英国文化的知性(「コリー・キバー」はグレアムグリーンの「ブライトン・ロック」の登場人物から発想を受けたものだ)を、浮かれたギター・ジャムとリフレクティブ・フォークを少し混ぜたカタチになっています。
これには輝きと耽溺(たんでき)があります。あなたはどちらに惹きつけられますか?
SUMMER 09 - METRONOMY
アーティスト名/
メトロノミー
アルバム名/
Summer 09
Joseph Mount(ジョセフ・マウント)率いるイギリスのインディーバンド、メトロノミー。その5枚目のアルバムのサウンドは、アウトキャストとデヴィッド・ボウイの重構造のポップソングにインスパイアされ、両方のプロデューサー(それぞれニール・ポグとボブ・クリアマウンテン)がミキシングをサポートしています。
ディスカバリー時代のダフトパンクの力強い香りもあります。それは悪いことではありませんね。シングル「Old Skool」は、「Radio Ga Ga」をLCDサウンドシステムのカウベルでスピーディーにしたもので、高揚感あふれる魅力があります。
「Hang Me Out to Dry」では、スウェーデンの歌手ロビンをゲストにボーカルに迎え、男と女の擦れ違い、それを車に投影した秀作です。ビデオの監督は、Dent De Cuir。
UNDER THE SUN - MARK PRITCHARD
アーティスト名/
マーク・プリチャード
アルバム名/
Under The Sun
グローバル・コミュニケーションやアフリカ・ハイテック、トラブルマンなどの名義でも知られるプロデューサー、マーク・プリチャードは、アフェックス・ツイン、エミー・ワインハウス、マシッブ・アタック、それにレディオヘッドのためにリミックスを行っている名手。2016年5月、本名で出した彼のファーストアルバムが、この「アンダー・ザ・サン」。
ほとんどがインストルメンタルですが、これは彼の余り喧(やかま)しくないバックカタログ(既存の作品)を反映しています。それは、忘れられたビデオゲームからのカットや、外国のSF映画のオープニングタイトルミュージックなど。
トム・ヨークは名盤「Beautiful People」(これもいい曲です!)に参加しており、『サウンド・オブ・ミュージック』で女優ジュリー・アンドリュースが子供たちと歌ったあの曲がタイトルトラックにサンプルされていますが…、この曲を聴くのにそれ以上知る必要はありませんね。
あなたが午前4時、街をドライブするときはこれをかけるべきですね。
POST POP DEPRESSION - IGGY POP
アーティスト名/
イギー・ポップ
アルバム名/
Post Pop Depression
タイトルトラックの他に8曲り、全9曲で仕上げた「ポスト・ポップ・ディプレッション」は、すべてがエレジー、悲歌と言っていいでしょう。69歳になるロック・レジェンドから、溢れる旺盛な活力にも満ちています。
イギーは、プロデュースとベース演奏も行っているジョシュ・オムと共同でアルバムを書いています。
2016年になってすぐに、彼らはこのアルバムに取り掛かっており、そのため「German Days」にはイギーとデヴィッド・ボウイとのベルリンおよびミュンヘン時代の交流で得たインスピレーションが反映されています。
しかし、彼らは悲しみのレコードを作ったのではありません。「Vulture」は「死の臭いがする悪の息吹き」をもつ鳥についてで、彼は47年前に「僕を君の犬にしてくれ」と初めて歌ったときと同じくらい力強く、戦争の嘆きを歌っている。
JUNK - M83
アーティスト名/
M83
アルバム名/
Junk
7枚目のアルバム「M83」で、35歳のフランス人ミュージシャンであるアントニー・ゴンザレスは、ベックやロックギターの巨匠スティーヴ・ヴァイなどのビッグネームとコラボしています。ちなみにアーティスト名である「M85」は彼のプロジェクトのひとつであり、その由来は渦巻銀河のひとつである「M83」になります。
彼の新しいレコード全体に通っているのはSF。ですが、それほど冷たく、無機質な面白みのないもの…というわけではありません。
ゴンザレスは、ダウンテンポでも見事な調子なのです。「ムーン・クリスタル」では、トップファッションカメラマンが淫らになったような、VHSでの卑猥なドラマを連想させます。彼が危険なものに対して、「ドゥ・イット、トライ・イット」であったように…。
後者の曲は、彼の仲間であるダフト・パンクやジャスティスと同じくらいGOODなのです。そして、コルヴェットから飛び出したとき、逆さになってジャケットの袖をまくり上げていたら、ますます良いのです。
EVERYTHING YOU'VE COME TO EXPECT - THE LAST SHADOW PUPPETS
アーティスト名/
ザ・ラスト・シャドウ・パペッツ
アルバム名/
Everything You've Come To Expect
適切にネーミングされた「エヴリシング・ユーブ・カム・トゥ・エクスペクト」は、ジョン・バリーやスコット・ウォーカーに傾倒しています。が、ベックやスタイル・カウンシルやヨットロックの影響も感じられます。
アルバムに入っている11曲は、主に女性が男の頭や精神や魂に与えるショックな影響を歌ったもの。これらの要素はまた、ラスカルズのマイルズ・ ケインとアークティック・モンキーズのアレックス・ターナーがコラボして結成したサイド・プロジェクトのバンドらしさが顕著に放出された名作です。
PHASE - JACK GARRATT
アーティスト名/
ジャック・ギャラット
アルバム名/
Phase
英BBCが毎年発表し、その年に活躍が期待される新人リストである「Sound of 2016」で、1位に選ばれたのがジャック・ギャラット。彼はバッキンガムシャー出身のシンガー/マルチ・インストゥルメンタリストです。シンセをもったエド・シーランのように思われているようですが、それでは面白いものなのに、控えめに売り込んでいるだけになりかねません。
音楽のツールをすべてロッカーの中にしまっているような人もいるかと思います。ギャラットもそのタイプ。でも、それらを一挙に全部使ってしまうような人ではありません。適材適所を見極め、引出しからそれにふさわしいツールを取りだす天才です。
収録曲の「The Love You're Given」と「Breathe Life」は、特に目立っています。
「I Know All What I Do」と「My House Is Your Home」では、彼のボーカルはまるで語りかけているように披露しています。後ろのサウンドはピアノの弾き語りですが、ベッドルーム・デモのように聞こえて、それがまた魅力的なのです。
このようなアレンジのおかげで、「フェーズ」は初めから終わりまで退屈しないアルバムになっています。ギャラットは、そのプロモーション相応の価値を見出しています。
NIGHT THOUGHTS - SUEDE
アーティスト名/
スウェード
アルバム名/
Night Thoughts
これは余りにも古風も作りこんでいることで、逆に最先端となっている作品です。スウェードのアルバムは「順番通りに、最後までずっと」聞くように作られています。
しかし現代では、アルバムのセールスだけではバンドは生活できない時代であることも理解できています。そのためでしょうか、7枚目のアルバムである本作「ナイト・ソーツ」では、全12曲が映像とともに試聴できるサンプラー映像も公開されました。またDVDには、『夜の瞑想』フィーチャー・ムービーが付いているのです。
ブリティッシュポップの歴史のなかで、ブラ―やオアシスを視野から外しますが…スミス以来、スウェードがポップの知性と都市の憂鬱とを魅惑を結合させた両性具有的な楽曲を成立させたのがスウェードではないでしょうか。それがどんなに衝撃的だったか。でも、それを忘れるのも簡単なことなのですが…。
20年のときが経って、アンダーソンのボーカルはパワフルさが多少減ってはいますが、これにより、さらに忘れられないものとなり、バンド全体はなおもスピードアップしているのです。
ALL I NEED - FOXES
アーティスト名/
フォクシズ
アルバム名/
All I Need
本名はルイザ・ローズ・アレン。彼女がアーティスト名として用いているのがフォクシズです。彼女はイギリス出身の女性シンガソングライター。その後、音楽を学ぶためにロンドンに移住したそうです。チェックすべきは2014年にリリースし、トップ20シングル入りを果たした3曲でしょうか。
今年の彼女は、ムーディーで巧みなポップトラックで自らの名を高めたのち、ツアーに乗り出しました。
悲しいことですが、これらを作ったときの傷のせいで、彼女は重要なことを無視してしまったようです。その内容とは、「本当は、どうやってこれらの歌を実際にライブで歌ったらいいか知らない」とのこと…(えっ?)。
22, A MILLION - BON IVER
アーティスト名/
ボン・イヴェール
アルバム名/
22, A Million
ジャスティン・バーノンを中心に結成されたアメリカのフォーク・ロックバンド、ボン・イヴェール。このニューアルバムからは、「もし壊れていなくても、とにかく修理しろ」的な態度でケアすることを大切に思うアーティストであることがわかります。古くから彼の曲を聴くリスナーにとっれ、そこに予期せぬ方向転換を感じてしまっても、そこには彼なりの真摯さが伝わってくるのです。ファンであればなおさら…。
確かに「22, A Million」は、ボン・イヴェールのプロジェクトがいまだ進行形であることが確かめられる作品でもあるのです。不吉なクレイジー・フロッグのサンプリングや、余りにもルーズなベース、そして歌まで今にもつかえそうになるサックス…、さらにはトラッカー帽の髭面男から出てくる余りにも魅惑的なファルセットの使用は、今回減らしているようです。
しかし、これらの実験的な試みにも関わらず、ブルージーでフォーキーないかにもアメリカ的な感性に満ち溢れているのです。これらは本質的に美しく、あなたのハートに必ずやに何かを感じさせるでしょう。たとえそれが、何かを確かには解らないかもしれませんが…。
By Esquire Editors on November 17, 2016
Photos by ESQUIRE UK
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊