仲の悪いカニエ・ウェストやケイティ・ペリー、元恋人のカルヴィン・ハリスらをいじり倒した、新作ミュージックビデオに注目。
11月に約3年ぶりの新アルバム「Reputation」を発表するテイラー・スウィフト。先行シングルのミュージックビデオでは、自分を取り巻く環境を大いに皮肉っている。
ケイティ・ペリー
テイラー・スウィフトのブリーチしたブロンドヘアとワイルドなヒョウ柄のレオタードが、ライバルのケイティ・ペリーを思わせるシーン。ヒョウ柄は、最新曲「Swish Swish」で自らを虎に喩えたペリーを意識しているのかもしれない。
また、手に持ったグラミー賞のトロフィーで受賞経験のないペリーをディスるのも忘れていない。なお、スウィフトは10度の受賞経験がある。
似通ったテイラー軍団を自虐
スウィフトには“テイラー軍団”と呼ばれる友人たちがいるが、このシーンはモデルなどが多いテイラー軍団への批判的な声−−たとえば、大衆紙『ニューヨーク・ポスト』は2015年の記事で、テイラー軍団を“カルト”とさえ表現した−−を自虐的に受けとめ、軍団の面々が似通っていることをネタにして、そのことに同意しているように思える。
音楽配信サービスとの摩擦を連想させるシーン
スウィフトが「streaming co.」という電光掲示が流れる会社に侵入し、お金を盗み出すシーンは、アーティストに十分なロイヤリティを支払っていないことに抗議し、音楽配信サービスから楽曲を取り下げたエピソードを連想させるものだ。
スウィフトは2015年、アップルに宛てた公開書簡で、配信サービス「Apple Music」が最初の3カ月の無料トライアル期間中はアーティストにロイヤリティを支払わない点に抗議。当時のスウィフトは「(アップルの方針は)衝撃的で失望しました。歴史的にも進歩的で寛容な企業にふさわしくないと思います」と書いた。
この書簡を受け、アップルは従来の方針をすぐさま撤回している。
音楽配信サービスといえば、スウィフトはアルバムセールスに影響する可能性があるとして、「Spotify」から数年間も楽曲を引き上げていたことでも知られている。このシーンは、「テイラー・スウィフトは単なる拝金主義者であり、配信企業からもらうギャラを増やそうと運動している人物だ」と考える人々を皮肉っている。
ちなみに、スウィフトがかぶっている猫のマスクにも注目してほしい。大の猫好きで知られるスウィフトだが、彼女の愛猫オリビアとメレディスの2匹は、スウィフトが広告塔を務めるブランドのモデルにもなったこともある。
「You Belong With Me」のMVで着用した「Junior Jewels」Tシャツ
スウィフトが「You Belong With Me」のMVと同じTシャツを着ているシーン。ただし、このTシャツに書かれている名前は、テイラー軍団のメンバーに変わっている。セレーナ・ゴメス、ブレイク・ライブリーと夫のライアン・レイノルズ、レナ・ダナムなどだ。
2014年のMETガラの衣装を着た過去の自分を埋葬
ゾンビ姿のスウィフトが埋葬している過去の彼女は、2014年のMETガラでの衣装を着ている。この衣装は、スウィフトが2014年にリリースしたアルバム「1989」時代の始まりを告げたと言ってもいいルックで、5月のイベントの数カ月後には皆さんご存じの「Shake It Off」がリリースされている。
ちなみに、穴を掘っているスウィフトの衣装は、「1989」に収録された楽曲のなかで最後にシングルカットされた「Out of the Woods」のMVで彼女が着用していたものだ。
セクハラ裁判で勝ち取った賠償金の1ドルがMVに登場
お茶をすするケンダル・ジェンナー
2016年、キム・カーダシアンは夫カニエ・ウエストの曲「Famous」についてのカニエとスウィフトのやり取り−−ウエストがスウィフトに言及した歌詞を載せてもいいか尋ね、彼女が承認したという内容−−をスナップチャットに投稿した。カーダシアン家のケンダル・ジェンナーが「ティータイム」の写真をInstagramに投稿したのはこの直後で、これはスウィフトへの批判として広く受けとめられた。
スウィフトはMVのこのシーンで、ジェンナーがInstagramに投稿した写真と同じようなドレスと髪型にして、足を組んでお茶をすする様子までを真似ている。
2009年のビデオミュージックアワードでのスウィフト
カニエ・ウェストが2009年の「MTVビデオミュージックアワード」で、スウィフトの受賞スピーチに乱入。それ以降から現在まで続く二人の確執が始まった瞬間を描いたシーンがこれだ。
当時の衣装を着た彼女だけでなく、その発言にも注目してほしい。スウィフトがこのシーンで述べる「このいざこざから私を除外してほしい。入れてほしいなんて頼んだことは一度もないんだから」という言葉は、前述のキム・カーダシアンのスナップチャットへの投稿を受けて、スウィフトが投稿したものだ。より正確には「2009年からのこのいざこざから私を除外してほしい。入れてほしいなんて頼んだことは一度もないんだから」となる。
セクハラ裁判で勝ち取った賠償金の1ドル
「Look What You Made Me Do」のビデオが撮影されたのは数カ月前なのだが、スウィフトはコロラド州で元ラジオDJに受けたセクハラについて、1ドルしか賠償金を請求しないことに決めていたようだ。
宝石類がバスタブに溢れるこのシーンでは、スウィフトが勝ち取った1ドル札が彼女の隣にある。これは、この訴訟での勝利が彼女にとってどれほど意義深いことかを示すものだろう。
スウィフトの弁護士は裁判の冒頭陳述で、1ドルの賠償金について、「誰かがあなたに手を伸ばしてきたときには、ノーの声を上げられること。女性のお尻を掴むのは暴行にあたり、どんなときも過ちであるということ。裕福でも貧乏でも、有名でもそうでなくても、どんな女性にもこんなことは起きないでいいということ」を人々に理解してもらうためのものだと語っていた。
このバスタブについては、キム・カーダシアンがパリで遭遇した強盗事件を連想させるものだという見方もある。しかし、ファンたちによれば、スウィフトの楽曲「Blank Space」で彼女が作り上げたキャラクターに関係するという説が有力だ。スウィフトはこの曲のMVで、「次々と違う男性とデートする女性」というメディアが彼女に押しつけたイメージをキャラクターにしてみせた。彼女は2016年、グラミー・ミュージアムでの「Blank Space」のアコースティックパフォーマンスで、このキャラクターについて「恋する男性たちを罠にかけ、自分の豪邸に閉じ込めて、真珠で囲まれた大理石のバスタブで泣いているような女の子」とも表現していた。
カルヴィン・ハリスのようなハワイアンシャツを着て、飛行機をドリルで壊すシーン
スウィフトがトロピカルプリントのシャツを着ているシーンは、元恋人のカルヴィン・ハリスが「Feels」のMVでケイティ・ペリーとコラボしたことや、スウィフトを連想させる2つの曲(「Ole」と「My Way」)をリリースしたことへの反応かもしれない。
スウィフトは専用のプライベートジェットを持っており、このビデオに出てくるのも彼女のジェット機だ。トロピカルシャツを着たスウィフトは、飛行機に「Reputation」(評判、評価)という文字をスプレーで書く。これはハリスとスウィフトの2016年夏のいざこざについて言及しているとも考えられる。「This Is What You Came For」の作詞作曲を手伝ったことをテイラー軍団にリークされたハリスは、中傷して自分の評価を下げないよう、スウィフトに次のようにツイートしていた。
「新しい恋愛が幸せなら、元カレの中傷をするのではなく、その恋に集中すべきだよ。君はツアーを終えて、ケイティ・ペリーのときのように誰かを葬り去りたいんだろうけど、申し訳ないが僕はそんな男じゃないし、そうはさせない」(ハリスのツイート)
数年間で付き合った8人の有名人を示唆する人々がMVに登場
I ♡ TS(テイラー・スウィフト)クロップトップ
クロップトップは、「1989」でのスウィフトの定番スタイルだったが、このビデオに出てくる男性たちは、少しずつデザインが異なるクロップトップを着ている。しかし、「I ♡TS」の文字は、2016年にスウィフトが付き合っていたトム・ヒドルストンを思い起こさせるものだ。ヒドルストンはスウィフトが主催した米国独立記念日のパーティーで同じ文字が入ったタンクトップを着ており、これはネット上で何度もネタにされた。
8人のバックダンサー
ファンによれば、このビデオに出てくる8人の男性ダンサーは、スウィフトが有名になってからの数年で付き合った8人の有名人を示唆する人々だという。つまり、トム・ヒドルストン、カルヴィン・ハリス、ジョー・ジョナス、テイラー・ロートナー、ハリー・スタイルズ、コナー・ケネディ、ジェイク・ギレンホール、ジョン・メイヤーの8人だ。彼らはすべて「I ♡ TS」のトップスを着ている。
「Out of the Woods」の衣装を着たゾンビメイクのテイラー・スウィフト
このシーンのイメージは、スウィフトの「Out of the Woods」のMVにかなり似ている。ファンによれば、この曲は「1989」からシングルカットされた最後のもので、スウィフトはこのMVでの衣装を着ているという。この曲のMVには「彼女は彼を失ったが、自分自身を見つけた」というテロップが出る。今回のビデオで「Out of the Woods」のシーンが終わる部分を考えれば、気味の悪い演出だ。
キム・カーダシアン的な自撮りに注目
ニルス・ショーバーグの墓石
ニルス・ショーバーグは、スウィフトがカルヴィン・ハリスと共作した「This Is What You Came For」でクレジットに使った偽名だ。この楽曲は最終的にスウィフトとの共作であったことが明らかになり、ハリスもTwitter上でこれを認めた。ハリスは「素晴らしい作詞家で、いつも通り凄いことをしてくれた」としながらも、「彼女と彼女のチームがこれほど僕のことを悪く見せようと躍起になるのは傷つくことだ」とツイートしていた。
キム・カーダシアン的な自撮り
このMVの最後の場面では、「何をしているの?」と驚く昔のスウィフトにヒョウ柄の衣装を着たスウィフトが「証拠を撮ってるの。後で編集するの」と言うシーンがある。このスウィフトは気味の悪い動きで自撮りを撮るが、これは自撮り本『Selfish』の著者でもあるキム・カーダシアンを意識しているのだろう(もちろんこれは、カーダシアンがスナップチャットに投稿したテイラーとカニエの通話の証拠を編集した可能性をほのめかしてもいる)。
過去のテイラー・スウィフトが山のように積み重なるシーン
あらゆる時期のテイラー・スウィフトがごちゃ混ぜになって上に登ろうとするシーン。「We Are Never Ever Getting Back Together」のスウィフトや、ゴシックファッションのスウィフト(テイラー・スウィフト賞を受賞したときの衣装だ)、「レッド・ツアー」のスウィフト、「You Belong With Me」のスウィフトなど、さまざまなスウィフトが画面に登場する。
By Alyssa Bailey on August 28, 2017
Photos by Esquire UK
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊