ビル・マーレイの政治観を、正確に把握するのは常に難しいことです。

 彼はある日、人気TV番組『サタデーナイトライブ』でスティーブ・バノン役を演じたかと思うと、次の日には朝のテレビ番組に登場して法人税率の切り下げを褒めそやすといった具合だからです。そんなマーレイは、「ガーディアン」紙のインタビューに応じていましたが、彼がドナルド・トランプのことを本当はどう思っているかはいまだによくわかりません。

 現在67歳になるマーレイはインタビューのなかで、さまざまな話題に言及しており、トランプ大統領については「これまで誰も見たことがないような存在」と述べています。その一方で、ハーヴェイ・ワインスタインや#MeTooムーブメントに関する彼の見方は、トランプに対するそれと比べると、遥かに分かりやすいものとなっています。

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悪い意味でハリウッドで最も注目されてしまったのが、映画プロデュ―サーのハーヴェイ・ワインスタイン。

 2014年にワインスタインは、マーレイの奔放な生き方に刺激を受けて、自分の誤った行いを許すことにしたと発言したことがありました。

 「マーレイの生き方はある種の宗教のようなもので、そこでは人に対して好きなだけひどいことができるが、それでいて、人から愛され続けもする…」と当時、ワインスタインは語っていました。また、「私はそれまでひどいことをすると罪悪感を感じていたものだが、ビルに会ってからは気分がずっとよくなったよ」とコメントしています。

 この居心地の悪い発言をフリーマンから聞かされたマーレイは、ワインスタインに苦しめられたある友人についての話を語りました。

 「ハーヴェイは可笑しなことを喋ったね。誰かが数年前に口にしたことについて、文脈を無視して取りあげることは簡単にできるけど…、そうはいっても、やはり彼が口にしたことは、可笑しなことだと僕は思うよ」と、ビル・マーレイ。 

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いつの間にかチャーミングなおじいちゃんになっていた、ビル・マーレイ。

 「ハーヴェイ・ワインスタインについて、私がどう思うかだよね。彼が具体的になんで非難を浴びているのかが私にはいまだによくわからないのだが、それでも私は、あの状況に巻き込まれている人たちを何人か知っているし、その中の1人は、とても可愛らしい人だ。だから、その女性があの件(ワインスタインによるセクハラ行為の件)について話しているのを聞くと胸が痛む。本当に胸が痛む……私はあれについて苦痛を感じるし、その苦しみはまだ終わっていない」と、マーレイは語りました。

 マーレイは招待されていない結婚式やパーティーに、ひょっこり顔を出す癖のもち主であることはよく知られています。が、そんな彼が常に平静を保ち、人生を享受するためのコツを明かしてもくれました。

 「私はリラックスしたときは、もはや人間ではなくなっているんだ。背骨なんかも、ひとつもない状態と言ってもいいね。それは人間性の解体とも言っていいかもしれない。私は単なる有機体として存在しているだけになるんだ」と、マーレイはコメントしています。

 あまりにも短気で、「マーレイ台風(the Murricaine)」とかつて呼ばれていたこともある人物にとって、これは明らかに従う価値のある哲学ではないでしょうか。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。