全世界で注目されている『Marvel's Spider-Man』は、現実逃避にぴったりな1本です。

Spider-man, Superhero, Fictional character, Hero, Fiction, pinterest

(c)Marvel

Marvel's Spider-Man Is Wholesome and Good—And the Best Version of the Superhero We've Seen

 2018年6月、インソムニアック・ゲームズ(以下、インソムニアック)はファンからの期待が高まっていた「スパイダーマン」を題材にした新作ゲームについて、「プレイヤーが人を殺めることはできないものになります」と明かし、話題を集めていました

 犯罪との闘いを描くゲームにおいて、このような感傷的な態度は少々違うような気もします。現実的に昨今ではスーパーヒーローをより現実的に、さらには残酷に描いたり…と、トラウマのあるサイコパス的な殺人者を登場させるようにとコンセプトを再構築することが新たなトレンドになっているのですから…。 

 しかしながら現在、世界中で発売されている『Marvel's Spider-Man』は、親切であることを心地よく感じさせてくれる作品なのです。

 この爽快感あふれるPS4専用ゲームでしばらく遊んでみれば、皮肉っぽいポップカルチャーの時代精神から解放され、新鮮なほど真っ直ぐで健全な体験を楽しむことができるでしょう。 

 これは『Marvel's Spider-Man』がゲームをより熱中させることとなるストーリー設定に関して、「残念ながら底が浅いのです」ということを意味しているわけでは決してないのです。

 インソムニアックというゲーム会社は、スタン・リー氏とスティーブ・ディッコ氏の2人によって50年も前に生み出された古典的なヒーローをあらゆる方向からポジティブな面を引き出し、なおかつ、ダイナミックでエネルギッシュにアップデートを施したゲームばかりが排出し続けるゲーム会社ですから…。

 つまりこのゲームは、とにかく刺激を求めるアドレナリン中毒者のための遊び場にもなれるかと思えば、もちろん大人への成長過程で悩む若者にとっては、心の平穏を得られる場にもなるわけです。

 スパイダーマンのゲームでは、これまでにもいくつもの良作が作られてきました。ですが今回の作品は、その中でも間違いなく最高傑作と言えるのです。

最盛期のスパイダーマンを変幻自在に操ろう!

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Marvel’s Spider-Man – Be Greater Trailer | PS4
Marvel’s Spider-Man – Be Greater Trailer | PS4 thumnail
Watch onWatch on YouTube

『Marvel's Spider-Man』の中では、主人公がスパイダーマンになる過程は省いており、成長を遂げ最盛期にあるスパイダーマンを描いています。これは同じく傑作とされるロックステディ・スタジオの、「バットマン アーカム」トリロジーからヒントを得たのでしょう。

 このゲームには、長々としたチュートリアルや輪をくぐるようなトレーニングコースなどはありません。

 また、トム・ホランドやトビー・マグワイア(いずれも映画でスパイダーマンを演じた俳優)が声優を務めているわけではないものの、これまで映画に登場してきたスパイダーマンだと違和感なく感じられるのです。プレイヤーはお馴染みのスーツに身を包み、悪党たちを糸で捕らえてはスパイディ(親しみを込めたスパイダーマンの呼び方)の気の利いたジョークを楽しめるわけです。

 広大なオープンワールドの世界観は非常にダイナミックで、安定感のある「DualShock」コントローラーでこれまでになく直感的に動き回ることができるでしょう。 

 スパイダーマンに変身するピーター・パーカーについても、プレイヤーはその人柄を知って大好きになること間違いありません。このゲームでは、ピーターとして操作する時間もかなりあり、大人になった温厚なピーターをうまく操作し、多くの周りの人々と交流することになるのです。
 

Extreme sport, Stunt performer, Flip (acrobatic), Recreation, Stunt, Screenshot, Street stunts, Fictional character, Games, Skateboarding, pinterest

写真:コントローラーを動かせば、皆さんもスパイダーマンとの以心伝心が可能に。(c)Marvel  
 

Superhero, Fictional character, Costume, pinterest

写真:『Marvel's Spider-Man』の場面写真。ピーター・パーカーの部屋をじっくりと覗くことができるのです。(c)Marvel 

 
 このゲームのストーリー展開はサム・ライミが監督を務め、トビー・マグワイアがスパイダーマンを演じた2002年の『スパイダーマン』と重なるところがあります。この3部作では、若く善良ながら間抜けなところもあるピーターがマンハッタンを守るために奮闘する物語が描かれていました。

 ユーリ・ローエンタールが声優を務める今回のピーター・パーカーに関しても、同様のキャラクター設定になっています。

 このゲームの最も楽しいミッションには、「ディナーデートや誕生日パーティーの大騒ぎを収める」といったものもあれば、記憶に残っているものでは「ニューヨーク市衛生局のカスタマーサービス回線という現実的な恐怖に立ち向かい、紛失物を取り戻す」といったエピソードもありました。 

 インソムニアックは、このようなアプローチで悪党を殲滅するスパイダーマンを感情的に受け入れられるよう意識しました。スパイダーマンとしての自警行為の暴力とピーター・パーカーの誠実さや正義感を矛盾なく描いたのです。プレイヤーが自由にキャラクターを動かせる他のアドベンチャーゲームでは、面白半分に意味もなく街を破壊したり、市民を傷つけたりすることができますが、『Marvel's Spider-Man』は「ピーターを操作して正しいことをしたい」と思わせるゲームです。ピーターはトラウマや犯罪、ギャングの抗争などが複雑に絡み合うストーリーのなかでの道徳的手本とも言えるキャラクターでありつつも、これまでと同様内なる弱さも抱えています。このゲームは、誰かを殺したくなる類のものではないのです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
『Marvel’s Spider-Man』 “ヒーロー”トレーラー
『Marvel’s Spider-Man』 “ヒーロー”トレーラー thumnail
Watch onWatch on YouTube

 本作は間違いなく、『アーカムトリロジー』と徹底的に比較されることでしょう。

「有名なヴィラン(悪役)たちが絡むさまざまな伏線が張られたストーリー」、「私生活の自分とヒーローとしての自分の間で葛藤する主人公」といった要素を含む、オープンワールドのスーパーヒーローゲームですから、『バットマン アーカム・シティ』の怪しげな煙立ち込めるストリートを思い出さずにいられません。

『アーカムトリロジー』は極めてエレガントで出来のいいゲームだったので、バットマンゲームの最高傑作として歴史に名を残すことでしょう。ですが、ここで紹介しているゲームなら、その比較に関しては勝るとも劣りません。このゲームは、ロックステディがバットマンで成し遂げたことをマーベルの象徴たる「スパイダーマン」で実現したのです。 

 
 また、他のビデオゲームと比べれば、このゲームは皮肉をもてはやす現代からの痛快なる現実逃避とも言えるものです。

『グランドセフトオートV』、『ゴッド・オブ・ウォー』、『ファークライ5』のようなゲームで、人殺しのファンタジーを満たすのはやり場のない怒りを開放するためには貴重かもしれません。ですが、後味に違和感が残るのも確かです。

 特にこのような怒りが、ソーシャルメディアの隅々から湧き出てきたようなものであれば、なおさらそうでしょう。インソムニアックのスパイダーマンのような健全な体験は意外性があり、心が浄化される素敵な体験になるはずです。そして何より最高なのは、いい人でいることに疲れたときには、スパイダーマンとして悪党たちをぶちのめすこともできるのですから…。 

 日本でもCMが流れており、美しい画面とスパイダーマンの軽やかなアクションシーンに惹かれた人も少なくないのでは? ぜひとも本作をプレイしてみてください。

By Dom Nero on September 4, 2018
Photos by (c) Marvel
ESQUIRE US 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊