Netflixは2018年10月3日(米国時間)、Netflixオリジナルコンテンツ『ブラック・ミラー』の第5シーズンで視聴者が物語の展開を選択できるエピソードを1つ製作することを発表しました。このことにより、インタラクティブなテレビ体験を大きく前進させると注目を浴びています。

ディストピアドラマの最新シリーズでは、視聴者によって物語の展開やキャラクターの運命を決める選択が可能になるという試みも行っているようです。Netflixにとっては、子ども向けアニメ番組『長ぐつをはいたネコ: おとぎ話から脱出せよ! 』、『バディ・サンダーストラック: やるかも候補!』(どちらもかなりオススメです)以外では初となるインタラクティブ作品となります。

インタラクティブ作品は、長年テレビの未来の形として提案されてきました。ですが、実際に作られるようになったのは最近のこと。

2018年1月に放映されたスティーブン・ソダーバーグが手がけるHBO(米TV局)ドラマシリーズ『The Mosaic』(原題)は、そんなインタラクティブ作品の1つです。視聴者は専用のアプリをダウンロードし、自らが見たいエピソードを選びながら、およそ7.5時間のコンテンツを完成させることができる仕立てです。

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『ブラック・ミラー』シーズン1 第2話「1500万のメリット」の場面写真。

このアプリでは、枝分かれする物語に登場するさまざまなキャラクターの視点を切り替えることが可能で、視聴者は自らの想像力を発揮して次に注意を向けるべき手がかりを決めることができました。ソダーバーグは「The Verge」のインタビューのなかで、この番組について「単なるTV番組や映画ではありません。まったくの別物なんです」と語っています。

「まったくの別物」と聞くと、確かに新鮮でエキサイティングなものにも思えます。ですが、『The Mosaic』(原題)に対する視聴者や批評家の反応は両極端なものでした。

というのも、視聴者がこの番組で犯罪捜査のために調べることのできた証拠の量は膨大で、手に負えないような感情を抱かせ、「何かを重要なもの見落としているのではないか」という不安を助長したからです。

『The Mosaic』(原題)の作品紹介動画:

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Mosaic (2018) | Official Trailer
Mosaic (2018) | Official Trailer thumnail
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殺人ミステリーというジャンル上、ストーリー展開が様々なキャラクターの視点を追うというアイデアにマッチしていたことは注目に値します。ですが、HBOはその後、すべてのコンテンツを6つのリニアなエピソードで放映しました。

これでは「何のために選択可能にしたのか」、という疑問も浮かびますが。

Netflixは常にユーザーの反応を観察している

インタラクティブコンテンツの魅力を測るために、絶大な人気を誇る『ブラック・ミラー』のエピソードの1つを使うのは賢明なやり方です。これならNetflixは、新たなシリーズやコンセプトに賭ける必要はなく、シリーズのファンたちの反応を見ることができますので。

ゲームとエンターテイメントのギャップを埋めるNetflixの試みは、おそらく私たちの想像以上のものです。

というのも、同社のアルゴリズムは視聴者がこのストリーミングサービス上のコンテンツを見続けるように、あらゆる手を尽くすものだからです。同社は、作品の種類を7万6897種類もの独自ジャンルに分け、4000万人ものユーザーが次に見たいであろう作品を確実に発見し、推奨できるようにしています。

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Netflixは「『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を観ていたユーザーが、どのタイミングで見るのをやめたか」、あるいは「『ストレンジャー・シングス』の後にユーザーが何を見たがっていたのか」といったことを正確に記録できる企業です。このため、さまざまな視聴者が次に見たい展開を理解することにかけては、随一と言っていいでしょう。

人気ゲーム『マインクラフト』のインタラクティブな「ストーリーモード」バージョンも配信予定

『ブラック・ミラー』でインタラクティブ機能をテストする以外にも、Netflixは少なくとももう1本のインタラクティブ実写ドラマシリーズの製作決定が近づいています。

また、今年後半には人気ゲーム『マインクラフト』のインタラクティブな「ストーリーモード」バージョンも配信予定です。これは従来のビデオゲームとは異なるものの、ゲームとストリーミングのギャップを埋めるものになるといい、同社は「ゲームはますます映画的になってきましたが、われわれはこの作品をNetflix上でのインタラクティブなストーリーテリングとみなしています」と説明しています。

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TellTale Gamesは『ストレンジャー・シングス』と『マインクラフト』のビデオゲーム開発に取り組んでいます。

『マインクラフト』は、NetflixがTellTale Gamesと交わした契約の1つで、両社の将来的プロジェクトには『ストレンジャー・シングス』のゲーム化なども含まれています。このゲーム制作会社はコミック作品や『ウォーキング・デッド』などのTVシリーズのゲーム化で大きな成功を収めていましたが、最近は『ゲーム・オブ・スローンズ』のゲーム化でHBOにアプローチし、断られていたことも明かしていました。

そして、エンターテイメントを消費する最先端の方法で視聴者たちの注目を集めようとしている大手テクノロジー企業は、Netflixだけではありません。

2018年6月にFacebookがリリースした「Facebook Watch」は、視聴者が番組を見ながら投票やクイズなどに参加できるもので、「クリエイターとユーザー間のコミュニティ意識を高める」ことを意図していると言います。

「Facebook Watch」の場合、視聴中のコンテンツに関する何らかのコントロールを視聴者に与えることとは正確には違います。ですが、こういったシステムで視聴体験をより主体的なものにし、ソーシャルメディアやゲームでのインタラクティブな体験に慣れてきた若者たちの注意を改めて引きつけたいというのが、Facebookの狙いではないでしょうか。

ストリーミングサービスは視聴者に無限の選択肢を与えることで、視聴体験に革命をもたらしてきました。その選択肢をさらに広げることは、視聴者をより活性化させるでしょうか? あるいは、すでに情報過多に陥っている現代だけに彼らに強い倦怠感を抱かせる可能性もあることも考慮すべきでしょう。

Netflixはオリジナル作品に約1兆4700億円を費やすことを計画

Netflixは2018年、オリジナル作品に130億ドル(約1兆4700億円)を費やすことを計画しており、同社の作品作りは「質より量」になっているとの非難も受け始めています。

実際、インタラクティブコンテンツも人々に、TV番組の新たな形をアピールする話題作りのためのギミックの1つに過ぎないものかもしれません。ソダーバーグの『The Mosaic』(原題)は視聴者に「選択の幻影(illusion of choice)」を与えたとして批判されました。なぜなら、視聴者は単にさまざまなイベントの見る順番を選べただけであり、物語の成り行きに影響を与えることはできなかったためです。

シリーズを細かく区切って、どのエピソードを最初に見るかを選べるようにするだけでは、具体的に何かを得られたとは感じ難く、何を見逃すかに目が向いてしまうものです。

インタラクティブなテレビ体験は、今後エンタメ業界にさらなる大きな変化をもたらすことでしょう。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。