第69回エミー賞でも最多22 部門ノミネートされ、録音賞・視覚効果賞・インタラクティブメディア賞・メークアップ賞・ヘアスタイリング賞と計5 部門を受賞! 圧倒的なクオリティで高い評価を得ている超大作リミットレス・アクションサスペンス『ウエストワールド』。ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント「2018 年海外TV シリーズ ラインナップ発表会」で、映画評論家 ・町山智浩さんにお話いただいた本作の魅力をアメリカの最新エンタメ事情と併せてご紹介します。
 
 
2012 年から2017 年の5年間で制作された

新作ドラマ数の増加率は約680%!

町山さん:2017年に、地上波やケーブルテレビ、ネット配信(Netflix、hulu など)で制作されたオリジナルの新作ドラマの数は、なんと487本! そのうち、地上波は153本とチャンネル数が増えていないため大きな変動はないですが、ケーブルテレビはチャンネル数が多いこともあり175本、月額15ドル程の視聴料を支払うことで視聴できる放送局HBOでは42本、ネット配信は117本とものすごい数のドラマが作られています。15年前の2002年にはわずか182本でしたが、2012年から2017年の5年間で制作されたドラマ数の増加率は、これまたなんと約680%! と、約7倍近い数字となっています。また、各ドラマの製作費も日本とはケタ違い! 邦画では大作映画でも1本につき製作費約10億円前後なのに対し、HBOで放送されたTV シリーズ「ウエストワールド<ファースト・シーズン>」の総製作費は約60億円と、日本映画の1本の製作費を軽く超えています。さらに、<ファースト・シーズン>のエピソードの平均視聴者数が1250万人を記録し、ディズニー映画『カーズ』といった大ヒット作品でも大人・子供を含めた劇場動員数が約3000万人なので、有料チャンネルで会員数が多くないこと、そして成人しかみることができないことを考えると、すごい数の視聴者数を記録しています。   


もうアメリカでは、ゴールデンタイムという概念は存在しない

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町山さん:このように、アメリカのドラマ市場がものすごいことになっている背景には、いくつかの理由があります。まずは、視聴形態が大きく変化していること。アメリカでは、テレビをもたない世帯が増えています。昔のように家族が揃ってテレビを視聴することがなくなり、それぞれがスマートフォンなどのデバイスで自分が観たいものを観るようになっています。どこにいてもスマートフォンで視聴することができるため、通勤と帰宅の際に1話ずつ観ることで、1シーズン(10話)を1週間で見終え、毎週違うドラマをみる人が増えました。また、個々の生活形態も多様になってきているなかで、ネット配信のコンテンツであればいつでも視聴することができるため、放送時間というものが意味をなさなくなってきていて、アメリカではゴールデンタイムという概念は存在していません。  


テレビ史上最高のドラマ制作数を表す”ピークTV”という言葉が登場!?


町山さん:コンテンツが大きく変化しているということもドラマ市場に大きな影響を与えています。地上波では未成年やスポンサーなどに配慮し、放送倫理コードや通信法に縛られていて、かつ自主規制があります。ケーブルテレビも少し規制が緩い程度。そして劇場もアメリカ映画協会(MPAA)によって、暴力シーンなどに対する規制がかなり厳しくなっています。そんななか、HBOやネット配信では視聴料を払って見たい人だけがドラマを観るため、スポンサーや規制に縛られることなく、映画よりもコンテンツの内容が自由になっています。そして、とにかくドラマを制作して、失敗したら、すぐにやめるというスタンスなので、1 シーズンで終わってしまう作品もかなり多くなっています。3年程前から、アメリカではテレビ史上最高のドラマ制作数という意味の”ピークTV”という言葉が出てきています。ただ、毎年制作される数がどんどん上がっていて、そのピークが落ちないのです。今年も昨年から増え、約500本近いドラマが制作されると言われています。  


◇『ウエストワールド』とは!?

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町山さん:“ウエストワールド”とは、人間そっくりなアンドロイドたち<ホスト>が来場者である人間たち(ゲスト)をもてなす場所。<ゲスト>は自らの欲望のまま、ときには道徳に反する行動をも起こすことができる体験型アトラクションです。1日の入場料が約450万円と高額料金なので、株主や社長といった富豪たちが自らの欲望を満たすために来園し、<ホスト>に対して何をしても許される世界となっています。

  
◇インスパイアされたゲーム
「グランド・セフト・オート」とは!?

町山さん:本作は『インターステラー』『ダンケルク』の監督で知られるクリストファー・ノーランの弟、ジョナサン・ノーランと妻のリサ・ジョイが製作総指揮を務めています。ちなみに、アメリカのゲーム会社が制作した「グランド・セフト・オート」というロサンゼルスを舞台にした暴力や殺しなど何をしても許されるゲームがありますが、ジョナサン・ノーランとリサ・ジョイは、「それを現実化したらどうなるのか?」というところからインスパイアされ、本作の製作に至ったといいます。さらに、「銃で撃たれたり、殺される対象をアンドロイドにしたらどなるのか?」「殺されるアンドロイドの気持ちになったらどうなのか?」ということを考えたそうです。   

◇オールヌードを披露!キャストたちの体当たりな演技にも注目

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町山さん:HBO作品なので暴力・殺人・売春、なんでもありの世界観をそのまま表現していることで大人が楽しめる内容になっています。特に主人公の”ホスト”であるドロレスを演じたエヴァン・レイチェル・ウッドという綺麗な女優さんも、オールヌードを披露しています。また、”ホスト”たちは修理されるときに皆、裸になるので、男女年齢かまわずホストを演じるキャストたちはヌードを披露しています。

 
◇暴力シーンの素晴らしさと、時間軸のトリック

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町山さん:映画レベルのキャストが本当に素晴らしく、特に、エド・ハリスが演じる”黒服の男”は倫理やモラルのない世界で悪を尽くしている。彼の暴力シーンは素晴らしいです。また、クリストファー・ノーランは、『インセプション』『ダンケルク』などで複数の時間軸を同時進行でみせていますが、弟のジョナサン・ノーランも本作で時間軸によって視聴者を欺いています。   


◇音楽に隠された秘密

町山さん:『ウエストワールド』は、音楽も素晴らしい。娼婦やゲストが集う酒場で自動演奏のピアノ曲が流れるシーンでは、レディオヘッドやサウンドガーデンなど誰もが知っているロック曲ばかりが使われ、その曲が西部劇風にアレンジされています。また、The Rolling Stonesの『Paint it, Black』をオーケストラでオペラ風の演奏にアレンジした曲が流れる大虐殺のシーンは、かなり印象的な仕上がりになっています。


◇壮大なストーリーに今後の展開が見逃せない

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町山さん:実は人間の脳はかつて、「右脳と左脳は明確に分かれていた」という学説があります。右脳が抽象的に考えたことを、意識を表側に表現する左脳に伝える際、その信号が外部からの声のように聞こえていたそうです。そこから、”神の声”という概念が生まれたのではないかと言われていて、本作でもその概念が用いられている部分があります。

 
 …と、町山さんの解説によって、ワクワク感をそそられた方も多いことでしょう。今後、自我に目覚めたアンドロイドたちと人間の間で、どのような壮大なストーリー展開になっていくのでしょうか? これは見逃せない注目作です。


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●レンタル DVD Vol.1~5 ●デジタルセル・レンタル配信
※R-15:本作には、一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています。

発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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