本誌にもたびたび登場し、着こなしを披露しているスタイリストが
センスがよいのは当然。しかし、撮影現場にはスタイリスト以外にも
独自の審美眼をもった人たちがたくさんます。
そこで今回はスタイリスト以外のクリエイター11名の着こなしと
最近気になるあれこれを教えてもらいました。
Photograph/Yoko Ohata
Text/Akiko Jimbo
【フォトグラファー】 田島一成さん
退屈になりがちなモノトーンスタイルを
大胆シルエットのバランスで遊ぶ。
「外出していることが多いので、部屋着というものをもっていなくて、洋服は外着かパジャマの二択。服で最近ハマっているのがG A NRYUのパンツ。極端なサルエルシルエットだけど股上も深いから、腰ばき世代じゃない僕としては腰まわりが落ち着くのでよくはいています。ランバンのブルゾンはショート丈で使いやすいので気に入っています。TシャツはMA SK Z、サングラスはトム フォードでスヌードはバーバリー。強弱のあるコーディネイトが好みなのかもしれませんね」
写真上から/ 【川元陽子さんの絵画】 写真の世界とは違った、現代美術が好きで、特に絵画に惹かれます。この川元陽子さんの絵は、ニューヨークの博物館に展示された剥製を描いたもの。写真のようなタッチで、ややシュールな色彩感覚がいい。リビングに飾っています。 【戸隠そば「おびなた」】 そばが好きで、いろんな所から取り寄せては試した結果たどり着いたのがコレ。なんといっても風味とのどごしです。いつも段ボール2〜3箱分をキープしています。 【コム デ ギャルソン・オム プリュスのバックパック】 通常の1. 5倍サイズは、体が大きくてたくさんのモノを持ち歩く僕にはちょうどいいサイズ。ちょっとしたことだけど、レザーの端切れをジップにつけてみたら、格段に使いやすくなりました。
【フォトグラファー】長山一樹さん
ブランドやシルエットに自分の枠を
決めることでスタイルが見えてくる。
「服で冒険するのが苦手なので、トレンドに飛びつくことは少ないんです。コートはドリス ヴァンノッテン、カーディガンはプラダ、やジル・サンダー、タートルネックはトゥモローランド。パンツは最近気になるウミット・ベナン。靴はオールデン、ハットはボルサリーノです。信頼できるブランドから、シルエットのきれいなスタンダードなものを選んでいます。色はネイビーとグレイのものがほとんど。自分のなかでスタイルの幅を決めると、ワードローブにも統一性が出てくると思います」
写真上から/ 【トム フォードのフレグランス】 ボトルデザインが気に入って購入しました。特に香水好きではないんですが、人と会うときにつけて「あ、いい匂い」って、言われたいだけなんです(笑) 【アダムキメルのジャケット】 ウール素材のアンコンジャケットのなじむ感じが気に入って1年前に購入。動きやすい服でいたい撮影現場でもよく着ています。ブランドが休止したのは残念ですね。 【ジル・サンダーのカシミアパーカ】 グレイのパーカって部屋着っぽくて着なかったんですけど、これはカシミア素材ですごく上品。ジャケットをカジュアルダウンするときにインナーに着ています。 【カトラー アンド グロスのアイウエア】 自分が好きな形が揃っているので、アイウエアはカトラー アンド グロスと決めています。
【フォトグラファー】 中川真人さん
日本舞踊での和装で
和の美的センスを再認識。
「6年前から日本舞踊を習っていて、この秋国立劇場で初舞台を踏みました。これを機に着物一式を新調。和装は所作にも気を遣うので、日本人ならではの美意識や作法をあらためて意識するきっかけとなり、それが仕事でも生きています。今日のコートはメゾン マルタン マルジェラ。ニット地のダッフルというのが気に入っています。ニットとスカーフと靴はグッチ。デニムは最近好きなブランドのアットラストのものです」
写真上から/ 【着物と帯と扇子】 日本舞踊の初舞台を機に思いきって購入した染色家・羽渕祐宏さんの着物と帯。辻が花という絞り染めの手法で染められた繊細な色に惹かれて。写真下は日本画家・松井冬子さんの絵入りの扇子。 【th e LITTLE PENGUINの白ワイン】 学芸大学にあるイタリアンレストラン、チニャーレでいただけるオーストラリアの白ワイン。もともと白は苦手だったんですが、しっかりとした味があまりにも美味しくて、夏は毎週お店でこればかり飲んでいました(笑)。 【シスレーのコスメ】 きっかけは写真のリップバームから。男性用の乾燥肌向けの乳液も自分の肌に合っているのを実感。リピートして使っています。
【ヘア&メイク】 大谷亮治さん
デザインされすぎていない
日常使いに心地よいものを。
「渡米していたとき撮影で見たDidier Mallg eのシャツ姿があまりにもかっこよくて、それ以来、僕も仕事ではシャツしか着なくなりました。ほぼ毎日シャツスタイルなので、今日着ているエトセンスのような、プレーンななかにちょっとした遊び心があるものを選ぶようにしています。カーディガンもEmmaculate、パンツはエトセンスのもの。メガネは白山眼鏡店。デザインされすぎてないのに、どこかセンスを感じさせるアイテムに惹かれますね」
写真上から/ 【アーツ&サイエンスのほぼ日手帳】 “ほぼ日”は仕事でも関わりがあるのですが、手帳を買ったのは今回が初めて。これはアーツ&サイエンスとのコラボバージョンで、中はすべて英語表記になっているのが特徴。各ページに有名人の名言が載っていたり、鳥、花、コーヒーの図鑑なども。毎日めくるのが楽しみになります。 【アーティストのMINORの絵】 アーティストMINOR の作品。よく見るとMONING (吐く)になっていて、毒っ気もあるユーモアセンスが好き。 【エトセンスのシャツ】 今いちばん好きなドメスティックブランドが渋谷にお店があるエトセンス。シャツ、ジャケット、パンツとトータルで着ることも多いです。
【アートディレクター】 関田森彦さん
“変えないスタイル”が
僕のスタイル。
「洋服は自分にとってはユニフォームのようなもので、基本的なスタイルは昔からほぼ変わっていません。今気に入っているのはこのルイスレザーのライダースブルゾン。歳をとってからのほうが似合う服ってあるんだなと実感しました。同じ形の古着ももっていて、その日の気分で着ています。デニムはまたはきたいと思ったA .P.C.、ニットはアレッサンドロデラクア、シャツはインディヴィジュアイライズドシャツのもの。コンバースのスニーカーも長く履いていますね」
写真上から/ 【DIY関連の写真集】 リノベーションがメインの建築家バーバラ・ベスターやRIZZOLI社から出版された写真集、DIY精神を感じるトム・サックスの作品集。趣味のDIYはもちろん仕事のグラフィックデザインの参考書にもなるので何度見返しても飽きません。 【手作りの帆布トートバッグ】 帆布のトートバッグに何かやってみたくて、白のジェッソを塗ってみたら意外といい風貌に。4回も上塗りしているので、表面は固くなりましたが、その“味”が気に入っています。 【マキタの電動ドリル】 電動工具にも凝っていて、電動ドリルといえば日本が誇るマキタですね。自宅の棚や机はこれで作っています。
【ヘアスタイリスト】 後藤 順さん
きれいめに合わせられる
デッドストックを有効活用。
「ミリタリーやワークテイストのアイテムが好きで、ブランドや薀蓄にこだわりはないです。古着は自分に似合わないので、軍モノはデッドストックだけと決めています。デッドストックならどんなブランドとも合わせらます。靴もデッドストックで、原宿のメイドインワールドで購入。コートとシャツはラグス マックレガー、デニムはアットラスト、ベルトはメゾンマルタン マルジェラ。全アイテムのトーンをダークカラーで統一することで大人っぽくなります」
写真上から/ 【ダマンの紅茶】 5年前までロンドンに住んでいて、もともとはコーヒー派だったんですが、これに出合って紅茶を飲むのが習慣になりました。「ダマン」は歴史あるフランスの紅茶のブランドで、このフルーツフレーバーが好きで、ハチミツを入れて毎朝飲んでいます。 【サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリポット】 誕生日プレゼントに友人からもらったポプリポット。フタを閉めたままでも部屋中にいい香りが漂います。香りが長く続くのも気に入っています。 【デッドストックのミリタリーセーター】 このデッドストックのセーターもメイドインワールドで購入。このV ネックの形が気に入って、黒、紺、エンジの3色を大人買いしました。
【フォトグラファー】 Hiro Koimuraさん
モノトーン&スキニーが
いちばん自分らしいスタイル。
「スタイリストをやっていた当時は奇抜な服ばかり着ていましたが、今はモノトーンでスキニーなものばかり着ています。このディオールオムのロングコートは、好きだったエディ・スリマン時代のもの。とてもお世話になった方から譲っていただいた、思い入れのある一着です。ジレはビームス、シャツは昔のコム デ ギャルソン シャツ、パンツはラングラー、靴はドクターマーチンの8ホールです。モード、スタンダード関係なく、トーンを揃えるとまとまって見えます」
写真上から/ 【Guy Bourdinの写真集】 ニューヨークで活動していたときに、そこでルームシェアしていたクリエイターの友人がプレゼントしてくれたもの。ギー・ブルダンは僕が尊敬する写真家の一人で、彼の撮影現場でテストとして撮られた門外不出のポラロイド写真が収められている写真集。 【RICOHのカメラ GR 1】 アシスタントになって初めて買ったカメラがこれ。いつもポケットに入れて目にとまった日常風景を撮っています。 【マサイ族のブランケット】 撮影でケニアに行ったとき、マサイ族から直接買った一枚布のブランケット。みんなこういうビビッドカラーの布をまとっていて、その配色の美しさにやられました。
【ヘアスタイリスト】 KANADAさん
40代になって気づいた
自分に似合う服の変化。
「若いころはモードやストリートなどいろいろ着ましたが、40代になった今、しっくりくるのがアメカジ。ライダーズならショット、スウェットならチャンピオンみたいな餅は餅屋的な価値観というか、“元祖”のもっている強さをあらためて見直しています。また3年くらい前から気に入っているのがシュプリーム。スタンダードを知ったうえでの遊び心の加え方が絶妙だと思います。今の自分にちゃんと似合う服を、肩肘はらずに着るのがいいと思いますね」
写真上から/ 【宮武食品の讃岐うどん】 香川出身なので讃岐うどんにはうるさいです(笑)。宮武食品のうどんはしっかりしたコシがあって、とにかくうまい! 一度に20袋くらいまとめて取り寄せしています。夏はざる、冬は釜上げにして、すだちをかけるのがオススメ。 【3ブランドの霜降りスウェット】 霜振りのスウェットは僕のスタンダードのひとつ。チャンピオン、ラルフ ローレンは20代のころから着ていて、それらを絶妙にアレンジしたシュプリームもお気に入り。 【バンソンのウエストポーチ】 現金、免許証から名刺と毎日持ち歩くものを入れているバンソンのウエストポーチは、20代から色も形もまったく同じもの使い続けて、これが2代目。
【フォトグラファー】 石坂直樹さん
デザイナーのクセが控えめな
スタンダードな服が気分。
「オーセンティックでスタンダードなデザインにデザイナーのクセがポイントで表れている服が好きです。今日のブルゾンもリックオウエンスなんですがシンプルななかにもデザイナーらしさがあるので気に入っています。P A M のスウェットパンツもほどよいクセのあるデザインが気に入って色違いも購入。職業柄フレキシブルな動きに対応できる服かどうかも選びの基準になっています。それは昔からずっと変わってないですね」
写真上から/ 【インケースの別注ガジェットケース】 好きな写真家アリ・マルコポロスがインケースとコラボして作ったカメラケース。きれいなライトグレイの色も気に入っています。ライカ、i P a d 、サングラスなど、旅に必要なものを入れて、これひとつで動いています。 【トムフォードのニット】 こういうオーセンティックなローゲージのケーブルニットで、ほどよくモードなテイストが入ったものってなかなか見つからないので、ひと目見て衝動買いしました。 【メルセデスベンツ ゲレンデヴァーゲン】 ゲレンデはこれで8台目。なんといってもこのスクエアな形でしょう。オールブラックでオフロードのタイヤを載せたりと、細かい部分まで自分流にカスタム。
【フォトグラファー】 高木康行さん
服はブランドではなく
合わせやすさで選ぶ。
「もともとスタイリストだったので、遊びのあるコーディネイトが好きです。ブランドで選ぶというより、気に入ったものがたまたまそのブランドだったということが最近は多いですね。今日はts(s)のジャケットに古着のチェック柄ヴェスト、シルエットが気に入ったH & M のパンツで靴はスクエアトウのクラークス。ネクタイはマクミラン、つばの大きいキャップはストールのもので、トラッドテイストをミックスするのが今の気分に合っているんです」
写真上から/ 【ハミルトンのドライバーズウォッチ】 ハンドルを握ったときに見えるように、フェイスが手首の横にくるデザインが特徴的なハミルトンは15 年くらい前に出た限定品だと思います。 【ニューバランスの990】 ここ2、3年続いているスニーカー熱。スポーティさもありながら合わせやすい9 9 0を最近よく履いています。 【上泉秀人の湯呑み】 友人がやっている日用品店「東青山」で出合ったのが、この湯呑み。“しのぎ”という一本一本手描きでデザインする手法が素敵だなと思って。マグカップもいいけれど、たまには湯呑みでお茶を飲むのもいいもんですよ。
【ヘア&メイク】 矢口憲一さん
安くていいもので作った
ゆるトラッドスタイル。
「安くていいものでまとめたのが今日のスタイル。コートは御徒町の中田商店で買ったアメリカ軍のユニフォーム、ニットはJ . クルー、パンツは神保町のさかいやスポーツで買ったスウェット感覚ではけるastri のローデンウールのもの。シャツはニューヨークで買ったブルックス ブラザーズで自分に合ったサイズが選べたのがよかったです。靴はクラークス、メガネはモスコットで、ゆるめのトラッドスタイルに。お金をかけなくてもお洒落ってできるんですよね」
写真上から/ 【シュプリームのキャップ】 帽子はシュプリームが最近のお気に入り。茶目っ気があるのに大人が被っても似合うし、デザインが豊富なのも気に入っている理由です。 【イエガーマイスターのリキュール】 ドイツのリキュール、イエガーマイスターはアルコール度数は35 %と高めですが、薬草が入っていてほどよく気分が上がります。友人たちと外で飲むときも、これをまず飲んでから騒ぎます(笑)。 【柴又・帝釈天やぶ忠の豆板】 妹が柴又でやっている蕎麦屋やぶ忠で売っている、ピーナッツのおこし。ヨーロッパ菓子のような香ばしさがあって、クセになる美味しさです。