毎年イタリア・ミラノで開催されている
世界最大規模の眼鏡展示会、「MIDO(ミド)」、
2017年は2月25日~27日の3日間行われました。
その中日である2月26日には、世界一の
眼鏡店を選出する「BESTORE AWARD 2017」も開催。

そこで見事最優秀賞に輝いたのが日本の
「GLOBE SPECS 代官山店」。その授賞を祝して、
代表の岡田さんに話をうかがいました。

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「BESTORE AWARD 2017」にて、MIDOプレジデントのCirillo Marcolin(チリッロ・マルコリン)さんから最優秀賞を受け取るGLOBE SPECS代表の岡田哲哉さん。(C)@MIDOExhibition

 GLOBE SPECS

 2017年2月、世界最大のメガネ展示会「MIDO(ミド)」中に開催される「BESTORE AWARD 2017」において、日本を代表する眼鏡店「GLOBE SPECS(グローブスペックス)代官山店」が“世界一のメガネ店”の栄誉に輝きました。そして「グローブスペックス」の岡田代表は、その会場でMIDOプレジデントであるチリッロ・マルコリンさんより直々に最優秀賞の盾を受け取りました。

 「グローブスペックス」といえば1998年に渋谷店を開業して以来、岡田代表を中心として、“メガネはファッションアイテムのひとつである”ことを推しすすめてきました。「グローブスペックス」によるこれまでの尽力があってこそ、今では当たり前のようになっている「メガネ=ファッション」ということを認知させたと言って過言ではないでしょう。

 そんなメガネ界の功労者が、2016年、東京・代官山に移転オープンさせたこ「グローブスペックス代官山店」がこのたび世界的に高く評価されたということは、実に嬉しいニュースです。

 授賞した「BESTORE AWARD 2017」最優秀賞の選出方法はというと…。まず、世界各国1000店以上が応募する中から、第一次審査として15店舗に絞り込まれます。そして、その15店舗に対して各国のメガネ店事情に詳しい業界誌編集者や有力ブランドの代表者、さらに店舗デザインの専門家などから構成される計8名のインターナショナルな審査員によって、第2次審査が…。そして、そこで当該の年の優秀賞として3店舗を厳選され、同時にその3店舗の中から、1店舗を最優秀賞として選出する運びとなっています。 
 

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「BESTORE AWARD 2017」にて、最優秀賞を受け取るGLOBE SPECS代表の岡田哲哉さん。(C)GLOBE SPECS

 
 審査される内容に関して言えば、まずは独自性と新規性に溢れるアイディアがある店舗デザインであるかどうか? そして、時代のトレンド性が加味されているのか? 唯一無二の特徴ある空間が作られているのか? 商品構成に大きな特徴があるか? ユーザーにアピール性の高いVMDを実行できているか? などなど。それらすべてをクリアし、最終的に他の店では経験できない感動あるショッピング体験ができる店であるかが判断され、最優秀賞は選出されるのです。そんな極めて厳しい審査基準をクリアし、見事、2017年の栄冠に輝いたのが「グローブスペックス代官山店」だったのです。


●お問い合わせ先/
グローブスペックス
TEL 03・5459・8326
http://www.globespecs.co.jp/


寡黙にも「世界一」を目指し続けた岡田代表の功労が認められた日でも…。

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2階の階奥には、顧客でもあるアーティストによる絵画が壁一面に。右側は検眼コーナーになります。(C)@MIDOExhibition

 
 「グローブスペックス」は、1998年に東京・渋谷でスタートしました。それまで大手の眼鏡会社に勤務していた3名が、 「もっとメガネを楽しく、オシャレなアイテムとしても提案して行ける新しいメガネ専門店を!」という志をもって店舗を始動。その3名の中でも、各国のこだわりをもったクォリティの高いブランドとの交流も多数あった岡田哲哉さんが代表を務め、それまでの海外勤務経験とそこから得た知恵により、数多くの日本初上陸ブランドを導入することに…。それが大きな話題ともなり、開店当初からメディア露出も多数。次第にファッション界への影響力を拡大していったのでした。

 その後もそのパイオニア精神に陰りを見せることなく、海外での直接買い付けによるブランドの発掘や大手セレクトショップやファッションデザイナーとのコラボレーションなども継続的に企画していく「グローブスペックス」。そこでこの機会に、なおも日本のメガネ界を牽引する代表・岡田哲哉さんに直接話をうかがいました。
 

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「グローブスペックス代官山店」にて、岡田代表をインタビュー。

 
編集部:「BESTORE AWARD 2017」最終優秀賞を受賞しただけあり、ここ代官山店舗の作りは非常ユニークですね。 

岡田さん(以下、敬称略)ニューヨーク、ポートランド、フィラデルフィア、パリ、ウィーン、ロンドンなど、世界各国のヴィンテージの家具や小物を厳選して、グローブスペックス独自の世界観を作り上げるよう努力しています。家具・照明だけでなく、古いコミックやアンティークのテニスラケット、レコードプレイヤーなど、私自身の趣味の一部とも言えるのですが、良質のライフスタイルが垣間見れるような空間にしたいと思っているのです。店内に入った途端、自分の部屋に帰ってきたような気持ちになってほしいとも思っていますので…。それでいて、商品を販売するだけを目的にしていません。いまではメガネもファッションアイテムのひとつとして認識されるようになりましたが、微妙な調整が必要なツールでもあるのです。なので、視力測定には徹底したこだわりをもち、実践しています。それが気に入ってくれたのか、遥々アメリカやヨーロッパから訪れるお客さまも数多くいらっしゃいます。


編集部:今回のアワードへの出展は、どのように進めていったのですか? 

岡田応募したのは、イタリアの業界誌の編集者にすすめられたからなんです。写真や書類を提出して審査してもらいました。今回2位、3位になったのは、オーストリアとフランスの店です。この賞ではこれまでヨーロッパ系の店ばかりが選ばれていましたが、今回、グローブスペックス代官山店がアジアで初の授賞になったので、たいへん光栄なことだと思っています。彼らの選考基準のひとつは、店のコンセプト。何にこだわっているかという視点を重視しています。新しい店が受賞することが多く、革新性も問われているようですね」 

 
編集部:ご自身で、この授賞の決め手はなんだと思っていますか?

岡田メガネの品揃えも含め、お客さまにとって他では得られないショッピング体験ができることも選考の重要な基準のひとつになっています。その空間作りで、他店とは違う独自性を感じとってくれたのではないでしょうか。前にも述べたようにグローブスペックスの空間は、私がいろいろな国・都市を巡って買い集めたアンティーク家具を自己流に置くことで構成されています。世界の優れた店というのは、主に建築家が設計した内装やインテリアで成り立っています。いわば、そこには “建築家の仕事”で仕上げられているのですが、グローブスペックスはちょっと違うのです。もちろん、何人かのクリエイターの方たちからいただいたアイデアをもとに作り上げた内装、そして、インテリアも多くあります。ですが、その参加していただいたクリエイターの方は皆、昔からグローブスペックスの顧客でもあったのです。言ってみれば、お客さんと一緒に作りあげた店でもあります。互いに力をあわせて、理想の空間を作り上げていったことが認められたのだと信じでいます。そして、これからも進化し続ける店でありたいとも考えています」


●お問い合わせ先/
グローブスペックス
TEL 03・5459・8326
http://www.globespecs.co.jp/


誰かのために役に立つファッションアイテム?その解答が、私の場合「メガネ」だったのです。

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入口を入ると、温もりを感じさせる無国籍な空間が広がっています。ヴィンテージのマッキントッシュの真空管アンプ、そしてヴィンテージのJBLも…。そこから流れ出す心地いいジャズにスウィングしながら、アドリブの効かせた大人の買い物を存分に楽しくしむことができるでしょう。

 
編集部:このお店の雰囲気ばかりでなく、岡田さん自身のスタイルに関してもかなりのこだわりを感じるのですが、そのお考えはどのように養ってきたのですか? 

岡田そうですね…恐らくファッションに関しては、ティーンネイジャーの頃に身についたのだと思います。中学から大学までは、青山のフロムファーストの近くの小学校の裏に住んでいたんです。当時、近所にヴァンヂャケットがあって、それがその時代の流行を作り出していました。あとアルファキュービックとか…。それをほぼ目の前で見ていたので、そんなスタイルをすることが普通のことだと、小さい頃から思っていたところはありますね。時代の最先端のファッション、そしてのそのバリエーションの豊かさを実体感として刷り込まれたということになります。高校では本当はスポーツがやりたかったんですが、都内の高校は校庭が狭いので…。授業が終わったらすぐ、六本木に足を運んで部活動でしたねぇ(笑)。青山墓地抜ければ、15分ほどで六本木ですから。不良というよりは、体育会系のダンス部と言ってほしいぐらい、真剣に踊っていました。


編集部:最先端のファッションを、自然に身に着けていたわけじゃないですか。なのにファッションではなく、メガネに傾倒していったのはなぜですか?

岡田別に、もともとメガネがすごく好きだったわけではないのです(笑)。うち家系はすごく堅い職業についている人が多い家系で、弁護士や大学の教授、官僚などを生業にしているものが多かった…。なので自分も、すごく堅い道に行くのが当然だと思っていました。事実、自分が最初に入社した先は都銀だったんです。でも、やっぱり肌になじまず、すぐに辞めてしまいました。やはり、ファッションにはずっと関心があったのです。でも、そこに流行り廃りだけは終わらない、確固たる存在価値が欲しかったんだと思います。そうこう悩んでいるうちに、メガネというアイテムの存在に気付かされたのです。当時、メガネは決してファッションと結びつくものなどではなかった…。そこで私は、メガネは身に着けるもの=ファッションに結び付けるべきものではないか…と考えたのです。


編集部:メガネは好きではなかったけど、使っていたというわけですね。

岡田はい、目が悪かったので…。本当はコンタクトを使用したかったんですが、ドライアイですぐボロっと落ちてしまうので仕方なく眼鏡をかけていたという感じです(笑)。最初、メガネは道具=ツールとして見ていました。メガネには医療的な側面や光学、職人気質的なものがあるじゃないですか? なので、ファッションとはかけ離れた存在だったので、自分自身思いつかなかったのです。ですがあるとき、ふとシンクロしたわけです。しかも、困っている人のための道具…そこに確固たる存在理由も見つけたわけです。よりよりメガネを提供することによって、目が悪くて困っている人をもっともっと助けられる…というところに仕事のやりがいを感じた次第です。

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ヨーロッパのメガネ店を思わせる、味わい深い佇まい。扉には、NYのロックフェラーセンターで使われていたアンティークのメタルの正面扉を使用。(C)GLOBE SPECS

 

編集部:…ということは、「メガネをファッションとして楽しんでほしい」と思うだけでなく、きちんとお客さまの目に合ったメガネを提供することも大切だと考えているのですね?

岡田はい。それはメガネというアイテムを扱っている以上、一番大切だと思っています。私たちは大前提として、自らがしっかりと責任をもって保証できる検眼の上に、楽によく見えるメガネをつけていただきたいと思っています。その上で、純粋にメガネをファッションとして楽しんでいたければ、と思っているのです。実際にうちにいらっしゃったリピーターのお客さまの中には、「どこに行ってもダメだったのに、ここで初めてよく見えるメガネに出会えた」と言ってくれる方も多いのです。現在のグローブスペックスは、「ファッション性ばかりを打ち出しているメガネ店だ」と、イメージされている方も多いかもしれません。それはそれで、とても有り難いことです。でも、検眼などレンズ選びを中心としたツールとしての課題である機能性へのこだわりも、真摯に具現化しようと日夜努力しています。


編集部:でも、それは意図的に表現しないようにしていたのでは?とも思うのですが…。

岡田はい、その通りかもしれません。それでいいとも思っているのは確かです。メガネがメガネとして認められるには、そうした機能面の充実があってこそ成り立つものだと思っていますし…。まず、それを皆さんに感じとってもらわなければ、メガネという存在価値が認められたことになりません。さらにはグローブスペックスの目標である、「人の役に立つメガネ作り」の第一歩を歩んだことにならないと思っていますから…。今回のような賞の授賞や、日本でも多くのメディアに取り上げていただいているといういことは、そんな大前提をクリアした上でファッション性という付加価値まで皆さんに認めていただいたのだと…と思っています。もちろん、お店に来ていただきメガネをご注文していただければ、自然とこの両面へのこだわりに関してご理解していただけると信じておりますが…。


●お問い合わせ先/
グローブスペックス
TEL 03・5459・8326
http://www.globespecs.co.jp/


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凛々しい表情の中にも、時折見せる柔らかな笑顔が素敵な岡田代表。頼れる兄貴的存在です。


編集部:これまでの岡田さんのお話しを聞くに、このたびの「BESTORE AWARD 2017」最優秀賞授賞は非常に喜ばしいことではなかったのではないですか? 

岡田はい。とても有り難いことであり、生意気ながら自信を得ることもできました。と同時に、「これがゴールではない」と思いを新たにすることもできました。今後も、これまでの志を大切に守りながら、さらなる発展を目指していきたいと思っています。きちんとお客さまの目に合った、楽に見えるメガネを提供し続け、その上でファッションとしても楽しんでいただけるよう努めていきたいと思っています。


編集部:日本のメガネ屋さんの多くが、まだまだ役に立つ道具してのメガネであることを主体に考えているかと思うのですが、どうですか? とはいえ、可能な限り安く提供しようというお店も目立ってきています。つまり、日本のメガネ屋さんはこの両極のお店で占められているような気がするのですが…?

岡田以前は両極のような感じだったかと思いますが、今はうちのような形態のお店は増えてきていると思いますよ。メガネも、ファッション性というのがひとつのクオリティになってきている気がします。お客さまもそこを求めている人が多いはずです。なにせ顔の中心で、アクセントとなりえる重要な部分を飾るものじゃないですか!? 洋服との合わせもありますけど、それ以上にその人のパーソナリティや社会的な立場の印象までも、メガネは実際に左右します。ある意味、服より重要と言えるかもしれませんね。


編集部:そうですね。第一印象は、服より先に顔から始まりますものね!?
 
岡田そうです。なので、グローブスペックスでもお客さまには、必ず「どんな仕事なのか?」と聞かせていただきます。その上で、「柔らかく優しく見えるのがよいのか?」、「シャープで説得力があるように見えるものが良いか?」などなど、さまざまな問診も行った上で、その人に望ましいイメージでメガネを作るようお手伝いをしているわけです。 
 

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編集部:なるほど。では、最後の質問です。人の顔にとってメガネが重要であるように、お店にとっては何を重要だと思っていますか?

岡田その解答を引き出すには、グローブスペックスでお客さまに質問するのと同じ内容で、自問自答すればいいですね(笑)。「グローブスペックスはどんな仕事なのか?」、その答えは言わずもがな、メガネを販売するお店です。と、同時にメガネをかけることの喜びを提供していきたいと思っています。なので、次の「どのように見えるものが良いか?」という質問の答えがすべてになります。「お客さまに楽しんでいただける空間でいたい。そのためにも、期待と信頼が得られる面構えにしたい」と思っています。そして、「その期待を裏切らない、丁寧でこだわりを感じさせる雰囲気」を保つようにしています。


編集部:すみません、もうひとつ。今後はどういった方向を考えているんでしょうか?

岡田そこはまだ企業秘密ですね(笑)。今後は、販売という現場にもどんどんAIが導入されていくかもしれません。でも、ことメガネ販売に関しては、エモーショナルな部分がまだまだ重要だと考えています。その点に関して言えば、グローブスペックスはAIには負けないと自負していますし…(笑)。納得とか感動とかって、エモーショナルな部分でできているじゃないですか。ファッション性の手前にある道具としての堅い部分が重要で、何が困っているとかその人が表現できない部分というのがありますよね。それをその人の目を見ながら、コミュニケーションを交わすことによって臨機応変に対応していく…、こちらから引き出してあげることが大切なんです。そのやりとりの中から、本当の数値を探し出すのが私どもの仕事だと思っています。お客さまに「そういえばそうなんだよ」と、言っていただいたときはうれしいものです。ご自身で気付いていないところを気付かせることができればと、いつも願ながら接客させていただいています。それは視力に関しても、ファッション性に関しても…。

以上



●お問い合わせ先/
グローブスペックス
TEL 03・5459・8326
http://www.globespecs.co.jp/

Photograph & Text/Zion Utah
編集者:小川和繁