それぞれが注力してもらいたい州に行っては、選挙キャンペーンを注力するのは有名な話ですよね。そこで『エスクァイア US』のエディターは、2016年11月に行われる大統領選に立候補した11人の候補それぞれのファッションを取材し、徹底分析しました。
スーツのサイズが合わないだけでも大変なことになるわけですが。オバマ大統領が去年、カーキの服装を選んだときは民衆にそのカラーチョイスがプレスブリーフィングの内容(ISISの脅威)に相応しくないとして叩かれました。
ノーマン・リア・センター(南カリフォルニア大学内にある研究所で、どのように国内や国外のエンターテインメントが社会に影響を与えているかの研究を行っている)の副理事であり、南カリフォルニア大学のメディア学教授でもあるジョハンナ・ブレイクリー氏は、政治的ユニフォームについて「大多数の政治家が着ているのが、保守的な色合いであまり高価すぎないスーツです。でも、これは政治家というものが目立ち、注目を浴びることが大前提の存在であることを考えれば、実に奇妙なものである」と定義しています。明らかにオバマ大統領は、この定義を知らなかったことでしょう。
人はファッションスタイルを用いて自分がどのような人物なのか、また自分のことをどのように知覚・認識して欲しいのかを相手に伝える役割があるのです。そんななか、ジョージ・H・W・ブッシュ前大統領のおかしな靴下の画像がネットでお祭り状態になってしまう昨今、政治家たちは他の人と同じような服装をしたくないと考えているのです。「私が思うに、政治家たちは本来の性質に反して、自己陶酔的になってはならないという面白いパラドックスがそこにあると考えています」と、ブレイクリー氏は語っています。
またブレイクリー氏は、「選挙演説のときもパンケーキを振舞っているかのごとく、どこか小さなカントリーフェアにでも溶け込もうかとしているように見受けられる立候補者が多いと述べています。これは(有権者たちを)反映し、代表しようとする試みなのです」、と話しています。なぜなら、立候補者の誰もが、自分を「自惚れ屋」などと思って欲しくはないからに違いありません。
女性の皆さんは、声をそろえてこう言います。
「外見にこだわりすぎる(または全くこだわらない)ってのは、リスクを負うことになるのよ」と。ミシェル夫人はホワイトハウスの晩餐会で、米国ブランドでなく英国デザイナーのアレクサンダー・マックイーンがデザインしたドレスを着ていたことで非難を受けたことがありました。ヒラリー・クリントン氏のパンツスーツに対しても等しく、馬鹿にする意見と賞賛される意見の2つに分かれます。
そしてサラ・ペイリン氏が副大統領に立候補した際も、共和党全国委員会が彼女と彼女の家族に2008年に買い与えた15万ドルの価値のある服とアクセサリーが激しい論争の的となりました。
「有権者たちは日頃から政治というものを嫌っており、そう思いながら人からは信頼される存在になりたいと思っているのです。そして、誰かがひとたびその同意されたパラダイムの外へと飛び出せば、その人を避難するようになる」。我々にそう語るのは、Fox ニュースの寄稿家で『End of Discussion』(Crown Forum)の共著書であるガイ・ベンソン氏です。「自身が身につけているものが自身のメッセージを曇らせるのなら、それは問題だよ」。
そこで我々はブレイクリー氏、ベンソン氏、そして同著のもう一人の共著者メアリー・キャサリン・ハム氏に、現在の大統領候補者らのファッションチョイスを分析してもらい、それがどのように有権者に受け取られるかの考察を聞いてきました。
リンカーン・チャフィー
形のはっきりしないモノクロームのスーツが、すべてを物語っています。
「(我々は)皆同じ服を着ていることに、とても怯えている」と、多くのコメントが寄せられていると、ブレイクリー氏は冗談混じりに言っています。手にしている麻色の封筒の方が、よほど目立っています。さらのそれがロードアイランドの前州知事のことも最近誰も話題にもしません。もしたこれが理由なのかもしれませんね。
ヒラリー・クリントン
政治界で活躍する女性は増えてきているものの、彼女達のユニフォームはまだ曖昧です。
ハムに言わせれば、それが「クリントンのパンツスーツスタイルが崇められている理由の一つ」であるとのこと。
「崇められることは強力なことである」から、それは別に悪いことではない―最近行われたNBCニュース/ウォール・ストリート・ジャーナルの世論調査で裏付けられたように、確かにクリントン氏は民主党予備選の最有力候補であります。しかしハム氏は、前国務長官が全身アメリカンの「ラルフ・ローレン」ブランドを止めればいいと思っている。「個人的に、ヒラリーには「ラルフ・ローレン」だけじゃなくて他のブランドも上手に取り入れて欲しいなと思うことがあるのです」。
マーティン・オマリー
前メリーランド州知事は、政治家としての両面―ビジネスと楽しみ―の両方を体現し、ネクタイを締めながらも袖を捲っていつのです。
その姿に関してハム氏が言うには、「彼は仕事にとりかかる準備ができている、とても真面目な候補者である」というイメージを伝えようとしているとのこと。ここで彼の波打つ腹筋がお見せできないのは残念なことですが。
バーニー・サンダース
ワイルドな無造作ヘアに気難しそうな表情のサンダース氏は、どの点から見てもまったく門外漢のように見えますよね。
サイズの合わないスーツに対する彼の偏向は、問題をさらに悪化させているのです。
「バーニーがこのだらしないスタイルで悪名高いところは、それを敢えてやっているということから生まれている。これはある意味素晴らしい考えです」と、ブレイクリー氏は言います。
「彼は政治というものに相変わらず抵抗しており、我々が知っている通り、それがこの国のほぼ普遍的な象徴の対象であるあるから」とも言っています。それにも関わらず、この非協調性は世論調査ではまったく役に立ってはいませんが。
ジェブ・ブッシュ
「彼は(立候補の発表を行った際に)ジャケットもネクタイも着用していなかったことから、それについて議論が交わされていたところなんです」、そう語ったのはベンソン氏でした。
ですが、公平な目で見るとブッシュ氏はこのときマイアミにいたわけです。さらに、ブッシュ家の人間であるということも鑑みれば、この前フロリダ州知事に関して言えることは「自らを普通の人物としてプレゼンするためには、特別高いハードルを超えなければいけない人」となるのです。
それでも「普通の男、ジェブ」という売り方はどうなのか? 貴金属に4万ドルものお金を遣う妻を持ち、おそらく「ブルックス・ブラザーズ」のズボンを愛用している彼は、いたって普通の男ではないでしょう。もっともニューハンプシャーの裕福な有権者なら、そう思うかもしれないですけどね。
カーリー・フィオリーナ
ハム氏曰く、「前ヒューレット・パッカード役員の彼女は“キュートだけど一味違う”」、というファッションスタイルでここまで来ていますが、誰もそのスタイルについて話題にしようとしていません。
「服装に関していえば、特に権力のある地位につく女性は常に誰よりも高倍率な賭けに出ることになるのです。彼女たちは性的な注目を集める方向に決して向かうことのない上で、自分の魅力を最大限引き出せるか、そして男性におけるユニフォーム的服装の女性バージョンをどの程度まで着るのかを自ら決めなくてはならないからです」。
これを進歩と言っていいのでしょうか。
ランド・ポール
ジーンズとフォーマルすぎるシングルコートの組み合わせのこの写真は、まさに「見よ、これがランド・ポールだ!」とでも言いたいかのような雰囲気であります。
このケンタッキー州上院議員は、その格好においても、かのレイバンの件(レイバンをカンカンに怒らせてしまった)に対して受けた批判とは、また異なった批判を浴びたのです。
「彼のイデオロギー的なチョイスは、多くの場合、共和党のなかで目立っている」と囁かれていますが、これはファッションにおけるチョイスでも同様。ボールドなタートルネックを指しながら、ハム氏はこう語りました。「彼って、ビート・ジェネレーションの大統領候補者みたいよね」。
リック・ペリー
このテキサス州知事のレンズはやけに目立っています―そして、最後の選挙演説で彼に欠いていた生真面目さを、ここで挽回しているよう。
そしてペリー氏は、スーツの着こなしかたを知っています。
ハム氏曰く、「彼はちょっと洒落た感じになった」とのことです。さらにベンソン氏は、「彼のスーツは良いように見えるんです」と付け加えました。スーツは、彼が必要としている自信と信用を醸し出すのに一役買っているのでした。
リック・サントラム
「あのセーターヴェストは彼自身を売り込むためにはベストでしたが、彼はそれを完全に諦めてしまったのでしょうか」と、ベンソン氏は語っています。
これを説明するにあたり、ブレイクリー氏は70年代に「ミスター・ロジャース」のカーディガンを着て登場したジミー・カーター氏のことを例に挙げました。
「彼が自らを平均的でごく普通の男だというイメージにしようとしていたことは、非常に危険な策略です。そのことは、70年代に子どもだった私にとっては拒否反応を示す要因にもなるのです」と、彼女は語ります。
「私は彼が特権階級の人間ではなく、父親のような人物だと思っていました。これは、彼の政治家としてのキャリアの中では負の方向に働きかけるものではないでしょうか。典型的なユニフォームから逸脱するのは、彼にとってかなりリスキーなことだと思います」。
ドナルド・トランプ
自称「普通人」のトランプ氏は、どこが「普通」なのか。「彼は文字通り自己ブランドの服(Donald J. Trump Signature Collection)を販売している唯一の政治家だ」と、ベンソン氏はそう笑っています。
それに付け加えるように、ハム氏はトランプ氏の口真似て、「私が着るスーツは、どれも6000ドルは下らないね」と言いました。
スコット・ウォーカー
「彼は安物の服を着ていて、自ら『服はKohl’s(アメリカの庶民向けデパート)で買う』と、これ見よがしに言っている」と、ベンソン氏は言います。
さらに、ハム氏も言っています。「有権者らは彼が激安セーターだと言っているセーターの一つの値段を実際に調べたそうです。その結果はというと、どうやら彼の言っていることは本当だったようです」。
Source / ESQUIRE US
Translation / MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。