世界的にも注目される日本の至宝、「キモノ」の魅力を探る連載も第2章へ進みます。今回は【KIMONO基本の「ほ」 】として、「銀座もとじ」の二代目・泉二啓太さんとファッションディレクターとして活躍する森岡 弘さんとのファッション談義をおおくりします。和の伝統と洋の伝統に、果たして通じ合うものはあるのか? そして、そこから新たなケミストリーは起こりうるのか?

White-collar worker, Hand, Gesture, Event, Photography, pinterest

左は再び登場の泉二啓太(もとじけいた)さん。新しい時代の新しいキモノ文化を提案する銀座の呉服店「銀座もとじ」二代目。右はファッションディレクターとして活躍する森岡 弘さん。こちらは『メンズクラブ』の元編集部員でもあり、実は弊社『美しいキモノ』編集部にも所属経験も…。この二人が、キモノと洋服の接点と未来を語ってくれました。

KIMONO(キモノ)基本の「ほ」その壱

 1979年に、東京・銀座に創業した呉服の名店「銀座もとじ」。その創業者である泉二弘明(もとじこうめい)さんは現在、息子である二代目・啓太さんとともに、二人三脚で店を切り盛りしています。そして、キモノを愛するつくり手を代表とする産地の皆さん、そして「銀座もとじ」のスタッフたちと一丸となって、これからの時代にふさわしい新たなキモノ文化の提案とともに、その普及に努めています。 

 そんな日本の服飾文化の真髄とも言えるキモノ。我々の日本人のアイデンティティーの一部である、この大切な伝統を絶やすまいと、日夜努力する方たちを応援できれば…と「メンズ・プラス」が企画したこの連載もいよいよ第二章に。今回は『メンズクラブ』の編集部員を経て独立し、今や著書も多数出版されているファッションディレクター森岡 弘さんをゲストに迎え、これからのキモノのあり方について語っていただきました。

*****************************************

○キモノの伝承にいま必要なこと

森岡 弘さん(以下、敬称略で森岡):実は私、かつてハースト婦人画報社さんが婦人画報社と言われえていた時代なんですが、ちょっとだけ『美しいキモノ』編集部にいたことがあるんですよ(笑)。そこで編集者として、いくつか特集ページをつくらせていただきました…。私は『メンズクラブ』出身じゃないですか? 『美しいキモノ』編集部には、その編集部なりの伝統があります。写真の撮影方法もです。そこで私は、あえて自分流を少しだけですが…貫かせていただきました。自分でも一番印象的な撮影が、『メンズクラブ』時代によく一緒に仕事をしていたカメラマン秦 淳司さんに撮影していただいたページです。秦さんは、いまも広告や女性誌で活躍している巨匠とも言っていいレベルの方で、わりとモードよりでアーティスティックな写真を撮る方なんです。

啓太さん(以下、敬称略で啓太):はい、森岡さんが担当されたのであれば、とても面白いページだったでしょうね。個人的にですが、伝統というのは新しい風を吹き込みながら、日々進化し続けていくものだと思っていますので。

 
森岡:そう言っていただけるとありがたいです…。ちょうど夏号の撮影時期で、浴衣のページを担当させていただきました。もちろん、ちゃんと編集長にその撮影プランを相談して、OKもらってから作成しました(笑)。すると、編集長は「だったら相澤さんだなぁ!」と、そのプランにふさわしい着付けとして相澤美智子さんを推薦してくれました。着付け界でも先生にあたる相澤さんですが、遊び心のある着付けが得意ということからすすめてくれたのです。撮影当日は相澤さんもノリノリで、その撮影を楽しんでいただきました。私なりにですが(笑)、いいページができたなと今でも思っています。

啓太:編集部の反応はどうでした? それ以上にそのページを見た、当時のキモノ業界の人たちの反応が気になりますねぇ…。


森岡:「キモノだから、伝統だから…ルールどおりに着なきゃいけないよ」、という考え方はもちろんあります。ですがその反面、「やっぱりこれから先はそれだけではなく、もうちょっと面白く仕立てることで、年齢層・趣味層に幅をもたせる提案が必要ではないか?」というような話を、『美しいキモノ』編集部の編集会議でもたびたびテーマに挙がっていたんです。そこで先陣を切って、私がさせていただきました(笑)。そこで「浴衣だったら遊んでもいいだろう」という、当時の編集長の計らいもあったのだと思います。編集長はさらにこう言ってくれました、「普段のキモノ撮影では組まないようなカメラマンで、ファッション的にやれば」と。私の肩を押してくれたのです。

啓太:森岡さんが『美しいキモノ』編集部に加わったことで、すばらしいケミストリーが生まれたわけですね。どんな写真を撮ったか、ぜひ観てみたいです。


森岡:95年もしくは96年ぐらいだと思います、今度探してお見せしますよ…しかし、いまから考えれば、あれは実験させられたんですね(笑)。メンズのファッション誌から異動したばかりの者がやれば、編集長も言い訳が立つという感じで思ったのでしょう…(笑々)。作戦ですね。でも、それだけキモノの世界はコンサバだったってことですね。

啓太:そうだったんですね。その頃僕は…まだ小学生で、キモノが大嫌いな時期でしたね(笑)。


森岡:いろいろあとで聞いてみたのですが、当時のキモノ業界でも意見は二分したようです。「これはいいんじゃないか」という派と「これはダメでしょ」という派に。

啓太:『美しいキモノ』ばかりではなく、キモノの雑誌全体が基本コンサバと言いますか、古き良き慣習を大切にしていますね。大切にしているからこそ、キモノを題材にした雑誌をつくり続けてくださっている。なので、大変感謝をしています。その一方で、何か仕掛けてもいい頃だとも思っているんですよ。でも、森岡さんは、それをもう90年代にされていたのですね。 
 

Furniture, Conversation, Sitting, Interior design, White-collar worker, pinterest

キモノ文化に対して、いわばアバンギャルド派の立ち位置から訴求を考える二人。互いの共感は次第に熱を高め、話は弾む一方でした。 

 
森岡:はい、コンサバなスタイルも好きなんですよ。そこには永遠の美があると思うんです。でも、「永遠の…」となると、それだけ時代の流れに対して美しく流れていくだけのようにも思えるんです。引っかかりがない…。時代に爪痕を残すっていうか、一度、時代に傷跡を残しながらも、皆に慕われ続けていくものが伝統=トラディショナルだって思っているんです。アバンギャルドがないところに、伝統は生まれない…とも言えるんじゃないでしょうか。

啓太:それ、すごく理解できます…と言いますか、僕もそれと非常に近い思いを抱きながら、この世界で精進させていただいています。 


森岡:面白いもので、スーツなど洋服の世界でもそうなのですが、男服ですので基本、トラディショナルです。伝統の世界がどっしりと君臨しています。私の場合、モードな世界よりもトラディショナルの割合も高いので、撮影となると、キメどころは大概決まっているんです。カタログ撮影のときが一番いい例になるでしょう。服の撮影で気にしなければならないことは、簡単に言えば3つです。①色を見せる。②素材を見せる。③シルエットを見せる。でも、この3つを同時に満たして撮影しようとしたら、どうでしょう。モデルのポーズも限られるでしょうし、それ以上にカメラマンのアングル&フレーミング、さらにはライティングまでも限定されることになりますよね。もはや、撮影というクリエイティブな現場を通り過ぎた写真という作品は、すべて同じようなものに仕上がるしかなくなってくるんです。それって、面白くないですよね。人は心が躍るようなものを常に求めているじゃないですか? 「何か面白いものはないか?」って、たまに思ったりしませんか。その機会を用意するのは、私たちみたいな職業の役割だと思っているので…。ふつうでは終わらせたくないんですね。そこで私の場合、前出の3つの要素のうち、「ひとつだけ我慢していだだけませんか?」ってよく聞くんです。そこで、たとえば「シルエットはいいよ」って言っていただければ、モデルをジャンプさせるなどアクティブなポーズで撮影できますよね…このように、1つの要素だけスルーしていただければ、いつもと違う世界が見えてくるんです。

啓太:なるほど、それを3つとも全部叶えようとすれば、同じになってしまいますよね。いわゆるカタログ的な写真ですね。カタログという商品を見比べるような役割のメディアに掲載するのであれば、その一貫性ある写真が相応しいかもしれませんが、イメージを訴求するためだとすると、やはり変化と言いますか、そこに時代性が含まれていてこそ人々の心が動かせるのでは?って私も思っています。(次ページへつづく)

White-collar worker, Smile, Job, Employment, Official, pinterest

○洋服の進化のようにキモノも進化してほしい

Eyewear, Glasses, White-collar worker, Vision care, Suit, Street fashion, Gesture, pinterest

「伝統」を守っていくということは、単なる「伝承」だけではない。そこに時代を乗せていくことが必要と説明する森岡さん。
 

森岡:変化を求めると、そこに思いがけない発見が生まれてくるじゃないですか。その新たな発見を、提案していくことも大切だと思っています。すると、既存の人ばかりでなく、新たな人がその魅力に共鳴して集まってくる。それが真に価値あるものなら、既存の人もその軸をしっかと支え、その集まりは次第に広がっていくのでは…。それが伝統というものではないでしょうか。普遍の軸はあるのですが、時代時代で少し変化していく。そう、螺旋形に進化の階段を昇っていくような感じです。時代の息吹を拾いながら、少々脇道へと吸い寄せられながらも、未来へと登って行く感覚です。

啓太:そんなイメージですね。洋服の進化がまさにその通りだと思います。まるで動物のDNAのカタチのように進化していってますね。全く同じではない。その時代の息吹に影響を受けながらも、その芯は普遍なものという感じですね。ある時代に流行ったものが、10年後また流行る。だけど、それは以前のものとカタチもシルエットも違う。その時代にあった姿勢・雰囲気をもっているというのも、そのDNAの形状をイメージすれば理解できますね。歌舞伎も落語もそうだと思うのですが、ここは銀座なので歌舞伎にたとえさせていただきます。歌舞伎は日本の伝統芸能の一つで、江戸時代の頃からあったと言われていますよね。おそらくですが、昔からある演目だけやっていたら、とっくに歌舞伎は廃れていたんじゃないでしょうかね。そんななか、時代時代で歌舞伎役者さんや台本を書く方、演出を行う方たちがアレンジを加えていって、新たな価値を加え続けることで今も支持されているのだと思っています。


森岡:ファッションのブランドでも同じことが言えるのだけど…あ、これ、僕が所属していた頃の『メンズクラブ』にも言えたことですね。トラディショナルなブランドで生きていくと、そのうち必ず時代とのギャップを感じるようになります。まさに時代に取り残されたような…。だから、もしその伝統的なものを大切に思うなら、その時代に背を向けるのでなく、しっかりとハグするくらいの関係で時代を超えていかなくてはいけないと思うんです。私が『メンズクラブ』にいた頃は、まさにトラディショナルな分野が時代に取り残された感が強かった時期だったんですね。時代とのギャップを感じ始めていました。そんなときに、「いままでどうしてきたのか?」を編集部のみんなで考えたんです。そして、答えがでました。それは、「いままで自分たちは、昔からあるモノをちゃんと守るとしすぎていたのではないか? それは単なる伝承にすぎない。トラディショナル=伝統っていうのを昔に遡って顧みれば、その時代時代の優秀な職人さんたちがそのときに最も新しいことにチャレンジした連続から生まれたものではないか?」ってね。

啓太:はい。まさにキモノも同じです。その時代時代の職人さんたちが、精魂込めて自分なりの“今”を感じてつくったと思います。なので各産地から、それぞれの特色の際立った反物が存在しているのだと思います。その地の誇りとともに、地名のついた織物として…。


森岡:啓太さんが留学していた英国もそうだと思いますよ。現在、世界中で着こなされている洋服ですが、その発祥の地って英国ですよね。そんな英国こそトラディショナルとアバンギャルドが共存している国じゃないですか。伝統が大切に守られているからこそ、そこに時代に合わせたイノベーションが加わる、ときにアバンギャルドと言われるほどのショック療法的なアレンジが加わっていくことで、モノが進化していくという感じでしょうか。そして、その時代の人々に愛され、次の時代に受け継がれる。そして、また時代の息吹を授かって進化を繰り返す。その中には、淘汰されるものも当然あるでしょうが、残ってきたモノたちがトラディショナル=伝統ってやつですね。あの頃のスタッフたちが、そのことに気付いたからこそ、いまもなお『メンズクラブ』が存続できているとも言えますね(笑)。今年で創刊63年でしたかね…。それに比べれば、キモノはもっと長いじゃないですか。
 

Sitting, pinterest

キモノにも、その真髄を守りながら時代に合わせた流行の必要性を感じ、すでに実践している啓太さん。今回の対談で、自分の進む方向を再確認できたようです。

 
啓太:はい、キモノは長い歴史のなかで受け継がれてきた「日本の伝統文化」です。いまでこそ洋服が一般化していますが、キモノを愛してくれている方も少なくありません。何人かのお客さまにその理由を聞いてみれば、単に「美しい」からではないのです。キモノには、日本の生活や文化に溶け込みやすく、日本人の体型や顔立ちを際立たせてくれる魔法があるとのこと。私もそれを実感できます。本来、「着物」とは広義の意味で「着るもの」。つまり、衣服なのですから、もっと多くの人に着こなしてもらいたいものですね。そのためにも、時代に取り残されたものではなく、その時代にあったキモノのあり方を考え、提案していくのが私どもの役割だと思っています。とは言っても、それぞれのキモノがもつ「品格」だけは失ってはいけないなと思っています。そこを外したら、キモノとしての魅力がなくなるなって思うんです。

森岡:それは大切なことですね。その「品格」に魅了されて、海外の方からもキモノが愛されていると思うので…。


啓太:でも、遊べるところは遊びたいとは思い続けていますね。こんな若造が言うのも何なのですが、キモノという素材には、いつの時代も「品格」という他の衣服にはないパワーが宿っていると思うんですね。それをどうにかもっと生かしたい。そして、多くの人にその魅力を伝えたいと思っています。ですが、いつかの時代からキモノの伝え方を含めて、保守的にならっているように思えてならなかったんです。何か新しいエッセンスを加えられたらなと思います。

森岡:はい、それもさっきの話に通じるかと思うのですが、キモノもそのあり方を考え直すべき過渡期を迎えているのだと思いますよ。その申し子として、啓太さんがいまの位置にいるのだと思えてしょうがないですね(笑)。ここで「もとじ」さんを中心に若い感性も入ってこられて、たぶん世の中も「変わってもいいんだぞ」っていう、呼び水も注いでくれているような気がするのですが、いかがですか(笑)。(次ページへつづく)

Eyewear, Glasses, Vision care, pinterest

○着物を「着てみたい」から、「着てもらいたい」へ

Sitting, pinterest

自分のキモノに対する思いとファッションの先端で活躍する森岡さんに共感を見い出し、話が盛り上がる啓太さん。


啓太:そう言っていただけると、すごく光栄です。

森岡:だから時代というか、いまの世の中は、その受け入れ体制に入っているんだって思えばいんですよ。「キモノに時代の息吹を吹き込んでくれ」って、世の中のほうが言ってるんじゃないですかね。こう話しているうち、そんな雰囲気を感じて仕方ないです(笑)。占いとか運命学とか自分やっていませんよ(笑)。約20年くらい前の私が『美しいキモノ』編集部時代は、「絶対ダメ!」的な雰囲気でした(笑)が、いまは違いますよね。

 
啓太:そうですね。ぜったい20年前にくらべたら、その門は開かれてきたかと思っています。僕も「銀座もとじ 男のきもの」でオリジナルコレクションを作っているのですが、ものづくりだけでなくビジュアルにもこだわって、新たな打ち出し方を試みています。コレクションの世界感を伝えるために、浜辺や夜の銀座をロケーションとして選んで、商品にフィーチャーするよりもイメージを大切に撮影しました。それをDMとしてお客さまへお送りさせていただいたのですが、新しいキモノの見え方にびっくりされる方が多かったですね。でも、その反応が素直に嬉しかったですね。それと同時に、どんなお客さまに何を届けたいか?ちゃんと見極めていかなければ、伝えたいことも伝わらないんだと確認できましたね。


森岡:そこが難しいところですね。伝える側として、1歩先ではお客さまも追いつかない方も多いでしょうから、半歩先ゆくイメージで伝えていきたいという思いはあったかと思います。そうしてお客さまにいい意味でのゆさぶりをかけるのも大切だと思いますよ。でも、それを温かく見守ってくれるようなお客さまであるよう、日頃からきちんとしたコミュニケーションを取っておくことが大切ですかね。基本というか真髄はきちんと大切にしていることを見せ続けていないといけませんね。そこで信用を得たのち、自分は父である店主・弘明さんの息子でありひと世代若い存在なので、「今後はいろんな冒険をしていきますが、大目に見てくださいね!」って感じで…。

啓太:そうですね。信用は大切ですね。基本がしっかりしていないうちに、応用問題に取り組んでもできないですから。
 

Glasses, Human, Eyewear, Photography, Smile, pinterest

キモノ文化の継承に対し、自分なりに、かつ真摯に取り組む啓太さんをエールをおくる森岡さんでした。


森岡:ひとつ言えるのは、今の時代、みんなに好かれようとしてはいけないんじゃないでしょうか。というのは、なにをやったとしても、全員が「Yes」または「Agree」なわけじゃないんです。これが絶対と言っていいことですよね。それでよく言われていることが、「嫌われる勇気をもとう!」ということになります。例で言いますと、カール・ラガーフェルドというデザイナーがいるじゃないですか。今年の9月で84歳ですが、今もなお第一戦で活躍しています。そんな彼がかつて、40歳の頃でしたでしょうか。ディオール オムの服を見て、これが着たいからと言ってダイエットしたんですね。ディオール オムの服はかなり細身だったので…。 実はその頃、一時は体重が100kgを超えていたと言われています。ですが、エディ・スリマンによるディオール オムのスーツを着たいがために、13カ月で42kgの減量に成功したんです。 それで着こなせるようになって、自分のブランドがあるのにディオール オムの服を着ていたんです。そんな風に、服って想像以上に偉大な力をもっているじゃないですか。でも、それもディオール オムが放ったメッセージがカール・ラガーフェルドのハートを鷲づかみにしたからだと思うんです。つまり言いたいことは、服、キモノも同様ですが、着てほしいと言いたければ、メッセージは常に込めるべきだと私は思っているんですよ。そして、「このメッセージがわからない方はいいです」ってぐらいの気持ちがあったほうが伝わるんだと私は信じています。5人が「大好き」と言ってくれたら、違う5人は「大嫌い」と思う…そんな現状を冷静に受け止めるようにしていればいいんじゃないでしょうかね。そして、「大嫌い」と言われるほうが幸せだと思ったほうがいいですね。一番まずいのはスルーされることです。

啓太:なるほど、「嫌い」って言ってくれるってことは、ちゃんと見てくれているということですしね。


森岡:そうです。それで「嫌い」って、ちゃんと見てくれているので、一歩捻ると、「好き」へと逆転する可能性があるんですよ。そこには、そのプロダクツの存在をちゃんと認めた上での評価じゃないですか。その方向性に共感を見つけた途端、好きになってくれるものだと思うんです。でも、スルーしている人は、その後もなんともならないことが多いです。目の前を通り過ぎただけで、何も心に引っかかりがなかったってことなんで。野球で言いますと、巨人阪神のファンがいますよね。お互い犬猿の仲的に表現されていますが、実は裏を返せば、巨人ファンは阪神ファンでもあるんです。大嫌いだからこそ、よく見てる。嫌いなくせに阪神のことをよく知ってる巨人ファンっていませんか? ところが、そんな方に「中日ドランゴンズのセカンドって誰が守ってる?」って聞いても何にも知らないですよ…。

啓太:確かにそうかもしれませんね。だから、大好き大嫌いの両極の感情を大切にしたほうがいいということですね…。なるほど!(後編へつづく)  


取材協力/銀座もとじ 男のきもの

Building, Door, Facade, Window, House, pinterest

住所/東京都中央区銀座3丁目8−15

   APA銀座中央ビル 1F
TEL/03・5524・7472
FB/「銀座もとじ 男のきもの」公式FB


〈10月の催事情報〉
◇2017年10月27日(金)〜29日(日)
「藍田正雄先生を偲ぶ会」
今回の連載、「KIMONO基本の『き』」でも
お話しにあがった、最後の渡り職人である
「江戸小紋師=藍田正雄の粋」をご紹介。
これを機にぜひ一緒に、
生前のご功績を偲びませんか。
2017年10月28(土) 10:00~は、
「語らいの会」を開催。詳しくは下記より。
http://www.motoji.co.jp/news/detail2000.htm

◇10月26日発売予定
泉二弘明、泉二啓太共著
『着付けDVD付きはじめての
「男の着物」Men’s Kimono Book』
http://www.motoji.co.jp/news/detail1999.htm

 
※最後までお読みいただき、ありがとうございました。
つづきを楽しみにお待ちいただければ幸いです。

Photograph/Setsuo Sugiyama
Text & Edit/Kazushige Ogawa