「二人に共通するのはともにエイリアンということだね」。マット・スミスは、彼が最近演じたドクター・フーとフィリップ殿下のことをそう表現します。イギリスの最長寿SFドラマのヒーロー、ドクター・フーは、惑星ガリフレイのタイム・ロードという種族のまさしく異星人。2009年にスミスは11代目のドクター・フーに抜擢されましたが、彼の起用は予想外でした。というのも、当時彼はまだ無名も同然でしたし、10代目のドクター役デイヴィッド・テナントより10歳も若かったのですから。しかし、トレッキー(『スタートレック』の熱狂的ファン)のイギリス版とも言えるフーヴィアンたちは彼を大歓迎。2011年には英国アカデミー賞のTV部門で主演男優賞にノミネートされました。
続いてスミスは、豪華歴史ドラマ「ザ・クラウン」のフィリップ殿下役に抜擢されます。ピーター・モーガン(『クィーン』や『フロスト×ニクソン』を手がけた)原作・脚本でイギリスの女王エリザベス2世の治世を描き、第1シーズンの予算は1億ドルといわれ、Netflix作品のなかでも群を抜く意欲作。
これが「デイリー・メイル」のウェブサイトでケイト・ミドルトンのおしゃれなマタニティドレスのスライドショーをクリックするような王室ウォッチャー向けと思うのは大間違い。「ザ・クラウン」は脚本も映像も素晴らしい大河ドラマなのです。
エリザベス女王の配偶者フィリップはギリシャのコルフ島で生まれました。もちろん彼は地球人ですが、スミスは彼を「王室のなかのエイリアン」と見ています。彼はギリシャ、デンマークの貴族なので一般人ではありませんが、バッキンガム宮殿内での彼の生活を支配する独特の習慣や並外れた贅沢、監視などにはまったく不慣れで、観客が親しみを感じ共感できる人物として描かれています。
「彼は何もかもを諦めるんだ。本当にあらゆることを。そのことで彼は立派な男になる。彼には海軍の素晴らしいキャリアがあった。それを取り上げられ、公の場で妻の2歩後ろを歩く生涯を送ることになる。でも彼にはライオンのような威厳があったんだ。演じるには多くの興味深い葛藤があったよ」。
第2シーズンでは、フィリップの過去が描かれる一方で、彼とエリザベスの長男、孤独なチャールズや、放蕩で知られる義理の妹マーガレット王女(60年代のスウィンギング・ロンドンで注目を集め、ミック・ジャガー、ピーター・セラーズ、ダスティ・スプリングフィールドとも浮名を流した)にもフォーカスされます。
35歳になったスミスの次の作品は、写真家のロバート・メイプルソープの伝記映画。「ペニスの写真にこれほど感動するなんて想像もしなかったよ」(ちなみに彼は映画『高慢と偏見とゾンビ』で共演したリリー・ジェームズと交際中)と笑う彼は、メイプルソープ役がこれほど大変とは思いもしなかったと言います。
「真夏で、撮影の間ずっと黒のレザーを着ていた。彼はすごく痩せていたから、僕はダイエットをして魚と野菜しか食べなかった。もう、最悪。撮影が終わった日、パンケーキとヌテラ(チョコレート風味の甘いスプレッド)を注文し、4日間食べ続けたよ」。
硬派に見えて、意外とお茶目な一面もあるスミスなのです。
ワイルドかつラグジュアリーな
ミリタリーディテールのムートン
大きめの襟や2列のボタンなど、ミリタリーのディテールが特徴のムートンコートは、上質なラムを使用。ダメージデニムにショートブーツという男くさい着こなしでもコートのほどよくシェイプした腰まわりで上品な雰囲気に。
個性的なアイテムこそ仕立てのよさが必要
派手なアウターこそ真面目な着こなしを
柄コートは同系色スタイルでシックに
オーバーシルエットが主役の存在感を放つ
コーデュロイはディテールでモダンに
ブリティッシュトラッドの進化系コート
Styling / Nick Sullivan