チクタクチクタク…。このかすかな音が聞こえますか?これは、世界中の時計コレクターがその存在に衝撃を受ける“ある時計”の音。実は、これまで製造されてきた中で最も珍しい腕時計のひとつ(“最も珍しい”と言い切ってもいいかもしれません)が、紆余曲折を経て、ジュネーヴを拠点とするオークションハウスのフィリップスに出品されることになったのです。

これは、ホワイトゴールドの「コスモグラフ デイトナ」(レファレンスナンバー6265)で、1970年に製造され、1971年にドイツの小売業者に納品されました。ニックネームは「ユニコーン」。専門家たちは、これは1点ものであると考えています。

コスモグラフ デイトナ, ロレックス,
COURTESY OF PHILLIPS

およそ10年前にこの時計が発見されるまで、誰もが「ロレックス」が製造してきた手巻きの「デイトナ」はステンレスか、イエロー・ゴールドだけだと思っていたことでしょう。それしか目にしたことがなかったのですからそうかもしれません。

けれど、どうやら、誰かがこのホワイトゴールドの「コスモグラフ デイトナ」をつくる必要があったのでしょう。あるいは奇をてらったことをする必要があったのでしょう。

どのような事情があったにせよ、ついにこの超レアな一品が公衆の面前にさらされることになったのです。

オークションの収益は慈善団体へ

コスモグラフ デイトナ, ロレックス,pinterest
Courtesy of Phillips

時計の業界に携わる人々にとって、この展開はおどろくべきものでしょう。というのも、この時計の所有者は当初、この何にも変えられない(文字通りの意味ですね)タイムピースを売る気はないと明言していたからです。

しかし、ジョン・ゴールドバーガーは考えを変えました。彼は、チャリティーという目的のために自身の誓いに反した行動をとったのです。オークションで得られた収益は、世界中の自殺やヘルスケアに関する問題に取り組む団体である、チルドレン・アクションに寄付されます。つまり、オークションを勝ち抜いた人は時計学史上において極めて珍しい一品を手に入れられるだけではなく、温かい気持ちになることもできる。悪くはない話ですよね。

おそらく人生で一度しか遭遇できない“究極の”「デイトナ」のオークションは2018年5月12日に行われます。ここでは32点の時計が出品され、そこで最も注目を集めるのはもちろんホワイトゴールドの「コスモグラフ デイトナ」(レファレンスナンバー6265)でしょう。気になる人は日付のメモを忘れないで。

Source / ESQUIRE US