高級SUVのEV部門で、米メディアから高い評価を集める8モデル
ラグジュアリーSUVのEV(電気自動車)市場が活気づき、競争は激しくなるばかりです。そこで今回は、アメリカのカーメディア「CAR AND DRIVER」が高く評価したEV(電気自動車)の中でもラグジュアリーなSUVを紹介します。
数多ある車の中からあえてラグジュアリーな1台を選びたいというほどの人であれば、車に対する特別なこだわりを持っているはずです。座り心地の良いレザーシートや最先端のインフォテインメントシステム、もしくは有名コンサートホールの音響にも引けを取らないサラウンドのオーディオシステムなど、車の魅力はさまざまですから。
そのような嗜好は、電動SUVに対しても変わることはないでしょう。ガレージでもまた、例えばミシュランの星付きレストランの前でも思わず見惚れてしまうようなEVをそのような人々は求めているのです。
以前までは電動のSUVなど、片手で数えられるほどしか存在していませんでした。それが今や、高級自動車メーカーの多くが参入するカテゴリーへと成熟しています。SUVならではの足回りとゆったりとした車内スペースとに魅せられた人々の存在を、もはや無視できなくなったのです。
それでは早速、アメリカのカーメディア「CAR AND DRIVER」が高く評価する、ラグジュアリーなEV(電気自動車)のSUV8台を見ていきましょう。
BMW「iX」(2022年モデル)
「CAR AND DRIVER」の選ぶ電動ラグジュアリーSUVの堂々のトップを勝ち取ったのが、この新型BMW「iX」です。ビーバーの前歯のようなフロントグリルこそ好き嫌いは出るでしょうが、この「iX」こそ最高位にふさわしい高性能と航続可能距離とを備えた車ということで間違いないでしょう。
曲線的なインフォテインメントパネルに六角形のステアリングという独特なキャビンもまた、魅力を際立たせています。ルックスも内容も最先端の1台ですが、これまでどおりの運転技術でなんら困らないというのが素晴らしいところです。8万4195ドル(約1200万円)から入手可能な「iX」の「xDrive50」モデルであれば、2基の電動モーターにより4本のタイヤに516馬力が出力されます。
「CAR AND DRIVER」によるテスト走行においては、その軽快なハンドリング性能、滑らかな乗り心地、そして素晴らしい快適性を余すことなく満喫することができました。「もっとパワーが欲しい」という欲張りな人にも、うれしいお知らせがあります。2023年モデルとして、よりレーシーな(そしてより高額な)「M60」モデルがラインナップに加わることが決定しています。
- 定格航続距離(EPA評価):324マイル(約521キロ)
リビアン「R1S」(2022年モデル)
ジーンズにネルシャツが似合いそうな堂々たる箱型フォルムの「R1S」なら、どのような悪路であっても怖くなどないでしょう。無骨なデザインだからと言って、「R1S」が他のライバルに技術的に劣るなどと思ったら大間違いです。四角い車体の中には、計835馬力を生み出す4基の電動モーターが搭載されています。
直進速度を支える128.9kWhのバッテリーの航続可能距離は、316マイル(約509キロ)というEPA(アメリカ合衆国環境保護庁|EPA=U.S. Environmental Protection Agency)評価です。
巨体にも関わらず驚くほどの敏捷(しゅんびん)性を備えた「R1S」ですが、エアサスペンションを持ってしてなお、乗り心地はやや固い印象です。
最低価格9万1075ドル(約1300万円)と高価ですが、これは4基のモーターと大型バッテリーによるものと言えるでしょう。2023年のモデルイヤーには、よりパワフルで御手頃価格なトリムの登場も噂されています。
- 定格航続距離(EPA評価):316マイル(約509キロ)
アウディ「e-tron」(2022年モデル)
航続可能距離さえもう少しあれば、このアウディ「e-tron」こそが「今日のEVラグジュアリーSUVの最高傑作」と呼びたい1台です。ですが、EPA評価の航続可能距離は残念ながら222マイル(約357キロ)と、今回ランクインした車種の中で最も短く、クーペタイプの「e-tron Sportback」モデルではそれが218マイル(約350キロ)にまで落ち込みます。
「e-tron」の大きな魅力は、その豪華なキャビンにあります。ダッシュボードの大部分を占めるタッチスクリーンには、アウディ自慢のバーチャルコックピットのデジタルメーターが光っています。全輪駆動が標準となっており、2基の電動モーターの最大出力は355馬力、最高トルク約561N・mというパワーです。
スポーツモードに切り替えれば、それがさらに402馬力、約664N・mまで引き上げられます。航続可能距離の短さが気になるところではありますが、「e-tron」の充電時間は特筆に値します。150kWの急速充電器なら、80パーセントまで充電するのにわずか30分しか要しないということ。
- 定格航続距離(EPA評価):222マイル(約357キロ)
テスラ「モデルY」(2022年モデル)
カーブの多い道で優れた反応を見せる「モデル3セダン」と同じプラットフォームと電動パワートレインを共有する「モデルY」。何と言っても魅力的なのが、その航続距離です。6万7440ドル(約970万円)から入手可能な「モデルY」ロングレンジモデルなら、330マイル(約531キロ)とその名に恥じない航続距離を誇ります。
パフォーマンスモデルでは、航続可能距離は303マイル(約488キロ)と縮小しますが、その代わりとして素晴らしい速さが備わっています。ロングレンジモデルの0-100km/h加速は約4.8秒ですが、パフォーマンスモデルなら3.5秒ほどです。
3列シートへの変更には、3000ドル(約43万円)の追加費用が発生しますが、これもまた魅力的なオプションと言えるでしょう。他のテスラ車と同じくミニマルなキャビンですが、ダッシュボード中央に陣取る巨大なタッチスクリーンパネルが存在感を放っています。未来を感じさせる大型スクリーンではありますが、運転中にはちょっと邪魔かもしれません。
- 定格航続距離(EPA評価):330マイル(約531キロ)
ボルボ「C40 リチャージ」(2022年モデル)
実用性と賢さを備えたラグジュアリーカーと呼ぶべき1台です。山道で急に巨大生物のヘラジカが飛び出してくるようなことがあっても、この「C40 リチャージ」なら大事故にはならないかもしれません。
とにかく安全装備に重点を置いた設計となっています。ボルボのEVの中でも、異彩を放つ1台と言えます。角張ったデザインの「XC40」と比べて、「CX40」はリアルーフが傾斜し、よりスマートでスタイリッシュなシルエットとなっています(ただし、そのため視界と荷室の容積が犠牲になりましたが…)。
2基の電動モーターの合計出力は402馬力、全輪駆動が標準です。航続可能距離はEPA評価で226マイル(約364キロ)ということで、同カテゴリー内ではやや低めの数値。ただし、「CX40リチャージ」の最低価格は5万9845ドル(約860万円)ということで、これはポジティブな材料と言えるでしょう。EVラグジュアリーSUVの中では、お手頃価格の部類に入る1台と言えます。
- 定格航続距離(EPA評価):226マイル(約364キロ)
ジャガー「I-PACE」(2022年モデル)
最低価格7万1030ドル(約1000万円)、EPA(アメリカ合衆国環境保護庁|EPA=U.S. Environmental Protection Agency)評価による航続可能距離253マイル(約407キロ)というジャガー「I-PACE」。スポーティな楽しさを提供してくれる1台で、まるでスポーツセダンかと見紛うほどの速さと足回りの良さが魅力です。
2発で合計394馬力の出力を誇る電動モーターが、約694N・mのトルクを4本のタイヤに送り込みます。不満点を挙げるとすれば、低速走行時のブレーキングの不安定さでしょうか。
2022年モデルでは車載充電器などのアップグレードがされたことで、充電性能が向上しています。260ボルトの電源につないだ場合の充電時間は8.6。以前の13時間から大幅に短縮されています。
- 定格航続距離(EPA評価):253マイル(約407キロ)
メルセデス・ベンツ「EQB」(2022年モデル)
2022年モデルとして満を持しての登場となったメルセデス・ベンツ「EQB」は、2種類のパワートレインの選択が可能です。
「EQB300」であれば、225馬力の出力と約390N・mのトルクの電動モーターが積まれています。デュアルモーター搭載の「EQB350」なら最高出力288馬力、最大トルク約439N・mとさらなるパワーを発揮します。いずれも全輪駆動で、66.5kWhのバッテリーパックを床下に装備。
ガソリンエンジン搭載の兄弟車である「GLB」とほぼ同じデザインのキャビンは、極めて上品なインテリアです。「EQB」が速さと快適さを備えた車であることは判明しています。
3列シートにすることも可能ですが、これは子どもでも窮屈ということで、あまり期待しないほうが賢明でしょう。「EQB」の航続可能距離はまだ発表されていませんが、私たち「カー・アンド・ドライバー」の予想では、フル充電で225マイル(約362キロ)程度となるのではないかと踏んでいます。
- 定格航続距離(EPA評価):未公開
テスラ「モデルX」(2022年モデル)
電動SUVに速さを求めるなら、「テスラ『モデルX』こそがショッピングリストのトップに置くべき1台」と言えるでしょう。最高出力1020馬力を誇る「モデルX Plaid」なら、時速100キロまでわずか2.5秒で到達する加速性能を持っています。
全輪駆動の「モデルX」の標準モデルなら、その航続可能距離は電動ラグジュアリースポーツユーティリティ部門で最高のEPA評価となっています。
とは言え、「モデルX」につけられた12万6490ドル(約1800万円)という高い価格設定、そしてヨーク型ステアリングを採用するなどバランスを欠いたキャビンには、ライバル車種に備わっているラグジュアリー感と洗練とに欠けるのではないかというのが「CAR AND DRIVER」の評価です。
- 定格航続距離(EPA評価):348マイル(約560キロ)
Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です