有名人やイメージに敏感な方にとって、着ている服と同じくらい乗っているクルマも自己表現のための大切なツールの1つです。

 例えばジュリア・ロバーツ、マット・デイモン、ジェシカ・アルバなど、著名人の中には「プリウス」を愛用している方が大勢います。「プリウス」のようなハイブリッド車は環境汚染対策の象徴であると同時に、「私もあなたと同じ、一般人よ!」というある種の主張とも認識することができるでしょう。一方、「レンジローバー」のオーナーは、自身の見え方に注意を払いすぎることなく、堂々と自己主張していると言っていいかもしれません。

 1993年に日本でも公開されたロバート・アルトマン監督の映画『ザ・プレイヤー』のおかげで、「レンジローバー」はハリウッドの権力者たちのクルマというイメージが定着しました。有名人が乗っている新しい高級車はさまざまな方法で、そして、ある程度の仰々しさで、「私は裕福です」とわれわれに主張しています。

 もしあなたが、ヒップホップMCや俳優として知られるリュダクリスだとして、そして、メルセデス・マイバッハ「GLS」に乗っているとしたら、それは多くの方が経験することのない「走る歓び」を表現していることになるでしょう。

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 しかし、ごく一部ですが、ヴィンテージカーに乗る有名人もいます。単に最新のBMWを購入するのではなく、ヴィンテージカーという興味深い選択をしているのです。

 そしてヴィンテージカーに乗ることで、有名人たちはこう言っているようにも見えます。「私はただ可愛い(かっこいい)だけではないの。“本当に面白い(懐の深い)人間”なんだから!」と。

 その中でも、「ポルシェ 993」に乗ること以上にクルマに興味がある人間であることを示す簡単な方法はないでしょう。「ポルシェ 993」は、"Real Taste in Old Cars(クルマの本当の味) "とイコール関係にあります。だからこそ、多くの有名人がこのクルマを所有したり運転したりしているのでしょう。

 ケンダル・ジェンナー、キアヌ・リーブス、デビッド・ベッカム、ハリー・スタイルズ、ジェリー・サインフェルド、エレン・デジェネレス、アントニオ・バンデラスなど、これまでに「ポルシェ 993」を運転したり、乗り込んだりしている写真が撮影された有名人は数知れません。(リーブスは『993』を「The Sled」というニックネームで呼んでいましたが、結局盗まれてしまいました)

kendall jenner porsche 993
Bellocqimages/Bauer-Griffin//Getty Images
「ポルシェ 993」に乗る、ケンダル・ジェンナー。

 ここで確認しておきましょう。「993」とは、1994年から1998年まで生産された「ポルシェ 911」4代目モデルの型式名を略称して用いたものです。空冷式の最後のモデルであることから、常に人気のあるポルシェのひとつです。最新のポルシェは水冷エンジンを搭載していますが、パワフルでメンテナンスが容易な反面、空冷エンジンのような高回転型の機械的な生々しさはありませんでした。

 この「993」は多くの方にとって、古い時代と新しい時代をまたぐ最も美しい「ポルシェ」でもあるのです。モデルや走行距離にもよりますが、600万円〜2000万円前後で手に入るようです。

1996 porsche 993 carrera
Heritage Images//Getty Images
1994年から1998年の間に生産されたポルシェ「911」を指す、「 993」はセレブリティたちに愛されています。
1996 porsche 993 turbo
Heritage Images//Getty Images
1996 porsche 993 turbo
Heritage Images//Getty Images

 有名人が「993」のドライバーであることは、何を意味すると思いますか? 「ポルシェ」はレンジローバーと並んで、ロサンゼルスの裕福な地域に住む人々の乗用車と言っていいでしょう。

 しかしながら、それは彼らが、多くの民衆の中で自分が特別な存在でありたいという願い・誇り・ときに見栄…でもあるのです。それは同時に安全な賭けでもあり、魂のこめた声明でもあるのです。そしてそんな彼らは、「クルマに関してなら任せない! 人一倍違いはわかっているぜ!」 と無口に主張しているのです。

 つまり「993」は、アストンマーチンや他の「ポルシェ」のヴィンテージカーとは異なるわけです。このクルマを選び、そして乗っている自分を披露することで、「自分はクルマを愛し、そのクルマのことを深く理解しているんだ。成金趣味でクルマをコレクションしているわけじゃないぜ」という意味が込められていると推測します。

 いわゆるアブラハム・マズローの法則(欲求5段階説)で言えば、 上位から2番目の「承認欲求」の好例と言えるかもしれません。その中には、高位と低位がありますが、さて皆さんはどちらの承認を得たいのでしょうか? その正解は本人にしかわかりませんが…。

Source / ESQUIRE US
※この翻訳は抄訳です。

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