「汚い(Dirty)」と聞いて、いいイメージを持つのはクリスティーナ・アギレラの(同名の)曲とミュージックビデオくらいでしょう。この曲は記憶に残る名作で、「嫌いだ」という人はそういないはずです。でも今、私の虫眼鏡はジェイク・ギレンホールに向けられています。何か粗探しをしようとしているわけではなく、彼の入浴習慣に頭を悩ましているのです。あの青い瞳とえくぼの浮かぶ笑顔の裏で、彼が最低限の身だしなみしかしていないというのは本当なのでしょうか。

最近の『Vanity Fair』誌のインタビューでフレグランスについて聞かれた彼は、次のように述べているのです。

「最近、お風呂に入る必要性をあまり感じられなくなってきたんだよね」と話し、歯は磨いているしマナーは守っているとは言いながら、「お風呂に入らないことで肌にもメリットがあるし、人間は自然ときれいになるようできているんじゃないかって思うんだよ」と続けています。

もちろん、過剰に何かをすることは、決していいことではありません(それがマナーであれば話は別です)。ですが、定期的にお風呂に入らないという行為は、私としてはとても気になるところです。しかも、このとても一般的な習慣を乱しているのは、ギレンホールだけではないようなのです。

ashton kutcher and mila kunis
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アシュトン・カッチャーとミラ・クニス

あの美しいブラッド・ピットは石けんと水が嫌いだと公言しており、脇の下を赤ちゃん用のお尻拭きで拭うだけだそうです。時間がないのと、大勢の子どもたちの世話をしなければならないというのが理由と言います。アシュトン・カッチャーとミラ・クニスもシャワーをほとんど浴びないことを明かしており、この反入浴運動を支持しています。クリステン・ベルとダックス・シェパード夫妻も賛同しており、「毎日、固形石鹸で肌の自然な油分を取り除くのは間違っていると思う」と、シェパードは話しています

調べたところ、シェパードの論理には真実も含まれているようです。

「有名人の中には、毎日石けんで身体を洗いたくないという人もいます。肌から天然の油分を奪ってしまうため、身体を頻繁に洗う必要がないと考えているのです」と、Uptown Dermatologyの皮膚科医であるエリザベス・マランズ医師は話します。「私たちの体には自浄作用が備わっているため、毎日お風呂やシャワーを浴びる必要がないというのは、私も同意見です」とのこと。

「皮膚には油分で構成された天然のバリアがあり、善玉菌などの微生物の住処となっています」と説明するのは、ニューヨーク大学Ronald O. Perelman Departmentの臨床准教授であるジェレミー・A・ブラウアー博士。「長時間の熱いシャワー、石けんの過剰使用、角質除去、スクラブなどにより、これらの機能が低下してしまいます」と話しています。

「毎日お風呂に入ることは当たり前」
という概念の崩壊

ここで疑問が生じます。私のこれまでのやり方は間違っていたのでしょうか?

私は、「清潔は敬神に次ぐ美徳」と信じている人間です。毎朝必ず歯を磨き、石けんを使わずに顔を洗い、熱めのシャワーを浴びて身体をゴシゴシと洗います。その日の気分によって、寝る前にも同じことをします。これは幼い頃から染みついてきた、儀式なのです。正しい身だしなみとして教えられ、脂ぎっていたり、汚れていたり、だらしない姿ではいられません。気品のある香りを漂わせることも重要で、私の経験から言うと、どんなにボディスプレーやコロンを使っても体臭を隠すことはできません。

ですが、私が当たり前と思っていた行動はすべての人に当てはまるわけではないようです。

「平均的な大人であれば1日に1回、敏感肌の方や湿疹ができやすい方は、乾燥を防ぐために1日おきにお風呂に入ることをおすすめします」と話すのは、皮膚科医のリンゼイ・ズブリツキー医師。そして、「屋外での活動や運動、暑さなどで特に汚れた日には、1日に1回以上シャワーを浴びても構わないでしょう」とも言います。

入浴は、言うまでもなく個人的な儀式です。生物学的性質や生活習慣は人それぞれであり、シャワーの浴び方も人によって異なります。「シャワーの浴び方は、個人のライフスタイルや生活環境によって大きく異なります」とブラウアー博士。また、「頻度だけでなく、時間の長さ、温度、使用する製品、そしてそれらを使用する部位も重要です」と言います。他にもその人のキャリアや社会経済的地位も、重要な役割を果たしているでしょう。

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CJ Entertainment/Neon
映画『パラサイト』でパク・ヨンギョン(演:チョ・ヨジョン)が、運転手であるキム・ギテク(演:ソン・ガンホ)のにおいに嫌悪感を抱くワンシーン。

確かに、「このお風呂に入らない」という考え方に関しては、特定のグループからは「劣っている」という烙印を押されかねないものになるかもしれません。アカデミー賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』では、「臭いや外見がどのようにして格差を引き起こすか?」を詳細に描いています。いずれにせよ、人とコミュニケーションをとる生活の中では、毎日シャワーを浴びるか浴びないかは重要な選択となるはずです。

「『シャワーを浴びない』という習慣に有名人がスポットライトを当てたことで、“衛生”についての考え方が人によって異なることが明らかになりました」と、マランズ医師は言います。

在宅ワークと肉体労働の働き方の違いや、一般人と裕福なセレブとの階級的な違いなど、お風呂に入らないという概念にはグループごとに異なる意味を持ち合わせています。そんな中、社会経済的に優位に立つグループならどうでしょう。

このグループの人々が「しばらく石けんを使いません」と宣言したとしても、そこで即“不潔なイメージ”に結びつくことはないはず。さらに言えば、「それがトレンドの健康法なんだ~」とポジティブなイメージと捉える方も少なくないでしょう。俗な批判を免れる可能性は、とても高いグループと言えます。

特権階級にのみ与えられた
お風呂に入らないという“余裕”

正直言って、ブラッドやジェイクが毎日シャワーを浴びなくて済むのは、それだけの余裕があるからではないでしょうか。そんな習慣を宣言しても、彼らは社会から白い目で見られたり、後ろ指を指されることはないのですから。なので私は、ここで敢えて意見したいと思います。

「あなたたち、シャワーを浴びなさい‼」と。

これは私だけでなく、話を聞いた多くの皮膚科医もそう言っているのです。肌の油分を保ちたいのであれば、頻繁に洗う必要はありません。ですが、悪臭を放っているなら、赤ちゃん用のお尻拭きを使うのはやめたほうがいいでしょう(この点においては、彼らを理想としている方たちも見習ってはいけません!)。

私はこれが、審査に通らない一時的なセレブの流行の1つになることを願っています。もし一般的に受け入れられてしまったら、クリスティーナ・アギレラの言葉を借りるしかありません…。アラームを鳴らし、戦闘態勢に入れ! 

Source / ESQUIRE US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。

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