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レオナルド・ディカプリオの傑作映画ベスト10
熊と戦うハンターからお茶目な詐欺師まで、これまでさまざまな役を演じてきたレオナルド・ディカプリオ。そんな彼が出演した作品をランク付けしました。もちろん勝手に、恐縮です。
レオナルド・ディカプリオと言えば1997年に、映画史上最も愛されたラブスストーリーの主役の一人(『タイタニック』のジャックを忘れることなどできるでしょうか)を演じ、20代前半で俳優として不動の地位を得ました。さらにそればかりでなく、名悪役も丁寧に演じ分ける名うての俳優ぶりを発揮。46歳の現在では、ハリウッドでもトップランクの名優と言っていいでしょう。
オスカー主演男優賞を受賞した『レヴェナント: 蘇えりし者』では、熊に痛めつけられたこともありました。『タイタニック』以前には、シェイクスピア原作の映画『ロミオ&ジュリエット』にも出演し、初々しい姿でわれわれを魅了してくれました。そんなディカプリオですが、実のところ30年におよぶ輝かしいキャリアの中で、彼が出演した映画はたった28本しかありません。
多くの俳優は、自らに合った道を見つけてはそこにとどまるものです。しかしながらディカプリオは、決してジャンルに縛られたりしませんでした。彼なら二枚目俳優を演じ続けてキャリアを築き上げ、カリフォルニア州マリブで快適な生活を送ることもできたはずです。
ですが、彼は違いました。グローバルなハンサム俳優でありながらも、セクシーな役柄を演じることはめったにありません。また、アクションスターとして稼ぐこともできたでしょう。ですが、出演してきたアクション映画の数はそれほど多くありません。だからと言って、ディカプリオはオスカー狙いの俳優というわけでもありません。数年に1度、個性派の監督たちとの作品で名前が挙がるだけなのです。
そんな彼は自身が好きなこと、あるいは望む役柄を選ぶ俳優です。これまでにスティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシ、ジェームズ・キャメロン、クリストファー・ノーラン、バズ・ラーマン、ダニー・ボイル、クリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノら名監督と共に仕事してきました。
ディカプリオが出演を選んだ映画は、どれも比較できないほど素晴らしいものです。なので、ランク付けするのはそう容易ではありません。彼が出演しているという事実そのものが、その作品の価値を高めているとも言えるのですから…。
とは言え、皆さんもすべて観る時間もそうないでしょう。なので今回だけ勝手に、レオナルド・ディカプリオの傑作映画TOP10をランク付けさせていただきました。彼の出演作は名作ぞろいですので、惜しくもランク外となってしまった作品もあります。ですが、今回ご紹介する作品の多くが、ディカプリオの代表作であることは確かです!
第10位:『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002年日本公開)
『タイタニック』で一躍スーパースターとなったレオナルド・ディカプリオはその後、映画史を代表する最も輝かしい個性派監督たちと一緒に作品づくりに取り組みました。その中でも最も頻繁にタッグを組んだのが、マーティン・スコセッシ監督。そんな2人の最初の作品が、この歴史大作でした。
スコセッシ監督が長い年月をかけて実現にこぎつけた本作は、1880年代半ばのマンハッタンをめぐるプロテスタントとカトリックの争いを描いたものです。ディカプリオは、父を殺したビル・ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ=ルイス)への復讐を企てるアムステルダム・ヴァロンを演じ、ニューヨーク市、ひいては米国全土の将来を決定づけた社会的・宗教的闘争を描いた壮大で暴力的な物語の立役者となります。
本作では、ディカプリオとキャメロン・ディアスはロマンティックなシーンをそつなくこなしているのも印象的ですが、やはりスコセッシ監督なのですから、残酷なアクションシーンも見逃せません。そのシーンとは、凶暴性の塊のようなデイ=ルイスとディカプリオが対峙するところです。
第9位:『レヴェナント: 蘇えりし者』(2016年日本公開)
レオナルド・ディカプリオが巨大なグリズリー(ハイイログマ)に襲われ、ズタズタに引き裂かれる映画として最も有名かもしれません。ですが、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督のスタイリッシュな実存主義的フロンティア・アドベンチャー作品としても有名です。
ディカプリオが演じたのは、19世紀の無骨なハンターのヒュー・グラス。残酷な目に遭うこの役は、ディカプリオのこれまでのキャリアの中でも最も苛酷な仕事だったことでしょう。
美しい映像が印象的な作品ですが、極寒の西部で生き残るためにあがくグラスが、自らの内側に燃える憎しみと復讐心によってのみしか暖まることができないというマゾヒズム(被虐性欲)は…これはときに、ボディブローのようにじわじわと効いてきます。
もしかしたらディカプリオは、この作品を彼の代表作のひとつである『華麗なるギャツビー』で染まった華やかなジャズとカクテルといったゴージャスなカラーをすべて拭(ぬぐ)い去るための「苦行」とみなしていたのかもしれません。少なくとも本作は、ディカプリオに待望のアカデミー主演男優賞をもたらしました。
第8位:『ジャンゴ 繋がれざる者』(2013年日本公開)
スティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシ、ジェームズ・キャメロン、クリストファー・ノーラン、バズ・ラーマン、そしてクリント・イーストウッドら、名監督たちとの仕事で成功を収めてきたレオナルド・ディカプリオですが、個性派監督のクエンティン・タランティーノとタッグを組んで話題をさらったのが、『ジャンゴ 繋がれざる者』でした。
ディカプリオが演じたカルビン・J・キャンディは、19世紀の米国南部の農園の卑劣なオーナー。ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を奴隷として所有していたことで、復讐に燃える解放奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)の標的となります。
キャンディはオールバックの髪型や悪魔のように尖ったあごひげ、冷酷無慈悲を印象づける薄ら笑いが特徴。モラルに欠け、卑(いや)しい本能に突き動かされる貴族です。そんなキャンディは、正義の復讐者ジャンゴにとって目が離せないほど忌々(いまいま)しい宿敵として立ちはだかるのです。
一流の主演俳優であるディカプリオが、悪役を演じさせてもハマるという気づきには、ワクワクするものです。
第7位:『アビエイター』(2005年日本公開)
マーティン・スコセッシ監督とのタッグ第2弾となった豪華な伝記映画『アビエイター』。この中で、レオナルド・ディカプリオが演じたのは、航空業界の大物で映画製作者、隠遁(いんとん)生活者でもあったハワード・ヒューズでした。
本作のヒューズは、大胆なパイオニアであると同時に不安定な変わり者でもあり、自己破壊的な衝動と戦いながらも優れたものをつくろうと努力するスコセッシ作品にお馴染みの、問題を抱えた主人公です。
ディカプリオは並外れた野望や抑えがたい女性への愛を抱き、ついには精神を病んでしまったこの歴史的人物に、本物以上の魅力をもたらしました。ディカプリオはヒューズの傲慢(ごうまん)さを演じながらも、その素晴らしい個性と人生を際立たせわれわれを魅了してくれました。
スコセッシ監督とタッグを組んだ映画の中では、おそらくディカプリオの演技が最も過小評価されている作品ではないでしょうか。
第6位:『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2009年日本公開)
『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』が見落とされがちなのは、レオナルド・ディカプリオの演技があまりにダークで生々しいためです。そして、人によっては観るのが辛い作品とも言えるでしょう。
ですが、本作でディカプリオが演じたフランク・ウィーラー(元来は自由な精神の持ち主ながらも、コネチカット州郊外での生活で少しずつ個性を摩耗させていく主人公)は、彼にとって最高の仕事の1つです。
ディカプリオと共演したケイト・ウィンスレット(『タイタニック』で共演)は、必死でお互いの個性を保とうとするカップルとして、素晴らしい演技を見せてくれました。
第5位:『タイタニック』(1997年日本公開)
何度でも言わせていただきます。ローズ(ケイト・ウィンスレット)を寒い海から救ったあのドアの板には、ジャックの乗るスペースもあったのではないか?と。
もちろん、レオナルド・ディカプリオの俳優キャリアが、あの悲劇的な死なしにどうなっていたかは誰にもわかりませんが…。『タイタニック』のディカプリオは、純粋な好青年として多くの人々の記憶に残るキャラクターです。
大規模な撮影が行われ、画期的な技術が使われた本作ですが、作品に人間らしい温かみをもたらしたのは、間違いなくあの2人の魅力的な主役です。2人の心の温かみこそが、本作の核心なのです。そして、劇場公開から20年以上経った今でも、ジャックの死が辛く感じられるのはこのためです。誰もが彼に生きていて欲しかったと願い続けている…というわけです。
当時のディカプリオと同世代で、聴衆の心を掴むことができた俳優はほんのひと握りでした。
そして、本作をこのリストの上位にランク付けした理由の1つには、ディカプリオが『タイタニック』の壁を超えられていないことも含まれます。彼は現在も、自らが1997年に設定したハードルに挑み続けているのです。
第4位:『ディパーテッド』(2007年日本公開)
レオナルド・ディカプリオにとっての最高傑作のひとつとして挙げられるのが、悪徳警官と潜入捜査官を描いたこのリアルな物語です。
マフィアに侵入する捜査官ビリー・コスティガンを演じたディカプリオは、深刻に本能的な弱さをスクリーンへと晒(さら)します(共演者にはマット・デイモンやジャック・ニコルソン、アレック・ボールドウィン、マーク・ウォールバーグらがいましたが、ディカプリオほど大変な仕事が山積みだった役どころはありませんでした)。
マーティン・スコセッシ監督とディカプリオは、現代の映画界で最も偉大かつ必然的なタッグの1つであり、彼らが3度目のタッグを組んだ本作は、2人のクリエイティブな感覚がついにマッチした作品と言えます。騙し合いのクライマックスシーンは、要必見です。
第3位:『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2003年日本公開)
聴衆は、『タイタニック』の中のレオナルド・ディカプリオを(頼まなくとも)覚えているかもしれませんが、彼自身が聴衆に対して覚えていてほしいと願っているのは、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』での彼自身ではないでしょうか。
本作は『タイタニック』から6年後に公開されましたが、その間にディカプリオが出演していたのは、あまり評価の高くない作品ばかりでした。そんなときに登場したのが本作で、彼は茶目っ気のあるウィンクを駆使する魅力的な詐欺師を演じています。
まるで自分が、聴衆にどんな風に思われているのかを把握しているかのようなディカプリオ、本作では彼の巧妙なごまかしが全編にわたって繰り広げられています。聴衆はディカプリオを知っているのか、あるいは知っていると思わされているだけなのか…が全く分からなくなるでしょう。この謎は、彼のその後のキャリアにも尾を引きます。
ディカプリオは自らのカリスマ性によって聴衆を欺き、パイロットの制服を着ることの意味やビジネスマンの特徴がスーツと笑顔だけではないことを教えてくれます。これはとにかく楽しく奥の深い物語で、おすすめしやすい作品です。
第2位:『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年日本公開)
自分には到底できないと確信できるほどの絶叫を、レオナルド・ディカプリオは見せてくれました。それは血管が破裂するほど…そんな熱い演技に共演者たちも応え、そのシナジー効果で大いに盛り上がる作品となっています。
それは絶叫だけではありません。ドラッグや自(うぬ)惚れ、道楽ぶりまで、詐欺師ジョーダン・ベルフォートというキャラクターの奥行を見事に模索し、そしてつぶさに体現した彼の演技力は見事でした。
本作のディカプリオは、自身の魅力とひっくるめてわれわれ聴衆を欺き、さらに信頼できない男なのに「それほど悪い男ではない」と思わせてくれるのです。
ベルフォートの手腕はもちろん、(ディカプリオが演じているからかもしれませんが)そのキャラクターを見れば彼を応援せずにはいられません…。ただし、高血圧で通院しているような方は観ないほうがいいでしょう。そんな中、「オレにこのペンを売ってみろ」論など、ビジネス的な学び・気づきはたくさんあるかもしれません。
第1位:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年日本公開)
クエンティン・タランティーノ監督の9作目となる本作において、ブラッド・ピットのほうが多くの注目を集めたことは異論はありません。渋みのあるキャラクターであるクリフ・ブースを、ブラピは過去数年で最高の演技で見せてくれました。そして、その演技が評価されて、オスカー助演男優賞も受賞していますし…。
それを踏まえたうえ、本作で話題を引っ張ったのがブラピであったとすれば、感情的な側面をリードしたのはレオナルド・ディカプリオと言えるでしょう。ディカプリオはかつての名声に酔いしれる落ちぶれた俳優リック・ダルトンを演じ、そのむき出しの感情には思わず涙してしまった方も少なくないでしょう。なにせダルトンは、自己嫌悪的ながら悲壮感はなく、ウィットに富む魅力的なキャラクターでしたから…。
また、ときには実に陽気な一面も見せることもありました。撮影現場で自らを叱咤激励(しったげきれい)するシーンのループ映像があれば、ぜひとも自分のパソコンやスマホの永久保存フォルダに格納しておきたいものです。
今回のこれまでのリストが証明するように、ディカプリオは自らのキャリアを通してスクリーン上に幅広い才能を示してきました。ですが、本作ほどニュアンスに富む、多くの才能を同時に発揮した作品は他にはなかったのではないでしょうか…。