名作『俺たちに明日はない』から数々の米国ギャング映画まで、ハリウッドは昔から実際にあった犯罪をもとにした重厚な物語から利益を生み出してきました。
司法から離れて個人的に犯罪者や犯罪組織に挑む主人公や、復讐心に満ちた捜査官といった題材の映画には、自然とスリルがともなうものです。そこで、その無謀で嘘のような事件が、実際に起こったことだと知ったときにはどうでしょう。そこで追加されるアドレナリンによって、われわれの興奮はさらなる高みへと誘われることでしょう。例えそこに、ある程度の脚色がなされていても…です。
実際の犯罪をテーマにしたドキュメンタリーは、『タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!』や『猫イジメに断固NO!: 虐待動画の犯人を追え』のような作品が、ストリーミングサービスで人気を博しているということから判断するに、ここ最近は飽和状態にあると言っていいでしょう。
しかしながら、映画にその実際の犯罪がリアルに描かれていればいるほど、そこの感情的距離感が生じてしまうものです。それを察している映画製作者たちは、ストーリーにいくつかの感情移入させるためのアイデアを加えていくものなのです。
そこでここに、実話に基づきながらも、より感情移入できるよう仕上げることに成功した映画の数々をご紹介しましょう。
『ブリングリング』(2013年)
ソフィア・コッポラが監督として新たなピークを見せつけた本作は、2000年代後半に数々のセレブリティーの自宅に侵入して窃盗を働いた、ハリウッドのティーンエイジャー犯罪組織を鮮やかかつ空虚に描いた作品になります。
そのセンセーショナルな予告編に惹かれなかったとしても、浅薄で虚無主義的なイマドキ女子を演じたエマ・ワトソンの演技には、魅力を感じずにはいられないでしょう。
『ブラック・スキャンダル』(2016年)
1970年代を舞台にしたこのクライム映画(犯罪を題材にした映画)の中で、ジョニー・デップは悪名高きアイルランドギャングのジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを演じています。
自らの犯罪行為をうまく運ぶために、FBIに協力するバルジャーのずる賢い二面性を描いた本作は、バルジャーの名が今もボストン地区で有名な理由を教えてくれるはずです。
『フォックスキャッチャー』(2015年)
スティーブ・カレルは、マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)とデイブ・シュルツ(マーク・ラファロ)ら兄弟のオリンピック代表レスラーに魅了される、大富豪のジョン・デュポン役でこれまでにない演技を見せてくれました。
男らしさという規範(きはん)の負の側面を、激しくも巧みに描いたこの映画本作は、最終的に殺人という結末を迎えます。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2003年)
天才詐欺師のフランク・アバグネイルの台頭を描いた本作は、スティーブン・スピルバーグ監督の映画の中でも、特にエンターテイメント性が高いものです。
主人公フランク・アバグネイルを演じたレオナルド・ディカプリオは、かつてないほど楽しくも魅力的に、不誠実なこのキャラクターを見事に演じました。
『ゾディアック』(2007年)
本作は必ずしもホラーファン(あるいは、デヴィッド・フィンチャー監督の前作『セブン』のファン)の期待に応えるような作品ではなかったかもしれません。
本作はカリフォルニア州で起きたゾディアック事件(現在も継続捜査中の未解決事件)の謎を解き明かそうとした人々のプロセスを描いています。
綿密な調査に基づいて見事に撮影された本作は、単なる連続殺人映画の枠にとどまらない、胸騒ぎのする作品です。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年)
本作はおそらく、マーティン・スコセッシ監督史上最も贅沢な映画であり、数々の犯罪をすべて面白おかしく感じさせる点が何よりも大胆で最高です。
スコセッシ監督と脚本家のテレンス・ウィンターは、詐欺的な株式ブローカーのジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)の回顧録(かいころく)の、最もセンセーショナルな部分を映画に凝縮しています。
他人のお金を自分の遊び道具とみなす、彼の頭の中を覗かせてくれる作品となっています。
『俺たちに明日はない』(1968年)
本作は米国史上稀に見る不朽の名作であり、題材となったボニーとクライドという実在のカップル同様に有名です。
米国ではこの作品が登場するまで、犯罪や性的なテーマをこれほどオープンに、かつ一方的な価値判断で描いたメジャー映画はありませんでした。
血まみれの強烈なクライマックスシーンは、今観ても驚かされることでしょう。
『ミュンヘン』(2006年)
スティーブン・スピルバーグ監督は、本作の製作で間違いなくかなりの投資を受けたことでしょう。
この3時間近くに及ぶ映画は、1972年にイスラエルのオリンピック選手団を殺した、パレスチナのテロリストに対するイスラエルスパイによる報復作戦を描いています。
興行的には、残念ながら振るいませんでした。ですが、この政治スリラーにはスピルバーグ監督の巧みな映像表現とサスペンスの手腕が存分に発揮されているだけでなく、多くの映画に欠けている人間愛と視野の広さも感じさせてくれるでしょう。
『グッドフェローズ』(1990年)
本作は、マーティン・スコセッシ監督作品における最高傑作の1本に加えるわけにはいかないかもしれません(もちろん、その可能性もあります)。ですが少なくとも、彼が長年取り組んできたことの1つの集大成ではあります。
エゴとテストステロン(男性ホルモンの一種)にあふれたこのギャング叙事詩(じょじし)は、マフィア界を生きるヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)という男の人生を描いています。
スコセッシ監督以外には、誰もつくることができなかった映画であり、将来のあらゆるギャング映画が比較対象とされるであろう作品です。
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Source /Esquire US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です