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テニス史に残るベストドレッサー5選

知ればきっとテニスを観るのがさらに楽しくなる、テニスウェアにまつわるエピソードをご紹介します。

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jimmy connors left shakes hands with arthur ashe after his defeat in the final which he lost in four sets 6 1, 6 1, 5 7, 6 4, 6th july 1975 photo by staffmirrorpixgetty images
Mirrorpix//Getty Images

ファッションウィークのキャットウォークからSW9(ロンドンの新興ファッションエリア)で見かけるスタイルまで、テニスファッションの魅力は至るところで取り入れられています。それはなぜかと言えば、そこには「親しみやすい優雅さ」があるからでしょう。きちんと洗濯され、清潔でぱりっとした白いテニスウェアほど、「着るものの手入れも行き届き、趣味のスポーツをする余裕」をアピールするものはないように思えます。

ウィンブルドンなどの大会に臨むためのウェアというわけではなくても、テニスカルチャーをルーツに持つメンズウェアブランド「パルム(Palmes)」のポロシャツと、テニスウェアにインスパイアされたアイテムを展開するカサブランカ(Casablanca)のショートパンツという組み合わせは休日のアスリート風スタイルでありながら、パブにちょっと立ち寄るのにも十分な装いになるでしょう。全般的に、テニスというスポーツ自体とテニスウェアには、上品でプレッピーな雰囲気があり、「サッカーウェアでは大胆過ぎるし、ラガーシャツでは無骨過ぎてちょっと…」と心配する人にもかなり親しみやすいもののはずです。

ですが、2023年1月にNetflixで公開されたドキュメンタリー『ブレイクポイント: ラケットの向こうに』 を観ると、テニス界のことをあまり知らなかった人は、「ちょっと気取った正統派」というような見方に、ちょっと揺らぐかもしれません。

このドキュメンタリーはテニス界の新星が、往年のレジェンドたちのような有名選手になるべく必死で努力する姿を追ったものです。選手たちの舞台裏の姿を描いたこの番組では、メンタル面の苦悩やテニスが個人的な人間関係に与える影響にも焦点を当てており、アディダスのスニーカー「スタンスミス」のタンに描かれている人物が誰かがわからない程度に、テニスを知らない人にとっても入りやすい内容になっています。

この番組は、ファッション志向の人々にもグランドスラムを中心としたテニスの話題に対応できる知識を与えてくれるもの。ということで、今回この記事でも、テニス史に残るベストドレッサー選手の一部を取り上げます。2023年5月28日(土)から開催されるグランドスラム(テニス四大大会)の一つ、「全仏オープン」が始まる前にぜひご覧ください。

1

ビヨン・ボルグ

july 1979 swedish tennis player bjorn borg after winning the mens singles final at wimbledon photo by central pressgetty images
Central Press//Getty Images

70年台に登場したスウェーデン出身のビヨン・ボルグは、伝統的なテニスウェアのドレスコードを破った先駆者です。ブロンドのロングヘアにストライプのスウェットバンド、当時のディスコ風ファッションを意識したウェアを常に着用していたボルグは、コート上でも、そしてそれ以外のシーンでも話題になりました。

数十年後に制作されたウェス・アンダーソン監督の名作コメディ映画『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2002年日本公開)に登場する、一家の次男リッチー・テネンバウム(引退したプロテニスプレーヤーの役)というキャラクターのモチーフは、「ボルグだろう」と言われています。

ボルグがフィラ(FILA)とウェアのスポンサー契約を結んでいたことは有名で、自身のイニシャル「BJ」ロゴのついたトラックジャケットや有名になった「Fila Settanta Mk1」モデルのポロシャツを着用した姿の印象が(彼を知っている人は)強いはずです。

1984年には自身のブランドを立ち上げ、ファッション面でのボルグのステータスは確固たるものになりました

2

アーサー・アッシュ

original caption wimbledon tennis 1968 arthur ashe usa photo by © hulton deutsch collectioncorbiscorbis via getty images
Hulton Deutsch//Getty Images

スポーツ選手であり社会活動家でもある例はあまりありませんが、アーサー・アッシュはその稀有な例です。

彼は1975年に黒人として初めてウィンブルドンで優勝しただけでなく、引退後の人生を市民権および人権活動に捧げ、自らがつかんだ地位を利用して、南アフリカのアパルトヘイトとの戦いを支援。貧しいコミュニティの若い世代のためにテニスをする機会や、雇用プログラムの創出に貢献しました。

それだけでなく、ファッションスタイル面でも彼は非常に優れていました。彼のお決まりのスタイルは、スタンダードなポロシャツとショートパンツに、シンプルなゴールドチェーン付きのスクエアフレームのメガネという組み合わせ。「アーサー・アッシュは、伝統的なテニスルックが常にクールである理由を証明してみせた」と言えるでしょう。彼のスタイルを再現するのは難しくありません。

プレッピースタイル好きに人気のブランド ローイング ブレザーズのクリエイティブチームは、2022年夏、アッシュを称えるブランド「アーサー・アッシュ」を立ち上げました。

3

ジョン・マッケンロー

tennis wimbledon usa john mcenroe in action during match at all england clublondon, england 6221981 7311981credit walter iooss jr photo by walter iooss jr sports illustrated via getty imagesset number x25769 tk3 r10 f11
Walter Iooss Jr.//Getty Images

ジョン・マッケンローは気性の激しさと、コート上で見せる素晴らしいボレーで知られており、1981年にウィンブルドンの審判に向かって叫んだ「You cannot be serious?(冗談だろ?)」という言葉は多くの人の記憶に残るところです。

マッケンローはプレーのみならず、ファッションにおいてもまさにボルグのライバルでした。巻き毛の頭に赤いスウェットバンド、トラックジャケットとショートパンツをコーディネートしたスタイル。2人のスタイルの明らかな違いは、マッケンローのソックス丈のほうが長いという点です。

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4

アンドレ・アガシ

andre agassi lors de la finale du tournoi de tennis de roland garros le 10 juin 1990 à paris, france photo by manuela dupontgamma rapho via getty images
Manuela DUPONT//Getty Images

自分がプレーするスポーツを、心から嫌悪しているスポーツマンの話はあまり耳にしません。が、アンドレ・アガシはそういう選手でした。威圧的な父親に強制されてコートに立っていたアガシは、「何かに抜きんでるのに、それを好きである必要はない」ということを証明した稀有なテニスプレーヤーです。

80年代から90年代にかけて彼は奇抜なウェアで反抗心を示し、ウィンブルドンの伝統的なドレスコード(全身白であることが条件)を理由に、数年間ウィンブルドンでのプレーを拒否したこともありました。こうした経緯から、アシッドウォッシュ加工(酸化剤を使った脱色)が施されたゲームパンツや印象的なマレットヘア(後ろの髪だけを長く伸ばしたスタイル)、ブロックプリントのポロシャツ、カラフルなサングラスなどのスタイルが生まれ、テニス界に反体制的な空気がもたらされたのです。

そのインパクトはあまりにも強く、ナイキは2020年にアガシと協力して有名な「チャレンジ コート」コレクションの21世紀バージョンをつくり、そのデザインを復刻させました。

5

ヤニック・ノア

jericho, ny august 28 yannick noah of france hits the backhand during a match against andre agassi in the norstar hamlet challenge cup on august 28, 1988 in jericho, new york photo by bruce bennett studios via getty images studiosgetty images
Bruce Bennett//Getty Images

80年代のテニス界のスター、ヤニック・ノア(愛称はTennis Rastelli)はウェアのスタイルだけでなく、ヘアスタイルの七変化(アフロのショートから、試合中にわさわさと揺れ動くドレッドヘアまで)でも人気を博しました。

彼は、全仏オープンを制した唯一のフランス人選手として国民的英雄の地位を確立していますが、ウィンブルドンでの練習ラウンド時にデヴィッド・ボウイのプリントTシャツを着用するなど、ウィンブルドンの伝統的なドレスコードにフランス流の反抗心を示しました。

フランスのスポーツブランド「ルコックスポルティフ(le coq sportif )」を主流ブランドに押し上げたのもノアでした。ルコックスポルティフはノアに敬意を表し、彼が使用した木製ラケットモデル「クレッシェンド(Crescendo)」を後に「ノアプロ」と改称したそうです。

そして、ノアの素晴らしい才能はこれだけにとどまらず、テニス界引退後は音楽界にも進出しています。

***

source / ESQUIRE UK
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です

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