ひとたび、「ジェームズ・ボンドを演じた俳優」という肩書き持ったなら…それを外そうと思っても、そう簡単には外せないものです。
さらに、ボンド役を演じた期間が3番目に長いピアース・ブロスナンにおいては、1995年公開の映画『007 ゴールデンアイ』に登場したボンド(ユーモアたっぷりで、ダジャレを口にするようなボンド)と自身を同一視されることがよくあるようです。
そんな厄介なボンドを演じた代償として、ブロスナンは4200万ドル(約45億3600万円)近い出演料を懐にしていたのも事実です。この類の役で得たイメージは、一生ついて回ってくるものなのです。ですが、現在66歳となったブロスナンを改めて見てみると…その服の選択や着こなし方は、もはやジェームズ・ボンドをはるかに凌駕しているのではないでしょうか。まさに、混じりけのないブロスナン自身に他ならないのです。
そんなブロスナンが、2019年9月14日に行われたナオミ・キャンベル主催の毎年恒例のチャリティーイベント「ファッション・フォー・リリーフ」に、モデルとしても活躍する息子ディラン・ブロスナンと共に出席しました(ディラン・ブロスナンのほうも、また国際的なスパイの典型とはこれ以上ないほど、かけ離れた装いで登場していました)。
まさにヒーロー…これが実にカッコよく、「ワイルド!」とさえ言えそうな出で立ちだったのです。そして一番重要なことは、これが1990年代のイギリスの大ヒット映画の装いではなく、むしろ70年代のハリウッド映画に近い装いだったという点でしょう。
まず、サングラスを見てください。
映画監督たちがよく掛けていたような、大きな色つきレンズの入ったサングラスは、ここ数年復活してきているものです。この復活は、グッチやモスコットといったブランド、そして全般的な70年代リバイバルのおかげと言えるでしょう。大きなピックアップ・トラックのダッシュボードに置かれていたようなサングラスは、現在ではスーツやタキシードを着るときには欠かせないアクセサリーになっています。
ブロスナンの出で立ちは、まさにそうした着こなしの好例であったのです。おっと、ここでヒゲの存在も忘れるわけにはいきません。
1999年公開の映画『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』のころのブロスナンは、ヒゲなど全くなく、がっしりとした顎をさらけ出していました。ところが現在では、ふさふさで手入れの行き届いた長いヒゲを生やしています。もしかしたらMI6には、グルーミングに関する厳格な規定があるのかもしれません。
もちろんタキシードについても、触れなくてはならないでしょう。
ご指摘の通り、ジェームズ・ボンドのタキシード姿はとても有名です。ただしブロスナン自身は、自分が映画の中で演じたボンドの姿に囚われてはいません。彼は自らの道を進み、慎重さなども放り出して、人生の黄昏時を利用して思い切り自己主張を楽しんでいるのでした。
Source / Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。