結論から話すと、2016年に私(オーブリー・グレンキャンプ)は乳がんと診断され、大手術を受けました。「きつい検査だ」と言われているマンモグラフィを受けたあと、計6回の化学療法も受け、髪の毛はほとんど抜け落ちてしまいました。がんを申告されたときには「将来、子どもを授かることができるのか?」と、とても不安に思ったのは事実です…。

 そして、皆さんに注目してほしい点が、「私は男性である」ということ。そして「乳がんを克服した」ということです。そう、世間のイメージでは「女性がなるもの」という固定観念にとらわれている方が多い乳がんに、黒人男性である私はかかったのです。
 
 「乳がんとは女性がかかる健康問題」と思っている人も、まったくの間違いというわけではありません。たしかに乳がんの発症率における男女比は、1:100とされています。アメリカがん協会(ACS)によると、今年乳がんだと診断された男性は約2600人。これは乳がん患者全体の、1パーセントにも満たないそうです。同じくACSのデータによると、乳がんで亡くなる可能性がある男性は500人、それに比べて女性はなんと41760人でした。

 よって、乳がんは主に、“女性の病気”と言ってもいいでしょう。しかし、そう考えてしまうのは、男性にとってとても危険なこととも言えます。

 男性である私が、どのような気持ちで自分を乳がんを受けとめたのか…を、順を追ってお話しします。

私が乳がんを見つけたのは、多くの人と同じように胸筋(胸と呼んでも構いませんが)のところにしこりを感じたからです。

 正確には、妻のステファニーがしこりを見つけました

 自分で定期的に、胸のチェックをしていたわけではなかったので…。他に気になる症状もありませんでしたが、妻が心配しているので念のため病院に行くことにしました。

 当時担当してもらった医師は、特に心配しているようには見えませんでした。ダイエットと運動でかなりの体重を落としたところだったので、医師は脂肪組織が残っているだけだろうと思ったようです。それでも大事をとって、専門家に行くよう紹介状を書いてくれました。

 マンモグラフィは、楽しいものではありません。言うまでもないかもしれませんが、待合室に座って、胸の写真を大量に撮られるれるのを待つ不安な気持ちは、できれば二度と味わいたくないものです。それから正確な写真を撮るために、引っ張っられたり位置が調整されたり…かなりきつい経験でした。

 さらに私がマンモグラフィを撮りに行った場所では、男性の診察にあまり慣れていないようでした。女性が診察用ガウンに着替えるため、更衣室に行ったりするのを見ていましたが、私に対しての指示は何もなかったのです。

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 診断結果はすぐに出ました。

 何か問題が見つかったようで、「生体検査のために病院に来るように」と言われました。が、ちょうどダイエットのための6週間のブートキャンプチャレンジを始めたところで、最後までやり遂げたいと意気込んでいたところだったのです。生体検査をするということは、運動を何日か休まないといけないので医師に相談したところ、「そのチャレンジが終わるまで待っていい」と言われました。なので、無事チャレンジはやり遂げることができました。

 しかし、その喜びもつかの間、チャレンジが終わった翌日私は生体検査に向かい、その数日後に出された結果で、「ステージ2のHER2型乳がん」だと診断されました(HER2は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2の略です)。

 そして、乳がんの中でも、最も進行が早いタイプだったのです。

医師との電話を終えると、すぐに職場を出てしばらく車の中に座り、状況を理解しようとしました。

 健康上の不安を感じたのは、これが初めてではありませんでした。

 19歳のときに、腫瘍を取り除くため開胸手術を受けたことがあるのです。しかし、今回は違いました。男性も乳がんになるというのは聞いたことがありましたが、まさか自分の身に起こるとは思っていませんでした。

 しかも、家系的なリスク要因もなかったのです。私はそれまで健康な33歳の男性であり、家族に乳がんにかかった人はいませんでした。私が最初であり、一族唯一のがん患者になってしまったのです。

 家族はもちろんショックを受け、心配していました。が、「なるべくポジティブに、明るく励ましていてほしい」とお願いしました。いつもと同じように接してほしかったのです。がんになったとは言え、私は私なのですから…。

 そして、がんだからといって、自分の好きなことを辞めたくなかった私は、厳しい13キロの障害物レースであるスパルタンレースを初めて完走しきりました。そのときも、私のお願いどおりに家族は精一杯応援してくれました。ゴールラインを駆け抜けたときが、私が今までで最も誇らしいと感じた瞬間でした。

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 特に妻のステファニーには、とても辛い思いをさせてしまったと思います。私のことはもちろん、私たちの将来のことを心配していました。

 と言うのも、彼女は子どもが欲しいと話していたのですが、「化学療法によって生殖能力に影響が出るかもしれない」と医師に言われてしまったからです…。治療を始める前に、精子バンクに行くことをすすめられました。が、残念ながら私にはその時間がなく、すべてに打ちのめされたような気分でした…。

2016年5月、両乳房切除手術を受けました。

 手術の際に医師は、がんがすでにリンパ節に転移していることを確認できたそうです。結果、胸の腫瘍だけでなく、3つのリンパ節も除去する必要がありました。そして幸いにも、すべてのがんを取り除くことはできたのです。

 さらにその週は、他にも2つの奇跡が起こったのです。

 手術の2日前、妻のステファニーが妊娠していることが判明しました。これには、「神様からのサプライズだ」と正直、いままでで最大の感謝をしました。

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 そうして手術の後も5回の化学療法を行い、現在は抗エストロゲン薬による治療を受けています。手術と治療は成功し、検査でも再びがんは見つかっていません。

 現在、2歳になった娘を見るたびに、「彼女の父親になれたこと」、そして、「彼女の成長を見守れること」に心から感謝しています。

がんになって一番辛かったのは、男性の乳がんに関する情報がほとんどなかったことです。

 乳がんの早期発見を啓発するあのリボンも、ピンク色をしています。今回私は、「乳がんにかかった男性」という認識でしたが、“黒人男性”として考える必要もあったかもしれません。

 と言うのも、乳がんの生存率と人種や背景に関する統計はたくさんあります。(黒人女性同様に、乳がんとなった黒人男性は他の人種に比べて、生存率が思わしくないようです)

 正直、自分が診断されて治療を受けている間は、そんなことはまるで考えていませんでした。しかし現在では、男性の乳がんについての啓発がもっとあって然るべきだと思っています。「男性も乳がんにかかる可能性がある」ということすら知らない人に、これまでたくさん会ってきましたので。

 また、男性にもセルフチェックをする重要性を知ってほしいと思っています。そして、医師に男性の乳がんについて質問することをためらわないでほしいのです。珍しいケースとは言え、情報を得ることはとても重要なことです。もし体のどこかにしこりを見つけたら、何でもないだろうと見過ごすことなのせず、すぐに病院へ行って相談すべきです。それは、実体験として乳がんを患った私だからこそ言えることかもしれませんが、現に男性である私が患った事実をここで知った方には、十分理解していただけると思うので言わせていただきます。

 そして最後に、パートナーのサポートというものの大切さを、この機会に再確認していただけるとうれしいです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
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男性の乳がんに関する詳しい情報は米国国立がん研究所(NCI)の日本語版「がん情報サイト」もぜひ合わせてご覧ください。

From Women's Health US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。