もしあなたが、自分の職場環境の有害さに体力的にもメンタル的にも健康が蝕(むしば)まれていると感じ、ホトホト疲れているなら…あなたは決して一人ではありません。

ここ最近米国で問題視されている「toxic workplace(“毒職場”と言わせていただきます)」をご存じでしょうか。現在この言葉は、ウィキペディアにも掲載されているほど英語圏ではポピュラーなキーワードになっています。具体的には、ゲッティ・イメージがリンクトインに投稿した報告を確認すれば、「メンタルヘルストピック関連の写真の売上が『メンタルヘルス』というキーワードとともに156%もアップ。その一方で、同時に『従業員への感謝』という検索キーワードも上昇した」とのこと…。

2022年10月20日(木)に第21代アメリカ公衆衛生局長官であり、アメリカ公衆衛生局士官部隊で副提督(中将)を務めるビベック・H・マーシー氏が、「虐待的で熾烈(しれつ)な競争が蔓延(はびこ)る職場環境は人間の健康を侵す可能性がある」と注意を促す報告書を公表したことを「ワシントン・ポスト」は紹介しています。

そして、それと同時にマーシー氏は、従業員の精神的および身体的健康をよりよく保護するためには、雇用主は職場の文化と慣習をどのように変えるべきかを詳述したロードマップも公表しています。

ではここで、その報告書の概要を確認してみましょう。

毒職場
Jason Koerner//Getty Images
マーシー氏はアメリカ公衆衛生局士官部隊に勤める。ジョー・バイデン大統領のCOVID-19諮問委員会の共同議長を務めた経験もあり、世界保健機関の執行理事会の米国代表。

「私たちの仕事と環境とのつながりは、より明確になってきています」とマーシー氏はコメントしています。さらに、「現在、より多くの労働者の皆さんが家計のやりくりばかりでなく、慢性的なストレスに対処すること、さらに仕事とともに浮上する私生活からの要求も加味した上でバランスを取らなければならないことに苦しんでいることを危惧しています」と加えています。

続けて、「これは、メンタルヘルスにおける問題だけではないのです。慢性的なストレスは心臓病、がん、そして糖尿病などを含む身体的状態をもたらすリスクもあります。そして労働者の健康が悪化すると、職場の生産性や創意工夫にも影響を与える可能性があります」と、マーシー氏は報告書の冒頭で述べています。

公衆衛生局長官室から発表されたこの報告書には、米国の労働者における「大量辞職時代(Great Resignation)」「静かな退職(quiet quitting)」、そしてうつ病や不安障害の報告などのワードを引き合いに出しながら、パンデミックを機に働き方を見直すことを目的とした勧告も発表しています。

そこでマーシー氏は、このパンデミックによって広がった“会社環境の再考”および“経営環境の構造的改革”が推し進められているこのタイミングで、「雇用主たちは職場を“幸福のエンジン“”に変えるべきだ」と述べています。

では次に、職場がどれだけ有害(職場での毒)なのか? そこからどうやって心身の健康を守るべきか? そして、雇用主がすべきこととは? を紹介します。