骨粗鬆症の治療のために開発された薬に、思わぬ効能があるようです。

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  A Miracle Cure For Baldness Could Be On The Way, According To Scientists

 更衣室の鏡の中で、髪の薄くなった後頭部を発見したとき…それは自分の毛が薄くなりつつあるのを自覚すること以上に、冷たく湿った死への予感と感じる人も少なくないでしょう。 

 毛髪の減少に対して、現段階で正々堂々と主張できる対処法としては、「思い切ってスキンヘッドにするか」、「坊主頭にして毛の長さを少しずつ短くしていくか」、もしくは「死ぬまで昼夜を問わず帽子をかぶり続けるか」しか選択肢はありません。 

 しかし、今春に発表された新たな研究論文によれば…男性型脱毛症との長~い戦いにおいて、ようやく科学が勝利を収められる可能性が出てきたそうです。「PLOS Biology」に論文が発表されているその研究とは、「現在市場に出回っているどんな治療法よりも、優れた治療法を見つけだす」ということを目標に掲げたものだったのです。 

 同論文の概要には、「毛髪の成長不良が、大きな心理的負担になることが往々にしてある」との指摘が。例としては、「自分の頭のてっぺんに反射した光に、目が眩んだふりをしてふざける」ような浮かれた友人たちへの対処は、もはや疲れるだけ…とのことです。 

 そうした点も考えあわせ、この論文で発表されているように「骨粗鬆症の治療のために考案されたある化合物が、頭皮にある毛包の成長を促進する可能性」の発見は、実に良い知らせと言えるでしょう。(次ページへつづく)

免疫抑制剤「シクロスポリンA」には、メリットとデメリットがあった

 この研究では、「シクロスポリンA」と呼ばれる免疫抑制剤を使って、新しい毛髪の成長を促す分子のターゲットを見つけようとしました。「シクロスポリンA」が人間の毛髪の成長を促すことは、すでにいくつかの研究結果で知られています。しかしながら「シクロスポリンA」は有毒であり、ハイリスク・ハイリターンを気にしない人以外には、これを使用するということはあまりいい考えではないでしょう。 
   

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 研究チームは次に分子の配列を分析した後で、毛髪の成長を抑制するタンパク質を見つけ、そして「WAY-316606」という化合物を使って、このタンパク質の働きを止めました。そして、頭皮の毛包サンプル40例に「WAY-316606」を使って、この化合物に「毛髪のサイクルの成長フェーズを延長」し、「人間の毛髪の成長を促進」する効能があることを発見しました。 

「この新しい作用因子は、これまで抜け毛という文脈で考慮されたことが一度もなかったものですが、それが人間の毛髪の成長を促進するという事実は、次の理由からエキサイティングなことです。この作用因子には、いつの日か抜け毛に悩む人々の状況をほんとうに改善することができる潜在力があります」と、この研究チームを率いたマンチェスター大学のネイサン・ホークショウ博士は「インデペンデント」紙に語っています。 

 英国皮膚科医会はBBCに対して、次のように語っています。

「研究者らが述べているように、抜け毛は非常によくある疾患であり、患者が自尊心や自信をなくすなど、感情面の健康に大きなダメージを与える可能性があるものだ ― その点を認めた上で、この治療法が抜け毛に悩む人々に使われるようになるまでには、さらに多くの研究が行われる必要がある」とのことです。 

  
 この研究は毛髪の減少に悩んでいる多くの男性にとって、嬉しい発見となることでしょう。今後のさらなる追加研究の結果にも、注目したいところです。

By Tom Nicholson on May 9, 2018
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ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊