男性の薄毛や抜け毛に対する正しい対処方法は？

　効果が証明された治療法としては、ミノクシディルの溶液もしくはクリーム（これらは処方箋がなくても入手可能）やプロペシアの錠剤（処方箋が必要）があります。
　
　これらの薬を使えば、髪の毛の後退を遅らせたり止めたりすることができ、ときには、育毛を促すことさえ可能です。髪が薄くなり始めてまもない人は、この対処法をまず試してみましょう。ただし、ご自分の薄毛や抜け毛が実際に「男性型脱毛症」によるものであり、なんらかの病気（たとえば甲状腺の異常や鉄分の不足）によって生じたものではないことを医者に確認した上で、これらの治療を試すことが大切となります。

　毛髪の移植にはいくつかの異なるやり方があり、結果にも大きなバラつきがあります。植毛手術は職人芸であり、適切な外科医を見つけ出すのは簡単なことではありません。また、オンライン検索してみつかる「ホワイトノイズ」（真偽が定かでない情報のこと）を上手に選り分けながら、正しい情報を見つけ出すことに苦心するはずです。　
　
　もっとも一般的な移植のテクニックとしては、メスを使わない植毛「FUE」と、標準的な施術法である「FUT」という2つのやり方があります。「植毛」と聞いて、他人の髪の毛を植え付けるのかといぶかしむ人もいるかもしれません。しかし実際には、本人の頭の後ろや横のほうから抜いた毛髪を上部や額の部分に移植するという方法をとります。　

　
　どれほど多くの有名人が髪の毛の移植をして、抜け毛や薄毛をカバーしているかというのは、おそらく皆さんにはわからないでしょう。植毛をしても、大抵は気づかれないからです。「FUE」法として知られるテクニックなら、髪の毛を「剃らずに」行うことも可能で、複数回の手術で完全に自然な外見となるため、植毛したことは誰にもわかりません。しかし、額の生えぎわの後退では済まないほど、抜け毛や薄毛が進んでしまっている場合は…もっとたくさんの髪の毛の束が必要で、その場合も軽度の場合と同様の結果を得ることは可能です。が、手術後の回復の初期段階では、植毛したことがよりはっきりとわかってしまいます。　
　
　いろいろなことを調べ、植毛を専門とする複数の外科医と話をしたことで、この業界が不透明であり、さらに規制もあまり受けていないビジネスだということがわかってきました。

　
　髪の毛の悩みを抱える男性のなかには、より安価な代替方法を探して「メディカル・ツーリズム」と呼ばれる海外旅行ツアーに参加する人もいます。ただし、こうしたツアーでは、満足できない結果に終わることもあり、長い目で見るとかえって高くつく場合もあります。また、腕のいい外科医とそうでない外科医とを見分け、どのクリニックがほんものであるかを知ることは信じられないほど難しいものです。目抜き通りに診療所を構えるヘアクリニックの多くが、必ずしも信用のおける医師会などの団体に登録しているとは限りません。また、時には医師の資格をもたないスタッフが働いている場合もあるのです。　
　
　私は英国で植毛手術の第一人者とされるエドワード・ボール医師に、私の患者のひとりが「FUE」法による植毛手術を受けたいというので紹介し、その彼の植毛手術プロセスをフォローしたことがあります。そのとき同医師は手術前に、「現代の手術に関するテクニックを使い、生え際のデザインにアーティスティックなアプローチを行うことによって、完全に自然に見える頭髪を安全に生み出すことができます」と約束していました。　
　
　ボール医師による植毛手術の結果は、驚くべきものであったと言っても過言ではないでしょう。私の患者は、自分が手術を受けたことなど誰にも知られないまま、その結果を手に入れたことに大満足していました。　
　
　ハゲや生え際の後退が、男性の心理に破壊的な影響を与える場合もあります。そして、望ましい結果をもたらす治療法が利用できるというのは、そんな男性たちの不安を軽減することに役立ちます。がただし、適切でない外科医やクリニックを選んでしまった場合には、手術が大きな苦しみをもたらすこともあり得ますので、ぜひとも慎重に慎重を重ねてください。

　「FUT」法 (Follicular Unit Transplantation、毛包単位植毛) は、後頭部から抜き取った少量の髪の毛を、顕微鏡で見ながら注意深く選り分けてたくさんの束をつくり、それを頭の上部や額の部分に移植するというものです。　
　
　この方法は、一部の外科医が植毛する髪の毛の束を比較的多く用意する場合に使っているものですが、移植する毛髪があった部分が線状の傷跡となって残るため、「それを隠すのに長めの髪型をしなくてはならない…」というデメリットもあります。

「FUE」法（Follicular Unit Extraction、くり抜きグラフト採取）では、後頭部の毛をわずかに剃った後で毛包を抜き取ります。髪の毛を剃らないテクニックもありますが、このやり方で手術できる外科医はほんのわずかしかいません。抜き取られた毛包は、頭の上部や額の部分に移植されます。移植する髪の毛の束が個別に引き抜かれることから、このやり方では治療に必要な時間が余計にかかる場合もあります。が、傷跡として残る部分が少なくてすむというメリットがあります。　

　
　植毛手術を依頼する外科医を探す際には、国際毛髪外科学会（The International Society of Hair Surgery）や米国毛髪外科学会（The American Board of Hair Surgery）といった団体から認められた医師であるかどうかを確かめることが重要です。　
　
　また、手術を依頼しようとする医師が、医学部を卒業し外科医としての正式なトレーニングを積んでいればさらに安心です（英国外科医師会に参加していれば、正式な訓練を終了した医師ということになります）。　
　
　さらに、hairlossexperiences.comのような、役に立つオンラインフォーラムもいくつか存在します。こうしたフォーラムでは、手術を経験した患者たちが自らの体験を共有し、ほかの人たちがきちんとした情報に基づいて判断を下せるように力を貸しています。こうしたフォーラムでの情報収集は、手術でどんな結果が得られるかについてのイメージをつかんだり、安心できない医師がいるかどうかを知るのに役立つことでしょう。　
　
　ボール医師は、「治療に関して複数の選択肢を探し、自分の選んだクリニックに不安を感じずに済むよう正確を期すこと。そして、実際に手術を行う医師と事前に会い、手術に関するすべての処置を本人が行うかどうかを確認しておくこと（手術の一部を医師免許をもたないスタッフに任せる場合もあるため）」とアドバイスをしました。

Photograph/ Getty Images　
By Dr. Tim Rebens
on January 15, 2018
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Hayashi Sakawa