「朝食を抜くと仕事や勉強にあまりいい影響がない」という話はよく聞きますが、「朝ごはんに食べたものによって、行動や態度にも影響する可能性がある」、という研究結果も発表されていたのでした…。

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朝ごはん

 一日の食事のなかで、もっとも重要と言われている朝食。「朝食を抜いてしまうとエネルギーが不足し、集中力が散漫になる」ということはご存知の方も多いでしょう。ところが…。 

 ドイツのリューベック大学で行われ研究が、米国科学アカデミーの機関誌『Proceedings of the National Academy of Science』に掲載されています。これによると、「朝食は集中力だけでなく、その人の行動や態度にも影響を与える可能性が大いにある」ということなのです。朝食に食べる炭水化物の割合が多すぎると、寛大な心が失われ、さらには、普段よりアグレッシブとなる傾向にあるのだとか…。 

 上記の考察が引き出されたのは、科学者たちがボランティアを募って「ローカーボダイエットが行動に及ぼす影響」を実証するための「究極のゲーム」実験を敢行したときでした。その詳しい内容を説明しますと…。

 まずゲームを行う前に、集まった87名のボランティアに対し「朝食に何を食べたか?」をヒアリングします。その後、2人1組のペアになってもらい、「最後通牒ゲーム(ultimatum game)」を行うという運びになっていました。そして、そのゲームの内容とは…。

 ペアのうちのひとりAに、まず幾らかのお金が与えます。そこから2人で配分するようにと指示を出します。その配分を決めるのはA。で、AはパートナーのBに配分金額を提示し、Bがその配分に納得すれば2人はその割合でお金をもらうことができるわけです。ここでポイントは、Bが拒否すれば、2人ともお金をもらうことはできない…という究極の選択に近い形になっているところなのです。

 実験前の予想では、「この条件なら、ほとんどの人は自分の配分が少ないと感じても提示された金額に納得するだろう」と思われていました。ですが、ふたを開けてみれば…配分に同意したのは「低炭水化物の朝食を食べた人」で76%、「高炭水化物の朝食を食べた人」では47%という結果になったのです。 

 さらに続けて、24名のボランティアに高炭水化物の朝食、もしくは低炭水化物の朝食を食べてもらい、2日間にわたってモニタリングしました。その結果によれば…“寛大な”判断を下した方は「低炭水化物の朝食を食べた人」で40%、「高炭水化物の朝食を食べた人」では31%に。この数値により、上記の考察が紡ぎだされたわけなのです。

国も政治も人間関係も…すべては、バランスよくすることが大事なのですね。

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 この研究報告では、食事の栄養バランスが、私たちの社会的判断能力に与える影響にも触れています。 

 「この実験結果は食事が体にもたらす影響に、新たな光を投げかけています。また、これは栄養不足という地球規模の問題と同様に、反社会的行動などの問題に新たな視点与えるものでもあります。栄養不足は健康を害するだけでなく、社会的判断能力にもネガティブに働いている可能性があるということを示しているのではないでしょうか。そうした背景を考えると、今人気のあるさまざまなダイエット法にも、その内容に応じて注意する必要がいろいろありそうです」と記せられています。

 
 一般的に低炭水化物ダイエットを実践する人は、タンパク質を多く摂る傾向にあるため、脳内ホルモンのドーパミンが多く分泌するとも言われています。低炭水化物ダイエットを実践する人たちの血液を調べたところ、ドーパミンやその原料となるチロシンの増加を示す数値が記録されたのでした。そのことが、“寛大な”心をもちやすいことの要因のひとつとし、今回の考察へと導かれたのです。

 とはいえ、まだ始まったばかりの実験です。「まだまだ、さらなる検証を行う必要性がある」と、ロンドン大学(University College London)のバハードゥル・バーラミ教授は語っています。

 いずれにしろ偏った食事をすれば、あらゆるところに影響を及ぼす可能性があるということなのです。心身の健康の目指すためにも朝食は欠かせないのと同様に、いやそれ以上かもしれません。1日を通しての栄養バランスも、今後は深く考慮した上で食事を摂っていくようにすべきですね。

From Country Living UK 
Photograph/Getty Images
Translation/Reiko Kuwabara