『007 カジノ・ロワイヤル』を思い出してみると、ジェームズ・ボンドが乱暴に乗り回していたアストンマーティンは多くの点で、この映画のどんな味方よりもボンドを助けてくれたと言っても過言ではありません!
自動車ニュースサイト「Evo」によれば、そんなボンドのスマートなスーパーカーの登場には、「007」シリーズのプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリ氏が深く関わっていたそうです。
というのも、大物プロデューサーであるブロッコリ氏は、開発中のアストンマーティン「DBS」を大いに気に入って同社に頼み込んだという話。まだ製造段階になかったこの車を「映画のために作ってもらたい」と懇願し、そして実現でしたのでした。
「アストンマーティン社のプロトタイプ制作工房は、ありったけの押出成型されたアルミニウム材を投入して、クローズアップ写真の撮影用と軽いドライブのため用に、2台の「007」向け『DBS』を手作業で組み立てました」と、「Evo」には書かれています。
写真:シリーズ最新作『007 スペクター』での超高速カーチェイスシーン。こちらでは、アストンマーティン「DB10」がボンドカーに起用されています。SPECTRE (C) 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc., Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
しかし、この映画の脚本家が考えていたのは、アストンマーティン社が予想していた「軽いドライブ」などで片づけられるものではありませんでした。
特に、ボンドがヴェスパー・リンド(ヒロイン役の連絡係)を連れ去った車を追跡し、縛られて路上に放り出された彼女を避けるために急ハンドルを切るシーンでは、ボンドのアストンマーティンは派手に横転することとなりました。この場面は、非常に撮影が難しかったといいます。
20cmから45cmへと変更されたのでした。
「Evo」によれば、スタントチームはまず車を横転させるために、およそ20cmの傾斜台を用意したとのことです。これはオンラインゲーム「ラリークロス(レースとラリーを組み合せた自動車競技)」のクラッシュシーンを参考にしたとのこと。しかし、「DBS」は非常に安定性が高く、思ったように横転しなかったのです。そこで何度も横転する衝撃的なシーンを撮影するため、傾斜台はなんと45cmの高さに修正されたのでした…。
しかし、それでも「DBS」はこれに耐えたということ…。最終的には車体の底に、加圧窒素によって金属ピストンを押し出す装置が取りつけられ、無理やり横転させることになったということです。
【その横転シーンがこちら!】
手順的には、的確なタイミングで「DBS」に乗ったスタントマンが急ハンドルを左に切ります。と、その同時に車体底の金属ピストン装置が作動して、地面を叩くことにより車体が傾くことに…。そうして、そのシーンは見事に完成したのです。それはスタントチームの想像をはるかに超えた衝撃的なシーンとなりました。これは自動車の横転におけるギネス世界記録に認定されているほどですから…。
きっと次回の「007」シリーズでは、この記録を塗り替えようと必至にスタントチームがプランを練り上げることでしょう。安全を祈りながら、最高のシーンを期待しております!
From ESQUIRE UK 原文(English)
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。