もともとは、ドイツ・バイエルンの交通部隊でパトカーとして勤務していたこちらのクルマ。

 引退後には、ドイツからカリフォルニアへと遠征していました。輸入したのは、1978年から1990年にかけてドイツ・ヴェルツブルクに仕事で滞在していた俳優のジェリー・サインフェルドです。
 

instagramView full post on Instagram

 
 彼をあまりよく知らないという人もいらっしゃることかと思うので、ここで少々説明しますと…。

 アメリカ人のコメディアン・脚本家・俳優として、90年代に広く活躍していたジェリー・サインフェルド。中でも彼の代表作と言われているドラマが『となりのサインフェルド』で、脚本と主演を務め、自ら本人役を演じていました。ドラマのタイトルに自らの名前を入れるという独創的なアイディアを持ち、「米国では4人に1人は観たことがある」と言われるほどの人気ドラマとなっていたのです。

 
 では、クルマの話に戻りましょう。このクルマが一躍脚光を浴びたのは、ドイツのポリスアクションドラマ『Alarm of fob Cobra 11 / アウトバーンコップ』に登場してからになります。

 同ドラマは、なんと22シーズンも続く人気長寿ドラマ。1996年3月から始まって、ドイツでは現在も放送されているのです。日本でも『アラーム・フォー・コブラ11』というタイトルで放送されていましたので、もしかすると、このパトカー自体記憶に残っている人がいるかもしれませんね…。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
1979 VW German Police Beetle - Jay Leno’s Garage
1979 VW German Police Beetle - Jay Leno’s Garage thumnail
Watch onWatch on YouTube

「ドラマでこのクルマの存在を知った」という人にとっては、その外観から「ドラマ仕様の特別なパトカーではないか」と思っている人も多かったことでしょう。でずが冒頭でも述べたように、この小さな45馬力のフォルクスワーゲン「ビートル」は、実際に2人の警官を乗せて何十年にもわたって交通管理を行っていたのです。

 これはサーキット場のニュルブルクリンクで、ポルシェ「911」や「914」が消防車として活躍していたことと同様、これはあまり知られていない事実であり、ドイツというクルマ大国の余裕というか茶目っ気とも言えるかもしれませんね。中々ロマンティックな話ではないでしょうか。

 ドイツ警察によれば、この緑と白の「ビートル」は1978年から1990年ごろまで、ドイツのヴェルツブルクやバイエルン州など幅広い地域で導入されていたそうです。
  

Land vehicle, Vehicle, Car, Motor vehicle, Classic car, Coupé, Volkswagen beetle, Antique car, Classic, Sedan, pinterest

    
「私は1987年〜1991年ごろにドイツのヴュルツブルクに住んでいたんだけど、仕事で街へ行くときにまさしくこのやろう(クルマ)をほとんど毎日見ていたよ!」と、YouTubeユーザーのマイケル・ロペスさんはこのことを証明する発言をしてくれています。

 2018年の現在では、ご覧のように実に可愛いらしいクルマですが、当時の警察車としての記憶が鮮明な彼にとっては、その口調から(スラングである「damn」という単語が挟まれているので)…あまり良い思い出ではないようですね(笑)。

この「ビートル」は、サインフェルドが所有しているわけではありません

 では、警察を引退したのち、なぜこのクルマはドイツから遠く離れたカリフォルニアで居を移したのでしょうか? 前述のとおり、カリフォルニアへとクルマを輸入したのは俳優のサインフェルドです。
 

 
 彼はヴィンテージカー愛好家としても知られています。「ドラマで稼いだお金は、ほとんどクルマのコレクションに回している」と言われるほどのマニアぶりですので、自らのコレクションに加えているのだろうと思っていると…。実際は違いました。実はこのクルマ、現在は彼が所有しているわけではありません。

 そもそもは、サインフェルドがプロデュースする番組『ヴィンテージカーでコーヒーを』でこのクルマを輸入し、番組出演をするようになったのです。同番組では、ゲストに合ったヴィンテージカーでゲストを迎えに行き、コーヒーを飲んだりドライブをしたり…というタイトル通りの番組になります(同番組が気になる方はネットフリックスでご覧いただけます)。

 その後どういう経緯かはわかりませんが、『となりのサインフェルド』でセインフェルドと仕事をしていた脚本家のスパイク・フェレステンのガレージへと運び込まれ、現在はフェレステン家の一員として大切に保管されてようです。

 余談ではありますが、1983年公開のアニメ『未来警察ウラシマン』では、西暦2050年の大都会ネオトキオ(東京の進化系!?)にワーゲンの警察車両が登場しています。もし、日本警察がワーゲンを採用したら、こうなるのでしょうか!? こちらもぜひともご確認ください。

Road and Track(原文:English)
Translation / Mirei Uchihori
※この翻訳は抄訳です。