2018年5月18日にウィンザー城で行われた挙式の後、ハリー王子とメーガン・マークル妃はスタイリッシュな演出で披露宴へと向かいました。ハリー王子はタキシード、メーガン妃はステラ マッカートニーの白いドレスへと着替え、2人はビンテージのコンバーチブル、ジャガー 「Eタイプ コンセプト ゼロ」に乗り込んだのでした。
ケンジントン宮殿公式アカウントのツイート内容
「サセックス公爵夫妻はウィンザー城を出発し、フロッグモア・ハウスで行われるウェールズ公(チャールズ皇太子)主催の披露宴に向かいます。乗り込むのはシルバーブルーのジャガー『Eタイプ コンセプト ゼロ』。この自動車はもともと1968年に製造されたものですが、電気自動車に改造されています」
このコンバーチブル「Eタイプ コンセプト ゼロ」は現在、電気自動車に改造されているのです。
『ロード&トラック』誌によれば、この自動車は「Eタイプ」シリーズ1.5のボディをベースに、コベントリーにあるジャガー・ランドローバーの「クラシック・ワークス」(同ブランドのクラシックカー向けの大規模レストア施設)で、電気自動車への改造を施したものだとのことです。ですが、この自動車には1つだけ妙な点があります。というのも、右ハンドルが一般的な英国向けのモデルとは違い、左ハンドルなのです。
「デイリー・メール」紙は、このジャガーがもともと海外に輸出するために製造されたものであった可能性を指摘。また、『オート・クラシックス』誌は、このジャガーが以前に米国製V8エンジンを搭載していたという話を伝えています。
つまり、このジャガーはもともと米国向けに作られたもので、このモデルを使ったことにはメーガン妃の母国である米国への敬意を示すという意図も含まれていたのかもしれません。あくまでも推測ですが…。「ロード&トラック」誌のデジタルディレクターを務めるトラヴィス・オクルスキ氏によれば、「ジャガー『Eタイプ』はすべて、イングランドの工場で製造されていた」と言います。
さらに、「右ハンドルか左ハンドルかはどの国で売られるかによって変えられ、イングランドやオーストラリア、日本向けでは右ハンドル、米国やカナダ、欧州諸国向けには左ハンドルになっていました」と、オクルスキ氏は加えて解説してくれました。また、「ハリー王子とメーガン妃が乗り込んだモデルは『Eタイプ』のシリーズ1.5と呼ばれるもので、米国とカナダでのみで販売されましたものです。そういうわけで左ハンドルなんですね」とオクルスキ氏。
この様子を見た自動車マニアたちも、この左ハンドルのモデルには言及せずにはいられなかったようです。
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「待ってくれ、左ハンドルだって? ジャガーのクラシックカー、それもイングランドで。そんなことが許されるのだろうか」
ツイート内容
「間違いなく合格点でした。ですが、ハリー王子が乗っていた車のハンドルが、どちらにあったか気づきましたか? 英国車のジャガーであるのに、米国向けに作られたモデルがイングランドで運転されるとは。英国王室ですよ。英国にふさわしい右ハンドルのモデルを見つけられるだけの資源はもっているはずなのに」
ツイート内容
「まったく重要なことではありませんが、この英国の王族が運転する英国製のジャガーが、米国のように左ハンドルなのはなぜなのか、誰かわかりますか?」
「ザ・サン」紙によれば、この自動車はレンタカーでこの日のためだけに2人が借りたものだと言います。ちなみに、その価格はなんと35万ポンド(約5200万円)。実際、この車が左ハンドルのモデルであったことは、2人にとってはあまり重要ではなかったのかもしれません。
おそらく使ったのは、挙式の日だけだったのでしょう。
このクルマについて、もう1点気づかれた方はいましたでしょうか。見逃している人も少なくないのでは? それは自動車のナンバープレート「E190518」です。「その数字は、2人の結婚式の日になっていた」というわけです。
このクルマは私有地でのみ運転され、公道を走るわけではなかったこともあり、ちょっとした遊び心を発揮したのでしょう。
今回、そんな話題を集めているジャガー「Eタイプ コンセプト ゼロ」の写真を集めました。ぜひそのレアな姿を、微笑ましいエピソードとともに目に焼きつけておいてください。
「Eタイプ コンセプトゼロ」のハンドルを握って、アクセルを踏んだハリー王子。コンバーチブルタイプは、そよ風が気持ち良い春の季節にピッタリです。
と、幸せな気分のおすそ分けをしていただきながらも、ちょっとこのクルマに込められた意味があるのか? 考えてみました。すると、ありました。あくまでも仮説ではありますが。
そう、クルマはシルバーブルー…ここにヒントがありました。まず思ったのは、「英国王室の公式カラーはブルーだから、当然の選択かな…」と。でも、もっとこだわって言うなら、「英国王室の公式カラーであるブルーは、もっと濃く鮮やかなブルーのはず。いわゆる『ロイヤルブルー』ではないか…」という疑問から、次へと発展していったのでした。
その次とは…英国王室の財力があれば、このクルマを「ロイヤルブルー」に塗り替えることもや容易いはず。なるほど、これはあえて塗り替えず「シルバーブルー」のままで公開したのだな…と。ならば、これはもしや、英国王室が所有するクルマではないのか? いわゆるリースではないか? …そのとおりでした。
【写真集】ジャガー「Eタイプ コンセプト ゼロ」
もう、ここでお気づきの方もいるかもしれません(あくまでも、「エスクァイア・デジタル」の推測を、です。事実は定かではありませんので)。このジャガー「Eタイプ コンセプトゼロ」には、結婚式における欧米の慣習となっているおまじないが集約されているように思えるのです。
まず色は「ブル―系」であり、英国王室の所有物ではなく「リース」したものだとのこと。さらには、(新しいと古いの基準は人それぞれですが…)1968年型の車体をベースにして作られた「古い」クルマでありながらも、エンジンはモーターへと変更された電気自動車、まさに「新しい」ものになっているのです。
そうです。そこには欧米において、結婚式で花嫁がもっと幸せになるためのポピュラーなおまじないである「Something four(サムシングフォー)」の要素がすべて揃っているではないですか。「エスクァイア・デジタル」をお読みの方にも、「サムシングブルー」については知っている方も少なくないでしょう。
では、残りの3つはなんでしょう?
これはイギリスの童謡集である、『マザー・グース』に出てくる詩“Something old, something new, something borrowed, something blue,――(何か古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの…)」に由来します。
「これらを結婚式の日に身につけると、その花嫁は幸せになれる」というおまじないになるのです。ヨーロッパでは、200年以上前から花嫁の幸せを願うおまじないとして結婚式に取り入れられてきたということです。
そんなおまじないをすべて、このジャガー「Eタイプ コンセプトゼロ」に込めて当日披露したのではないでしょうか!?
そして、ハリー王子&メーガン妃のことです。自分たちだけ…いわゆる個人的な幸せを願ったのではなく、そこには英国の国民すべての幸せへの願いを込めていたのではないかとも思えるのです。
もし、ここでハリー王子自身とともにメーガン妃だけの幸せを願うのであるなら、メーガン妃がブルーのアイテムを身に着ければいいわけです。
ステラ マッカートニーの白の“something new(なにか新しいもの)”なドレスの下に、“something blue(何か青いもの)”のリボンがついたブライダルインナーを身に着けていたかもしれません。そのほか、英国王室ならではの“Something old(何か古いもの)”, “something borrowed(何か借りたもの)”も身に着けていたことでしょう。
ですが、それとは別に、「Something four(サムシングフォー)」をこのクルマに込め、世界中が注目する瞬間に披露したわけです。これは、ハリー王子&メーガン妃のお2人が自分たちの幸せがもとより、英国王室および英国全体さらにはヨーロッパから世界全体へと、地球規模で幸せを願っているというメッセージだったのでは…と思えるのです。
クルマに乗り込み、いざフロッグモアハウスへ出発しようとするお2人をご覧ください。メーガン妃の右手の薬指には、見覚えのあるアクアマリンのリングが。
メーガン・マークルの右手の薬指に輝くのは、ダイアナ妃が生前所有していたリング。これは1997年に「アスプレイ」によってダイアナ妃のために作られた、アクアマリンリングになります。夫となったヘンリー王子から、結婚祝いとしてプレゼントされたようです。
挙式後、サセックス公爵夫人としてメーガン妃は、披露宴会場にてその義理の母の形見を指にして、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)のシルククレープ素材によるホルターネックのビスポークドレスに、Aquazzura(アクアズーラ)のホワイトパンプスでコーディネイト。メーガン妃好みのミニマルシックな装いでした。
つまりメーガン妃自身も、“サムシングニュー”なドレスに、このアクアマリンリングで“サムシングオールド”と“サムシングブルー”はまとっていたわけです。しかも、ホワイトパンプスのソールもブルー系でした。そのうえ、乗り込むクルマまでもブルー系なわけです。
…と考えると、このシルバーブルーのジャガー「Eタイプ ゼロコンセプト」を選んだ理由には、やはり、世界の幸せを願うハリー王子&メーガン妃の思いが込められていたに違いない…と思ってしまうのでした。これはあくまでも推測です。皆さんはどう思いますか? そして、こうも想像してしまうのでした。
『マザー・グース』のこの詩の最後は、“…and a sixpence in her shoe.”とあるように、きっと結婚式のときのメーガン妃の左足には6ペンスコインが入っていたのではないか?と。またはハリー王子の胸ポケットに、6ペンスコインが入っていたのではないか?と。
そしてさらに、このジャガー「Eタイプ ゼロコンセプト」にも特別に左側のホイールまたはタイヤの中には、6ペンスコインが仕込まれていたに違いないと…。そう想像するだけでも、十分幸せな気分にさせていただきましたが…。
それではここから、この「伝統」と「革新」が融合されたジャガー「Eタイプ コンセプトゼロ」が細部がわかる写真をご覧ください。
ジャガーランドローバーがこの「Eタイプ コンプトゼロ」を発表したのは、2017年9月7日(現地時間)にロンドンで初開催された「Tech Fest 2017」にて。フェラーリ創設者であるエンツォ・フェラーリが「史上最も美しいクルマ」と称したジャガーの1960年代クラシックスポーツカーである「Eタイプ」を、電気自動車として蘇らせたものになります。
この「Eタイプ コンセプトゼロ」は40kWhのバッテリーパックを搭載し、1回の充電で約270kmの走行が可能。電動化に伴って、従来ある給油口は充電用の充電口に変更されています。
こちら、家庭用電源で充電可能(電源に応じて通常6~7時間)とのこと。
また、スピードに関しては0(停止状態)~60mph(時速約96km)に達するまでに、わずか5.5秒ということ。ですが、現状はまだコンセプトカーであることをご理解ください。ジャガーは「このコンセプトを市場に出すための研究を進める」と述べながら、2020年までには全車種でEVまたはハイブリッド車を提供することを明らかにしています。2018年3月1日に発表し、欧州での発売を開始したジャガー初の完全電気SUV「I-Pace」がその皮切りだそうです。
この美しいシルバーブルーのオープンカー、ジャガー「Eタイプ」のボディは1968年に製造された1.5シリーズをベースにしています。
ですが、ジャガーとランドローバーのクラシックカーのオーナーや愛好家向けに、幅広いプロダクトやサービスを提供するために英国中部コベントリーに創設した施設「ジャガー・ランド・ローバー・クラシック・ワークス」によって、そのボンネットの中身は伝統を継承する直列6気筒DOHCのエンジンとは違う、「革新」のパワートレインへと進化していたのでした。
かつてのエンジン「XKストレート6」の代わりに搭載されているのは、出力220kWの電動パワートレイン。これは特別に開発されたもので、リチウムイオンのバッテリーパックとともにオリジナルの「Eタイプ」に使用していた「XKストレート6」と同じ寸法かつ重量もほぼ同等に仕上げたということです。
また、ジャガー・ランドローバー初のエレクトリック・パフォーマンスSUVである「I-PACE」の、テクノロジーやコンポーネントも取り入れているそうです。
この電動パワートレインは、XKエンジンと同一の場所に配置できるよう開発されたそうで、電動モーターおよび減速ギアはバッテリーパックの真後ろに配置。「Eタイプ」のギアボックスと同じ位置に置かれています。
さらに総重量は、オリジナルの「Eタイプ」よりも46kg軽くなっているということ。ベースとなった「Eタイプ」のガソリンエンジンやトランスミッションと同じの重量とサイズをもつ電動パワートレインを開発できたことによって、サスペンションやブレーキなどの車体の基本構造も変更する必要がなかったということです。
それによって電動パワートレインの統合等が取りやすく、さらに前後重量配分も変わらないため、その操縦性もオリジナルの「Eタイプ」との大きな違いがないというから見事な出来栄えです。
「『Eタイプが誇るダイナミックな走りを継承しながら電動化することで、パフォーマンスをさらに向上させています。このユニークな組み合わせによって、息をのむようなドライビング・エクスペリエンスを提供するでしょう。私たちが『Eタイプ コンセプトゼロ』を製作した目的は、将来を見据えたクラシックカーを提示することです。このコンセプトモデルを市場に提案し、お客様がどのような反応をされるのかが楽しみです」と、この「Eタイプ コンセプトゼロ」を手がけた、ジャガー・ランドローバー・クラシックのディレクターであるティム・ハニング氏は語っています。
上の写真のとおり、最新のイフォテイメントシステムも搭載し、軽量化を目的に内装にはカーボンやアルミ素材が使用されています。
このように革新的な最新パワートレインとともに計測機器とダッシュボード、さらにエネルギー効率を考慮してヘッドライトはLED式へと変更していますが、その他はオリジナル仕様を崩さずに処理したという徹底ぶりは感動の領域ではないでしょうか。
Source / ESQUIRE US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。