パフォーマンスカーの未来はEVにあり ー モータースポーツ界の伝説的メーカーはいま、レースで培ってきたDNAをEVへとマイグレーションさせています。

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Courtesy of Porsche

 自動車メーカー各社はその歴史全体を通して、それぞれの最上位モデルに自社のこれまでの功績を積み重ね、最も素晴らしいクルマを表現しようとしてきました。
 
 実用本位の市販車を量産するメーカーが、レースに関する自社の優れた能力やあるいはエンジニアリングに関する最新の功績を示すため、ひと握りの強力なスポーツカーを投入した例もありました…しかしポルシェは、そんな他の自動車メーカーとは明らかに異なるのです。いわば帳尻合わせ的な行いはしません。 
  
 スポーツカーとは、いわば人がもつ欲望と幸福感の間に立つ媒介とも言えるのです。優れたスポーツカーは、ドライバーのスピードへの欲望を乗せてドライビングすると、それをエクスタシーという幸福感へと昇華させることができるのです。そんな化学式を完結させるため日夜クルマづくりに励んでいるメーカーが、ドイツ・シュトゥットガルトを本拠地とするポルシェではないでしょうか。
  
 同社を創業したフェルディナント・ポルシェ博士はかつて、「まず最初に、あたりを見回したら、自分が夢見るような自動車が見つけられなかった。そこで私は、そんな自動車を自分でつくろうと決心した」と発言しています。これは名言として世界でも知られています。ちなみに、この発言があったのは1948年のこと。このときポルシェ博士が言及していたクルマは、ポルシェ「356ロードスター」になります。それは、クルマへ求めるデザイン性とパフォーマンス性の両立を高次元で完成させた、当時としては実にアイコニックな好例だったのです。
 
 その「356ロードスター」の誕生から70年が経った現在も、ポルシェが同車開発時に抱いていたパイオニア精神は具に継承され続けいます(むしろ、さらにパワフルに…)。その証として、ポルシェは直近のレースにおいても、圧倒的な優位性を発揮しています。

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 そんな同社が、いまフォーカスしているクルマが「Mission(ミッション) E」になります。このクルマは、「最高水準のパフォーマンスを秘めながら、一滴の燃料も使用せずに500km を一気に駆け抜ける」というポルシェの新提案を具現化する最新のコンセプト・スタディEV(電気自動車)。そして、このクルマの量産を実現化するプロジェクトが進行中なのです。
 
 またポルシェは2018年4月10日に、「FIAから2019年末開幕の『ABB FIA フォーミュラE選手権』への参戦が正式に認められた」と発表。化石燃料を使用しない、いわゆる「電気のF1」へ開発するハイブリッド車を投入することで、自動車レースに対する考え方をも進化させようとしているのです。
 
 同社のレース史を紐解けば、特出すべきはやはり1970年ではないでしょうか。この年、ポルシェ「917K」がル・マン24時間レースで優勝したのです。1951年に1,086ccの「356」で初参加したポルシェがついに、ル・マンを制したのです。ちなみにこの年は、出走51台中完走できたのはわずか7台ということ。つまり、完走率は15%を切るという悪環境下を勝ち抜いたのでした。そして翌71年もフェラーリ「512M」の挑戦を退け、ポルシェ「917K」が圧勝したのでした…。
  

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 さらにそれ以降も、無数の勝利を収めるポルシェ。様々なレースに参戦するなかでも、やはり耐久レースにおける成功は顕著。ル・マン24時間レースでは歴代最多となる19勝を挙げ、「耐久王ポルシェ」という名声も得ているほど…。このようにポルシェは、自らの誕生のきっかけとなった“独創性”を重んじる精神、そして“パフォーマンス”を探求”するという純心さをいまだ持ち続けているのです。 
  
 こうしてポルシェは媒介となるスポーツカーをEVへとステージアップし、未来に向けた高次元の昇華を目指しているようです。われわれに、時代の息吹が吹き込まれたを上質なカタルシスを提供するために…。

【動画】ポルシェの遺産/Porsche Museum

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Courtesy of Youtube@Porsche

これはThird partyの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 ポルシェAGの歴史の上で、もっとも重要な地といえば…シュトゥットガルト ツッフェンハウゼン。ここで70年前、ポルシェはそれまでシュトゥットガルトの中心街にあった設計事務所から、ツッフェンハウゼンに新たに建設された最初の工場へ引っ越したのでした。
 
 1938年、この地で後の「VW ビートル」となる試作車の数々がつくられ、その翌年にはポルシェスポーツカーの原点ともいえるタイプ64「ベルリン・ローマ・ワーゲン」が作られれたのでした。
 
 そして1950年、シュトゥットガルト郊外のこの地に、「ポルシェクレスト」で飾られたスポーツカーが誕生したのです。今日の「911」モデルシリーズはじめ、すべてのポルシェ搭載のエンジンが、ここツッフェンハウゼンで生産されているのです。
 
 そして2005年10月、この地にポルシェの新たなミュージアムの建設が開始され、2007年の秋に完成したのでした。そんなポルシェミュージアムの様子で動画でご覧ください。こちらは、2011年に開催されたイベント「Sound Night」のときの様子です。 
  
https://www.porsche.com/museum/en/

1948年/ポルシェ「356」

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Porsche

 1948年から製造に乗り出した、社名を製品名にした初のクルマが、こちらのポルシェ「356」になります。
    
 高性能かつ高い居住性、それに実用性も加わって、クルマにおける3大こだわりを高次元で具現化した小型スポーツカーの祖と言ってもいいでしょう。第2次世界大戦後の小型スポーツカーの分野において、このクルマが一つのベンチマークとなったのでした。
  
 このクルマは改良を重ね、1965年まで製造され続けました。そして2018年、この小型スポーツカーの誕生から70年目となりました。

1963年/ポルシェ「911」

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Porsche

 ポルシェはその後1963年には「911」を投入し、現在も残るスポーツカーの標準を設定することになります。

この「911」の誕生により、ポルシェがレース用に開発した技術の粋が世界中のモーターファンの手に渡ることになりました。これにより、ポルシェのレースカーをめぐる興奮とその魂は「911」の運転席に座った誰もが感じ取れるものとなりました。

1970年/ポルシェ「917K」

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Porsche

 1970年代から80年代にかけて、ポルシェは引き続きさまざまなクラスのレースで圧倒的な強さを示すいっぽう、数々の業界初となるイノベーションを量産車に導入しました。

 そして同社は、1970年に念願のル・マン24時間レースで初の総合優勝を収めたのでした。
 1952年からル・マン24時間レースに参戦してるポルシェは、1969年まで無冠だったのです。そんな折の1969年、FIAはアメリカ勢チームの参加を促すため「排気量5リッター未満」とグループ4規定を改訂。するとポルシェは、この規定を最大限利用すれば勝てる…と判断。4.5リッター180度V12エンジンを新たに開発します。さらに、907/908の基本構造をベースにシャシーそして足回りなどを強化し進化させたモンスターマシンを完成させたというわけです。
 
 それが写真の ポルシェ「917K」。そしてその思いは叶い、1970年、1971年と2年連続で総合優勝を重ねたのでした。しかも1971年の記録、H.マルコ/G.バン・レネップが勝ったポルシェ「917K」が繰り出した平均時速222.304km/h 、そして5,335.313kmの走行距離は、39年後の2010年まで破られなかったのでした(途中、スピードを落とすためのコース改修もありましたが…)。

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1984年/ポルシェ「911 Carrera 4x4」

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 また石油危機の最中となる1975年には、なんと、ターボチャージャーおよび圧力制御機能を搭載した初のスポーツカーを投入するという思い切り…。パフォーマンスを追求する意志を緩めることを知りませんでした。
 
 そうして1984年には、ポルシェ「911カレラ4x4」を駆ってパリ・ダカール・ラリーで初勝利を飾りるのでした。その結果、世界中の「911」マニアに大きな影響を与えたのです。いままでレースコースばかり頭に浮かべていた者たちの多くは、ここで一挙に、泥道へと目標を移すことになったのでした(笑)。 
   

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2000年/ポルシェ「911 Carrera GT」

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 1990年代にポルシェは、全輪駆動と新たなターボエンジンを導入。同社はスポーツカーの快適性と性能に磨きをかけ続けました。
 
 このとき投入された車種のなかには、1995年に初登場したツインターボの「911」も含まれています。また2000年9月28日、パリ・サロンの期間中にルーブル美術館でスタディモデルが発表された「カレラGT」も、これに該当します。
 
 正式な発売は3年後の2003年。5.7リッターV型10気筒エンジンをはじめ、カーボンファイバー製モノコック、プッシュロッド式サスペンションなど、長年レースで培ったテクノロジーを満載し、それらをポルシェならではの流麗なスタイルで包んだスーパースポーツカーに仕上げられたていました。 ここにポルシェは、生き生きとしたドライビングの体験に加えて、芸術性の観点からもさらに高評価を得たのでした。 

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2002年/ポルシェ「カイエン」

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 最近のポルシェは、「初めて」と言えるようなクルマのバリエーションも拡大しています。その筆頭となったのが、2002年に投入された初のSUVとなる「Cayenne(カイエン)」です。
  
 さらに2010年には、やはり同社初のハイブリッド・レースカー「911 GT3 Rハイブリッド」を投入。
 

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 しかしその一方で、2013年にはドイツ・ニュルンベルクで「918スパイダー」を走らせ、公道を走れるスポーツカーの最速ラップタイムをたたき出しました。

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2017年/ポルシェ「919ハイブリッド」

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Porsche Japan

 そして2014年には、WEC新レギュレーションに準拠するハイブリッド・プロトタイプ (LMP1-H) として、「919ハイブリッド」を開発。"919"というネーミングには、ル・マン24時間レースで初優勝した「917」や、ハイブリッド・スポーツカー「918」との連続性を込めてのものとのこと。
 この「919ハイブリッド」でポルシェは、2017年までル・マン24時間耐久レースに出走。結果、2015年から2017年にかけて、3年連続総合優勝(合計19回)という偉業を成し遂げたのでした。これによってポルシェは、モータースポーツ分野で積み上げてきた数多くの偉業のリストに、またひとつ新たな功績を刻んだのです。
 
「919ハイブリッド」は歴史上、もっとも輝かしいレースカーのひとつであるばかりでなく、EVというポルシェにとって新たなイノベーションの時代を示すものであったのです。
 そうしてポルシェは2017年7月28日、2017年シーズン限りでWEC世界耐久選手権であるル・マン24時間レースからの撤退を表明したのでした。そしてこれに代わって、2019/20シーズンから「フォーミュラE」に参戦することを正式に発表したのでした…。
  

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2018年/ポルシェ「タイカン」発表

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「ル・マン24時間レースを撤退し、フォーミュラEへと戦場を移す」という2017年の発表は、綿密に考えられた戦略的プランであったことは間違いないでしょう。
 
 2015年9月14日のこと、フランクフルトモーターショーの前日にこの「タイカン」は、「ポルシェ・コンセプト・スタディ・ミッションE」として発表されていました。同社は70年にわたってレースとデザインに関するイノベーションを続けてきました。ですが、「Mission E」はそんな数々のイノベーションを再構築し、スピードとパフォーマンスについての新境地を切り開く革命的クルマではないでしょうか…。

ポルシェ「タイカン」の全貌01

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ポルシェ「タイカン」の全貌02

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ポルシェ「タイカン」の全貌03

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ポルシェ「タイカン」の全貌04

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ポルシェ「タイカン」の全貌05

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ポルシェ「タイカン」の全貌06

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ポルシェ「タイカン」の全貌07

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ポルシェ「タイカン」の全貌08

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ポルシェ「タイカン」の全貌09

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ポルシェ「タイカン」の全貌10

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ポルシェ「タイカン」の全貌11

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ポルシェ「タイカン」の全貌12

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ポルシェ「タイカン」の全貌13

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ポルシェ「タイカン」の全貌14

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ポルシェ「タイカン」の全貌15

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Porsche

 2018年5月、ポルシェ初のピュアEV(バッテリーEV)である「ミッションE」を、2020年にも日本で発売するとの発表がありました。「ミッションE」は、2015年のフランクフルトモーターショーで初めて発表された、ポルシェ初の純電気駆動システムによるピュアEVです。
 
 そして2018年6月13日にはポルシェ公式YouTubeチャンネルにて、この2020年に発表する「ミッションE」のモデル名を「タイカン」とし、ティザー動画が公開されました。動画では、新型タイカンのデザインの詳細は確認できませんが、シルエットとテールランプのデザインが見て取れるものでした。振り返ってみましょう。

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 このポルシェ初の純粋なEVの生産が開始されるのは2019年とのこと。モビリティの未来が、さらに一歩近づきます。ちなみに「タイカン」という名称は、1952年以来ポルシェ クレストの中心にある跳ね馬のイメージに基づいています。「生気あふれる若馬」を意味するのです。
 

【動画】アダム・レヴィーン、「ミッションE」を体感

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※さらに詳しくは、Porsche Mission Eサイトへ


By Hans Aschim on June 30, 2018
Photos by Porsche
ESQUIRE US 原文(English)
TRANSLATION BY Hayashi Sakawa ※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊