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蘇る最古のポルシェ「911」 ― 待望の開発コード「901 No.57」の発見

ポルシェは2014年まで、名車「911」のオリジナルとなった「901」を見つけ出すことができずにいました。ですが1本の電話をきっかけに、名車ポルシェ「901」はポルシェの博物館のあるツフェンハウゼンへと戻ってきたのでした。それはつまり、2015年に完結した物語。ここで振り返ってみましょう!

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 脳内にカレンダーを思いう浮かべてください。そして、(カルーセルボタンをクリック連打して)一挙に戻してみましょう。

時代は1963年、そして9月。ドイツのフランクフルトモーターショーでポルシェは、「901」を発表したのでした。それは「356」の後継として誕生し、現在も憧れのクルマの1台として君臨するポルシェの中のポルシェなのです。 

 その後、ポルシェは1964年9月から「901」の量産を開始することに…。さらに同年10月に開催されたパリモーターショーでも、この「901」を披露しました。すると、ここで問題が発生…。仏・自動車メーカーのプジョーから、なんと、この「901」というモデル名に対して異議を申し立てが行われたのです。 

 なぜならプジョーは、すでに3桁の数字の中央の数字を「0」にしたモデル名を商標登録していたからなのです。そのためポルシェは、「901」のモデル名を「911」に改めることを余儀なくされました。この段階でポルシェはすでに、「901」を82台生産していたのです。

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 では、カレンダーを現在へと戻しましょう。

 日本・岐阜県の納屋からフェラーリ「365GTB/4」、いわゆる「デイトナ」が約40年ぶりの眠りから覚め、RMサザビーズが行うオークションに出品されるという記事は2017年9月に公開しています。そしてその「デイトナ」は、フェラーリ70周年記念オークションにおいてなんと180万7000ユーロ(約2億3490万円)で落札されています。

 いわゆる欧米ではよくある、Barn Find(バーンファインド)なお宝グルマの話。それが実は、このフェラーリ「デイトナ」の以前に、ポルシェでも起こっていたことを私たちは見逃していました。非常に残念なことに気がつき、そして反省…。それは、ポルシェもわれわれも切望していた名車、開発コード「901」の「911」なのですから! 

 極めて希少なこのポルシェ「911」は2014年、ドイツのとある納屋から発見されていたのです…。発見された時点での損傷はかなりひどく、本体の50%は欠けていたよう。がしかし…2017年下旬、そんな貴重なボディはポルシェ博物館のスタッフたちの技術力と熱意によって、見事に復刻させることに成功していたのでした。 

   
 もちろん元の状態に戻すためには、多くの作業と時間が必要でした。その年月はなんと、3年だったのです…。

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この「ポルシェ901 No.057」は、数十年前に最初の所有者が購入したものになります。ですが、その彼が結婚した後、「901」は小さすぎると判断…。日常使いには向かず、彼の乗る優先順位のリストから降格してしまったのです…その後、彼は別の古い「911」を購入し、この「901」はそのままただの置物と化してしまったのでした…。

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生産された82台の「901」は実際には、公式での一般販売は行われていなかったのです。ですが一部のクルマはポルシェのタグをつけ、工場から出荷されていたのでした。

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2014年まで、ポルシェミュージアムはオリジナルの「ポルシェ 901」を発見することができずにいました。ですが、あるTV番組からの情報提供をもとに、ポルシェの専門家たちはドイツのブランデンブルク州にある旧農場へ。ポルシェミュージアムのコレクションから抜けていた、垂涎のクルマを調査するために向かったのです。

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そして、調査に入った使われなくなった納屋には、1968年に生産され、4速マニュアルトランスミッションを搭載したTバージョンが導入されたゴールドの「911L」が、非常に激しく劣化した状態で置かれていたのでした。そして、そのクルマの奥ににはさらにもう一台が…。それがこのレッドの「901」。まるで残骸のようでした。早速、シャシーナンバーをチェックしたところ、そこには「300.057」と記されていたのです。その瞬間、このクルマが名称変更前の「ポルシェ901」であることが証明されたというわけです。

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発見されたとき、クルマの状態はフロントウィングの両方が欠け、車両の大部分はすでに錆びていました。ダッシュボードはそのまま保存されていましたが、その他の内装のほとんどは単なる断片でしか残っていませんでした。ブレーキとエンジンは、ともに抜かれて存在していませんでした。

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慎重に確認を重ねた専門家たち…決め手はシャシーナンバーのプレート。それは元来のものであり、また、車両もオリジナルであることは疑いの余地などないことが証明されたのでした。

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ポルシェは、この1964年製レッドの「901」に対して125,000ドル(およそ1500万円)、ゴールドの「911L」には17,000ドル(およそ204万円)を支払いました。「911L」に関しても「901」とまったく同様に、かなり酷い状態ではありましたが…。

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すべての車軸とフロント、さらにリアアクスルのすべての車軸およびアクスルガイドマウンティングは、腐食による深刻な問題を抱えていました。リアアクスルクロスチューブの領域にある2本の縦梁は、完全に錆びていたのです。

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No57のエンジンとトランスミッションは、オリジナルのものは設置されていませんでした。当時と同じタイプではあったのですが…。また、多くのコンポーネントはかなり腐敗して、使用できなくなっていました。

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右手側の内装と外装部、フロントバンパーなどのパーツは、完全に欠けています。

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なんとこの「901」には、ベルリン警察スポーツ協会のステッカーが貼られたままでした。これは初めの所有者から、後の所有者に受け継がれてきたようです。このステッカーを所有していたということは、さまざまな利点も得ていたでしょう。「私はどこにいても、駐車することができました」と、ステッカーの所有者は語っています。

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これだけ多くの損傷を受け破壊的な状態となっていながらも、最初のモデルに含まれていた車内の特徴の多くは、本来の形で残っていたところが感動的です。たとえば、「901」にのみ取り付けられていたシフトレバー周りのレザースリーブなど…。

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改修にあたった工場からの依頼で、大規模な調査を敢行。そうして入手可能となったパーツが、座席調整装置の下に設置する2つのスクエアパイプになります。

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ポルシェには、シートにも独自の歴史があります。修復時、それを行っている工房には、「901 No.057」と「911 L 」の部品でいっぱいになったパレットケージが届けられました。そして幸いにも、この部品の山の中には2つのシートも入っていたのです。外側で判断するに、これは「No.57」のものと一致すると思われていたのです…が、背もたれの部分のシートクッション内を調べると、そこには5本のパイプが通っていたのでした。オリジナルの「911」(当時の「901」)には、6本のパイプを備えたシートが搭載されていたので、その時点で「No.57」ではないという残念な結果を知ったのでした。

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「901 No.057」の修復は、車両を完全に分解することから始まりました。

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残った胴体は徐錆(じょせい)および元来の塗料を除去するため、ケミカルバスに入れられました。この方法が、現状の「901 No.057」に対し、もっとも優しい塗装除去作業法だと判断したのでした。

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金属の変色部に関しては、そこは溶接されているか、またはグラインダー(研削砥石を使用し、表面の研削又は切断を行う機械)が使用されていることを示しています。

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「300 057」と刻印されたプレート。

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やがて「901 No.057」は、すべてまだ手の付けられていない本来のパーツ状態となりました。そこでポルシェのエキスパートであるKuno Werner氏により、屋根のホイールマーク(研削痕)も本物であることが確認されたのです。

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